劇、音楽劇の記録:オーバーアマガウ《キリスト受難劇》(6月3日、オーバーアマガウ)

ドイツ・バイエルン州、最南の村、オーバーアマガウでは10年に1度、村民による《キリスト受難劇》の公演があります。

初回は1634年で、今年は第42回。2020年に開催予定でしたが、コロナ禍で2年延び、今年の開催になりました。

始まりのきっかけは1633年のペスト流行でした。

1618年に始まった三十年戦争で国土は荒廃する中、1633年、カスパー・シースラーという男が村に到着します。彼はペストに感染していました。感染は瞬く間に広がり、数日で村では80人の死者が出ます。

当時はウィルスも細菌も知られておらず、この恐ろしい病気が『神の怒り』のせいだと考えた村人たちは「キリスト受難劇」を公演し、神の怒り=ペストの流行をしずめようと考えました。

そして1634年、聖霊降臨祭に第一回の受難劇を行いました。

その後も上演は続き、18世紀半ばにはこの受難劇が広く知られ、各地から多くの人たちを集めました。

そして今日、ドイツの文化的宗教的行事の中で最も重要なものの一つとして知られ、公演にはドイツのみならず世界中から人々が集まります。

今年の公演期間は5月14日から10月2日まで、月曜日と水曜日以外の週5日です。
公演は全部で103回、初日までにチケットの80%近くが売れ、世界中から45万人が訪れる予定です。

公演時間は8月14日までは、
第一部:14時30分〜17時、第二部:20時〜22時30分

それ以降は1時間ずつ早くなります。


6月3日、聖霊降臨祭(今年は6月5、6日)を前に、この受難劇を観ました。

オーバーアマガウの位置。
赤丸です。


オーバーアマガウは村の家々の壁に描かれた絵、そして木彫りで有名です。
ノイシュヴァンシュタイン城やリンダーホーフ城などへの1日観光バスでは、村を通過する行程を織り込んでいるものもあります。

村の建物の一部

祝祭劇場の建物が見えてきました。
祝祭劇場に入るにはまずセキュリティー・チェックを受けなくてはなりません。
長蛇の列です。


劇場建物の入り口。


席からステージを見たところ。


オーケストラ・ピット。

ステージを背に客席を見たところ。


公演終了後にカーテンコールはありません。
ワーグナー《パルジファル》第一幕の後みたいです。

終了したところ。

パンフレット。最高席で180€、前売り手数料が21,60 €です。


席の料金は次の表で色分けされています。

FOTO:©️Kishi

以下は公演資料を掲載した本の一部です。

左のページに演出家などの名前が記載されています。

この本には公演の歴史、出演者の名前と経歴など一連の資料が網羅されています。

制作の様子。


リハーサルの様子。

歴史。

出演者。
村で生まれた人か、村に20年以上住んでいる人しか出演できません。

普段の職業は様々です。
例えば、今年のイエス・キリスト役は2人、フレデリーク・マイエット(42歳、ミュンヘン・フォルクステアター勤務)とロハス・リュッケル(26歳、飛行機技術を学ぶ学生)です。

オーケストラと指揮者。


ソリストとコーラス。

以下はこの本に掲載されたステージ写真です。

出演者だけでなく、公演に関する全てを村の人たちの手でつくりあげます。
オーバーアマガウの人口は5400人ほどですが、その半分以上が公演に携わるそうです。

さて、夜も更け、公演後はオーバーアマガウにホテルをとらずにミュンヘンに向かいました。
車だったのですが、ミュンヘン行きの高速道路があちらこちらで通行止めで迂回してミュンヘンに着きました。

その日の昼間、近くのガルミッシュ=パルテンキルヘンを出た電車が脱線事故を起こしたのが原因でした。






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