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第18回 ポリフェノールの機能性のお話

2020年12月22日(火) 12〜13時
生命機能科学専攻 応用生命化学コース
准教授 山下陽子先生

2012年から継続している「AーLaunch(エーランチ)」。これまでは,神戸大学の先生が普段どのような研究に取り組んでおられるかを知る機会として,昼食を取りながら,フラットな雰囲気のもと,ゲストの先生に研究の入り口的な内容をお話いただいておりましたが,今年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響もあり,一部形式を変更しての開催となりました。しかしながら,オンライン参加者からも積極的に質問の声が挙がるなど,新たな地の共有の場としての可能性を感じる貴重な機会となりました。

第18回目のゲストは,農学研究科生命機能科学専攻応用生命化学コースの山下陽子准教授。山下先生は,「食と健康に関する機能性の研究」を専門とされておられます。学部時代は栄養学を専攻されておられましたが,研究者を志すようになった頃から生命科学の分野に研究領域を広げ,現在はさらに食育にも取り組んでおられます。

そもそも食品には3つの機能があるそうです。第一次機能は,栄養素など「栄養」に関わる機能。第二次機能は,香りや美味しさなど「嗜好(感覚)」に関する機能です。そして,これらとは別に「生体を調節する」機能(生体調節機能)を,第三次機能と呼び,免疫効果や抗酸化作用などがこれに該当します。近年,消費者の関心も非常に高まりつつある機能と言えます。

山下先生が,長らく研究対象として注目されているのがポリフェノールです。皆さんも,よく耳にされると思います。このポリフェノールは,第三次機能の代表格で,赤ワインやコーヒーなど飲料にたくさん含まれています。ちなみに,カテキンもアントシアンもイソフラボンも構造上はポリフェノールの一種だそうです。

先生は,このポリフェノールの一種であるプロシアニジンの研究を大学院時代から継続的にされておられます。このプロシアニジンは,分子量が多くなると腸から吸収が難しくなるという特徴を持っています。それゆえ,以前は体内にほとんど吸収されないため摂取してもあまり意味がないと思われていましたが,近年ではそれを覆す報告も多く見られるようになり,山下先生も,消化管で何らかの効果を発揮し,全身の機能に作用しているのではないかと,その解明に力を注いでいます。

これまでに,プロシアニジンがGLP-1というホルモンの分泌を促進し,GLP-1がインスリンの分泌を促進することで,高血糖を抑制し,エネルギー代謝を促進する働きがあることを発見されました。また,兵庫県の特産品でもある黒豆(黒大豆)には,ポリフェノールが豊富に含まれているのですが,煮るとポリフェノールは欠落してしまいます。しかし,炒ったものに関してはほとんど欠落しないことから,煎り黒大豆粉末入りのクッキーを用いたヒトの試験により,実際に動脈年齢の若返り効果を確認されるなど,研究成果を積み上げておられます。

現在は,食品メーカーとの共同研究により高機能性食品を開発したり,黒大豆を活用した黒大豆を使った環境創造型農業の構築に携わるなど,日頃は基礎研究を中心に取り組みながら,幅広い連携によって応用研究につなげておられます。

最後,フロアから「卵が大好きでよく食べるんですが,やっぱり食べ過ぎはよくないですか?」という素朴な疑問をいただきましたが,「どんなに高機能と言われる食品もそれだけに偏るのは良くなく,やはり色々な食品をバランス良く摂取することが何より大切。」とのメッセージをいただきました。先生の取り組みを参考にしながら,私たちもバランスの良い食事を心がけたいものです。

農学研究科地域連携センター
眞鍋邦大



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