オペラの記録:ドルトムント・オペラ、ワーグナー作《ワルキューレ》プレミエ(5月21日)

5月21日、ドルトムント・オペラでワーグナ《ワルキューレ》プレミエを観ました。
プレミエは昨年の予定でしたが、コロナ禍で1年延期されていました。

ただ、コロナ禍が終息しているわけではないので、客席の全部を売ることはできず、売り切れなのに、実際の客数は約半分といったところでしょうか。


さて、これは《ニーベルンゲンの指環》(以下、《指環》とします)の新制作ですが、通常は《ラインの黄金》から始めるところを《ワルキューレ》から始めました。

演出はドイツ・ムジークテアターの大御所ペーター・コンヴィチュニー。

コンヴィチュニーはこれまでバイロイトで上演されるワーグナー作品については《指環》以外全てを手掛けました。
《指環》については2000年、シュトゥットガルト・オペラで《神々の黄昏》演出をしただけでした。
コンヴィチュニーも77歳、《指環》演出が待たれていましたが、やっと実現します。

プレミエには多くの専門家や評論家が集まっていました。

ドルトムントの劇場。
「ワルキューレ 16時」と出ています。


プログラム。

上記のプログラムの右ページは制作チームとキャスティング。
左ページは第一幕、ジークムントとジークリンデがヴォータンが置いたハシゴに上ってノートゥンクを抜く場面。

上演開始前、客席にいたコンヴィチュニー。

客席。

オーケストラ・ピット。

開幕前。

カーテンコール。真ん中のブルーのセーラー服を着たのはブリュンヒルデ役ステファニー・ミュター。
びわ湖ホールでも歌う予定だそうです。

同オペラ音楽総監督のガブリエレ・フェルツが指揮しました。
オーケストラを讃えています。

大ブーと大ブラボーの応酬の中、コンヴィチュニーが演出チームのメンバーと抱き合っています。


大ブーと大ブラボーの激しい応酬でしたが、ワーグナー作品のプレミエではブーが出るのは当然です。特に2000年前後のコンヴィチュニー演出では「これでもか」というほどのブーが飛んでいました。

ですので、アンチ・コンヴィチュニーが今でも健在なことがわかり、ほっとしたくらいでした。


演出は・・・うまい。うますぎる。もう唸るしかありません!


ここまでのFOTO:©️Kishi


以下、プログラムのページの一部です。
FOTO:Thomas Maximillian Jauk

上の写真は第二幕第一場。ヴォータンとフリッカ。
下の写真は第二幕第二場。ヴォータンとブリュンヒルデ。

同じ構造ですが、どちらが攻勢でどちらが守勢か、そして人間関係が、この写真の僅かな所作だけでも明確です。


第三幕。ワルキューレたちがヴォータンに懇願しています。
ワルキューレたちはセーラー服のティーンエージャーですが、セーラー服=水兵、つまりヴォータンの命令には絶対服従しなければなりません。親子関係=軍隊の上下関係。

しかし娘たちの訴えに対し、ヴォータンも酒を浴びながら代わす、という弱さも見せています。

この一瞬の配置、構造も素晴らしい。


90年代半ばからコンヴィチュニーの仕事を観てきました。

あまり良くない演出もありますが、ワーグナー作品演出は群を抜いて素晴らしい。

こういう天才演出家の素晴らしい仕事をリアルタイムで経験できることは、私にとって人生の財産です。

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