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はなたれねこ移住する。第51話 林さんと海野さんがやってきた!

たぶん珍しいと思う。
家探しで苦楽をともにした営業の林さんと海野さんとは未だにお付き合いがある。もうとっくに商売上の取引は終了しているのであるが、ぼくらが林さんと海野さんを好きなのでなにかと理由をつけてはメールをしたりして関係が続いていた。どんな内容かといえば、彼らの本業であるリフォームに関わることならいざしらず、クワガタが捕れただのカブトムシを捕っただのそんなことまでメールしていた。それだけ聞いたらただの嫌がらせではないかと思うかもしれないが、もともと自然あふれる土地への移住を希望していて、その成果としての昆虫なのだからいいのである。
 
そしてメールをするたびにいつか遊びに来てくださいと言い続けて2年半。ついにお二人が我が家へやってきた。返信メールに変化が現れたのは去年の暮れのご挨拶だった。来年こそは訪問したい、そんな一文で結ばれていたのである。
 
キタアアッ!ツイニキタアアッ!
 
この言葉に我が家が狂喜乱舞したのは言うまでもない。海野さんは寒さが苦手だから暖かくなってからにしよう。杉の花粉症が終わった頃がよさそうだ。そうだそうだそうしよう。それから春が実に待ち遠しかった。そして待ち遠しい春がようやくやってきた。
 
林さんと海野さんは普段着でやってきた。2年半ぶりにお会いする二人だったが、不思議なことに久しぶりという感じはしなかった。子どもの成長は特別で、あの頃娘はまだオムツをしていたから大きく成長した姿をみて驚いていたが、おそらく彼らもぼくらに対して久しぶり感はあまりなかったんじゃないかと思う。
 
それでも積もる話四方山話は尽きないが、子どもたちが自分たちと遊べとうるさく騒ぎ続けている。子どもたちにとっても林さんと海野さんの訪問は待ちわびた日だったのだ。ランチを食べ、近所の雑木林でまったりとトカゲを眺めて時間を過ごし、おやつを食べていたらもう夕方だった。名残惜しくもお別れの時間となって、二人は帰っていった。物足りないようなさみしいような空気があとに残った。
 
たぶん珍しいと思う。
だけど、それだけ運が良かったのだろう。よいひとに巡り会えた。家探しをはじめた頃数多くの不動産会社に行ったが、先の尖った革靴を履いているひととか、やたらに虚勢をはるひととか、冷たいひととか、色々なひとがいたが、林さんと海野さんは最初から違っていた。星の数ほどある不動産会社の中で、お二人に当たったことがなによりも幸運だった。また来てくれるかな。

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