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【riraさん発の企画投稿:エッセイ】~わたしだけの夏の想い出~


”夏の想い出”と聞いて、

はじめに思い浮かぶ光景。



それは、あの日の星空だ。



たしか、5、6歳の頃だったと思う。


その日のわたしは、朝から機嫌が悪かった。


理由単純だ。


なぜなら、

朝から熱を出し、

楽しみにしていたことがすべて台無しになった

からだ。


その日はお盆で、

親戚の子どもたちが集まる上に、

地域のお祭りとも重なっていた。


昼間は親戚の子どもたちと一緒に遊び

夜はお祭りで花火を見るつもりだった。


小さな子どもからすれば、

夏のビックイベント


それが熱を出したことで、

全部が”無し”になったのだ。


幼いわたしにとっては、

不機嫌になって当然のことだった。


ー☆ー


「早く!……ねぇ、早く来て!」


熱が下がり、

ようやく体調も落ち着いてきた

その日の夜。


わたしはわがままを言って、

母とお祭り会場へと向かった。


母を待ちきれずに、

ずんずんと一人で暗い夜道を歩いていく。


けれど、

一人だけでは怖いから、

大声でうしろにいる母を呼びながら……笑


「お祭りはもう終わったよ」

という母の言葉を

わたしは、かたくなに信じなかった。


だから、

今からでもお祭り会場へ行く

駄々をこねたのだ。


母は、心のなかで苦笑していたと思う。


到着したお祭り会場は

片付けがほぼ終わっており、

お祭りの余韻だけ残っていた。


そして、

それがさらなる怒りの火種となった。


朝から何ひとつ思い通りにならない。


親戚の子どもたちとも遊べず、

お祭りにも行けず、

花火も見られなかった。


本当は誰のせいでもないのに、

わたしはどうしてもそれが許せなかった。


悲しくて、悔しくて、

そして、

何より、腹立たしくて。


ぐしゃぐしゃになった気持ちのまま、

痛いほど唇を噛みしめた。


ー☆ー


「もう、早く!!」


お祭りが終わったことを

自分の目で確認した後。


わたしは怒りのままに、

家へと急いでいた。


強引に母の手を引き、

ずんずんと歩く。


母は何も言わずに

わたしのされるがままになっている。


道路の反対側へ渡ろうとして、

ふと、空を見上げた。


本当は、

この星空にあがった花火を見るはずだった。


その悔しさから、

星空をにらんだわたしの目に、

ひとすじの光りがさっと流れた。


「……あ! 流れ星!」

「うん? どこ?」


思わず叫んだわたしの声で、

母が空を見上げた。


「お母さんには見えなかったな。流れ星、……どうだった?」

「びゅんってあっちに消えてった! 初めて見た!!」


興奮気味のわたしに、

母は優しい笑顔を見せてくれた。


さっきまで母に当たり散らしていたのに、

流れ星のおかげで、

わたしの機嫌がいっきに上向いた瞬間だった。


その日、

みんなと同じように遊べず、

お祭りにも行けず、

花火も見られなかった。


けれど、



『わたし”だけ”』流れ星を見ることができた。



本当に単純なのだが、

その『わたし”だけ”』の夏の想い出が、


そのときの感動とともに、


鮮やかな光景として、今も心に残っている。


ー☆ー

【あとがき】

riraさん発の企画↓”夏の想い出”をテーマに、

記憶をたどったエッセイを書いてみました。


想い出をふり返ってみて、


両親に感謝することがたくさんあるな……とか、

幼いころの細かい気持ちや感覚って強烈だったな、とか


忘れていたことを再確認できて、楽しかったです。



人見知りなので、

他の方の企画に参加すること自体がどきどきですが、

いい経験をさせていただきました!


riraさん、素敵な企画をありがとうございました!





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