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美しく直した器と暮らす

金継ぎはもともと、大名が拝領するような、高価な器を修繕するためのものでした。
たとえば江戸時代、長屋住まいの庶民は、金継ぎでなく、釉薬で割れ目を埋めて、再度低温で焼く、「焼継ぎ」という修繕方法が主だったようです。
 
なので、金継ぎは、漆芸の技術を持った、特に蒔絵師が副業で行っていたもので、「蒔絵」の技術を
施して、陶磁器を修繕します。
 
漆芸自体は、奈良時代頃、中国大陸から伝わった痕跡が残っていますが、蒔絵は、日本で独特の発達を遂げ、すでに千年の歴史があります。
その技術のピークは江戸時代頃といわれ、今や失われた技法も多くあるそうです。
 
そんな、美しい伝統工芸で、器を直すのが、金継ぎです。
 
世情が不安定で、金粉の高騰は続いていますが、それでも、現代において、金継ぎをしてはいけない、という身分制度はなく、つまり、日常に使う器、大切にしておきたい器に、蒔絵の技法を施し、美しく修繕して使い続けることができます。
 
ただ使えるようにとりあえず修理したものでなく、傷をうけても、また美しく、本物の素材で大切に修繕されている器を長く使っていく、ということは、持つ人、そしてそれを目にする人の心を豊かにすると思います。
 
学んでも学んでも、鍛錬しても鍛錬しても、極めることのできない、深淵な世界ではありますが、死ぬまで、尽きることも飽きることもない、豊かな世界に学び続けられることは、とても幸せなことだと思います。
 
もっともっと美しい修繕ができるように、日々、精進していきたいと思っています。

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