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高画質はなんのため?

映像コンテンツで技術的にもっとも重要なのは音質である。

音がはっきり聞こえない映像は見るに堪えない。画質など二の次三の次なのだ。まずは音が明瞭に、きちんとしたレベルに収まっていることがなによりも大切になる。

では、高画質はなんのためにあるのか?

本題に入る前にそもそもなにをもって高画質と呼ぶか。高画質と一言で言っても、その中にはいくつか要素があって主なものは以下の3つだろう。

  1. 高精細

  2. 好ましい色調

  3. 広いダイナミックレンジ

このほかにも高ビットレートとか圧縮率とか圧縮方法とかビット深度とかあるが、とりあえず上記3つを説明すれば概ね事足りると思っている。

1.高精細

これは解像度とか画素数とも呼ばれるもので、数字が大きければ大きい方が当然高精細になる。昔のテレビSDが640×480ドット(35万画素)、HDが登場して1920×1080ドット(約200万画素)、4K、8KはHDの倍倍で増えている。

高精細化で画質が別次元によくなったと感じたのはSDからHDに進化したときだ。このとき高精細は正義だった。もう二度とSDには戻れないと思わせたほどである。しかしHDから4K、8Kになってもあのときの衝撃ほど画質差は感じない。もちろん違いはあるんだけれども。

高精細になって一番恩恵を受けたのはテロップである。SD時代、テロップが何重にも縁取りされていたのは文字の周辺に現れるギザギザ(シャギー)を目立たなくするための涙ぐましい努力だった。大体3重から4重の縁取りが普通だった。つまりそのくらい太くしないととても見られたものではなかったのである。

HDになって縁取り無しでテロップが使えるようになったのはまさに革命だった。それでも紙の印刷物に比べれば圧倒的に解像度が足りないのであまり細いフォントは使えなかった。4Kになってかなり細いフォントが使えるようになってポスターのような表現が映像で可能になった。そして8Kになれば完全に印刷物に並ぶだろう。

ということは、テロップを使わなければ精細度はHDで十分ということになる。実際アマゾンプライムなどの配信サービスではHDがいまだに標準で、それで映画を視聴する上でまったく問題がない。

2.好ましい色調

好ましい色調というのは個人的な好みの範疇ではない。

だれが見ても好ましいと感じる色調というのがあって、一番よく現れるのが人の肌である。これをスキントーンと呼ぶ。わざわざ専用の用語があるくらい重要なもので、ここに一番力を入れているのがハリウッドである。

アマチュアが制作する動画はたいていスキントーンがめちゃくちゃである。それは非常な違和感となって視聴者が受け取る。違和感は疲労を産む。正しい色に補正しようと脳が働くせいなのかどうかわからないが、見ていて疲れる動画というのはたいていスキントーンがあっていないものが多い。

3.広いダイナミックレンジ

最後の広いダイナミックレンジというのは3つの中で一番高画質貢献度が低いものである。人間の目は暗いところから明るいところまで非常に広いダイナミックレンジを持っていて、しかも瞬時に適応できる。そこへいくとカメラのダイナミックレンジはとても狭くて表現できる幅が狭いのである。それで現実に見ているものと、映像で見てる画に違いが生じることで違和感を産む。

しかしその違和感はスキントーンのそれに比べれば些細なものである。おそらく気づいていないひともいるだろう。その程度のことであるが、映像機器メーカーなどはダイナミックレンジのワイド化に取り組んでいて、制作者側としてはかなり重要なトピックだったりする。

さて高画質を構成する3つを説明したところで、高画質はなんのためにあるかという答えである。

それは、視聴者を疲れさせないための優しさであるとぼくは思っている。

違和感があると疲れる。疲れるという認識が直接的に感じなくても、なんとなく見なくなっていく動画というのは概して低画質であることが多い。

今どきスマホの動画でさえ最低でもHDであり、4Kが普通である。なのに画質が良く見えないのはスキントーンであったり、限りあるダイナミックレンジをどこに設定するかという問題だったりする。もちろんピントがあっているというのは大前提である。(撮影するとき必ず顔(被写体)をタップしてピントを合わせてから撮影しましょう。これやらないひと多すぎます)

高画質は優しさである。

モニターに映し出される映像というのはそもそも不自然なのだ。それをいかに自然にみせてあげるかが高画質化の歴史といっていい。動画で一番大切なのは音質であるのは間違いないが、だからといって画質をないがしろにしていいというわけではない。むしろ視聴者に優しくありたいとおもったら高画質は外せない条件となる。

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