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【『ゆるゆると生きる』絵本】4話:『解放は未来の希望とともに』


1.絵本本編


ぱたん、と
扉が閉まった音がした。
 
それと同時に、
カギがかかる音もした。
 
重く閉ざされたその扉は、
そのまま闇に沈んでいく。
 
気がつけば、
手に持ったカギは
 
どこにも
見当たらなかった。
 

―☆―
 
う~たん:『なぎ、なぎ! じゃあ、この間は、アルマジロさんをくまさんと見に行ったんだね』
 
渚:『う~たん。それを言うなら、アルマジロじゃなくて、アイドルグループ。熊田リーダーが好きな韓国アイドルのコンサートを見て来たんだ。彼女たちが日本に来るなんて、すごく貴重なことなんだって』
 
ハリィ:『なんだ、その“アリとグレープ”ってのは。アリにブドウは大きすぎる組み合わせだろ?』
 
りりぃ:『だから、アイドルグループよ! 歌って踊ってスポットライトを浴びるお仕事をしている人たちのこと』

 
りりぃが
深いため息をつきます。
 
残念ながら、
ハリィにはあまり伝わっていないようで、
 
口をあけながら、
その場をくるくる回ってみては、

 
『難しいだろう、それ』

 
とつぶやいています。

 
う~たん:『なるほど~! じゃあ、アルマジロさんは、鳥とサルとチョウチンアンコウさんの真似が得意なんだね!』
 
なぎ:『……どこからツッコんでいいのか、よく分からなくなってきた』
 
りりぃ:『そうね。この際だから、もう放っておきましょう』

 
なぎとりりぃは
互いに顔を見合わせて、
ふっと笑いました。

 
最近、
なぎの夢には常連さんのように、
 
う~たんたち3匹が
登場するようになりました。

 
3匹とも
わいわい、がちゃがちゃ
なぎを囲いながら、
 
好きなことを
したり、しゃべったりしています。

 
そのおかげか、
夢の中も随分明るくなりました。

 
ところどころに
草花が咲き乱れ、
 
上空も
薄暗い青に変化しました。

 
ハリィ:『あとは、本と大食い勝負してるって聞いたぜ? おいらだって、本とだったら、負ける気はしねぇ!!』
 
う~たん:『違うよ、ハリィ。本さんと一緒にお菓子を愛でてるんだよ~』
 
りりぃ:『だ~か~ら、“ホンゴウさん”とカフェ巡りをして、そのお店のスイーツを食べ歩いてるんだってば!』
 
渚:『みんな、それぞれの受け取り方があるんだねぇ』

 
まぁ、
プラスの面で見れば、
そうなるのでしょうが……。
 
う~たんとハリィは
人の話を単に聞いていないだけの気が
しないでもありません。

 
りりぃ:『じゃあ、お仕事の方は?』
 
渚:『だいぶん慣れてきて、余裕も出てきたんだ。だから、お休みをもらって、旅行にも行ってきたの!』
 
りりぃ:『うわぁ、いいなぁ。それで? 一体どこに行ってきたの??』
 
渚:『隣の県の森林公園。鳥とか花とか、写生したくなるものがたくさんあって、楽しかったなぁ』

 
なぎはうっとりしながら、
そのときの光景を思い出しています。
 
その様子を見ていたう~たんが
口を開きました。

 
う~たん:『ねぇ、なぎ。“しゃせい”ってなぁに?』
 
渚:『あぁ。えっとね。草花を見ながら、その絵を描くことだよ』
 
りりぃ:『あ、あたし、なぎの絵を見てみたい! 今度見せてほしい!!』

 
りりぃが
笑顔で手を上げます。
 
けれど、
 
渚の表情はその瞬間に
さっとひきつりました。

 
渚:『……あー、うん。今度ね』

 
そう言いながら、
渚は少しだけ俯きます。
 
その訳を
 
3匹が知るのは
もう少し後の話です。


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