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鳥たちに怒られながら

桑の実を摘む

抱えたボウルに次々とほうりながら

これは私のものよと

何度言っても怒られる

何度も何度も

鳥たちは同じことを言う

こちらも負けずに言い返す

だけど、やがて疲れて

私が先に口をつぐむ


生きるために繰り返す

些細なやり取りに生かされている

明日もきっと同じことが繰り返される

だって昨日もそうだったんだから

その前のことは忘れた

だから、明後日のことはわからない

おそらく彼らとは仲良くなることはないだろう

こんな素敵なことってある?


鳥たちは落ちている実を拾う

柔らかい枝にはとまれないから

そうする

私は脚立に乗って摘む

摘んでそして、美味しいジャムを作る

明日がもしかしたら来ないなんて

私は信じない

来週の今頃はきっと全部の実が採り尽くされて

そこでようやく私たちは仲直りする

そしたら、少しさびしくなるだろう

去年もそうだった

来年もきっとそうなのだろう

その次のことはわからない

わからないことはそのままにして


早く明日が来ますように


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お読みいただきありがとうございます。お庭の桑の木が今年はいっぱい実をつけて、去年はほとんど鳥に食べられてしまってたので、今年はがんばって収穫してそれでマドレーヌを作ります。半径20メートルの世界のお話です。

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読んでいただき、ありがとうございます。 ほとんどの詩の舞台は私が住んでる町、安曇野です。 普段作ってるお菓子と同じく、小さな気持ちを大切にしながら、ちょっとだけ美味しい気持ちになれる、そんな詩が書けたらなと思っています。