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おめでとう

そう言って電話は切れた

あとはよく覚えてない

たぶんぐっすり眠った

楽しい夢でも見たかもしれない

いつもと同じ夜に


途切れた会話のその後で

はじめて知る熱さもある

そして同時に冷たさも

優しい引鉄になれただろうか?

出来ればなってあげたかった

偽りだらけの世界でやっと見つけられたものが

いつか粉々に砕けても

あなたはそれを拾って歩く

誰にも取って替われない後ろ姿があって


ありがとう

そう言ってすぐ電話は切れた

気づかずにいてくれたのか

気づかない振りしてくれた

ただそれだけのこと

薄暗がりで、浅い眠りを引き寄せて

幸せなど本当は何も助けてはくれないものだと

言いたかった

教えたかった

なのに


おめでとう

心からそう言って

電話を切った

私には関係のないことと

だから喜べる幸せもあるんだと


おめでとう

ただ、おめでとう

それだけ伝えられたら

あとはもう覚えていない

いつもと同じ闇

いつもと見分けのつかない黒さで

よく眠り、だけど

明かりを消してと叫んでた

夢の奥深く

ずっと底の方

誰か早くと


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お読みいただきありがとうございます。
ココア共和国7月号に佳作として「惑星」という詩を選んでいただきました。電子版でどうぞご覧になれます。





読んでいただき、ありがとうございます。 ほとんどの詩の舞台は私が住んでる町、安曇野です。 普段作ってるお菓子と同じく、小さな気持ちを大切にしながら、ちょっとだけ美味しい気持ちになれる、そんな詩が書けたらなと思っています。