オペラと旅の話:エルル・チロル・フェスティヴァル2019、ブラウンフェルツ(作曲とテキスト)、《鳥》プレミエと劇場

昨日とりあげたエルル・チロル・フェスティヴァルですが、フェストシュピールハウス(劇場)では、1998年以来、主に夏と冬、フェスティヴァルを開催しています。→
https://www.tiroler-festspiele.at/

今年は新支配人ベルント・レーベ最初のフェスティヴァルでしたが、コロナ禍で中止になりました。

昨年はオペラ・プレミエ≪鳥≫ "Die Vögel"(テキスト・作曲はワルター・ブラウンフェルツ Walter Braunfels)を観に出かけました(2019年7月20日)。

《鳥》は古代ギリシャのアリストパネスの戯曲《鳥》をもとに、作曲家ブラウンフェルツが自身でテキストも手がけました。
世界初演は1920年11月30日ミュンヘン(指揮:ブルーノ・ワルター)、当時のスター歌手を揃え、プレミエに続く上演回数が50回という大成功をおさめました。

ところがナチスが政権を取った1933年、『退廃音楽』の烙印を押され、上演禁止となり、再演は1971年、カールスルーエでした。
1996年、デッカが『退廃音楽シリーズ』の録音を出し、それで再度注目を浴びるようになりました。『退廃音楽』の復活、そして録音に大きく貢献したのは指揮者ローター・ツァグロゼク Lothar Zagrosek です。
ちなみに今年11月、バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)は《鳥》の新制作を予定しています。

《鳥》は政治風刺に満ちた喜劇的作品で、今でも上演機会は非常に少ないこと、そして退廃音楽の解釈と指揮の第一人者ツァグロゼクの指揮ということで、エルルに出かけました。

エルル(Erl)の最寄の大きな駅はクーフシュタイン(Kufstein)です。クーフシュタインまではミュンヘン中央駅から電車で約1時間です。
クーフシュタインからエルルまでは車で約20分ほどです。
劇場周囲には何もありません。草原の中に斬新な建物が立っています。
アクセスが車のみなので、クーフシュタインのホテルに宿泊している客用にバスが出ています(写真左側)。

劇場完成は2012年でした。総工費36百万€(約45億円)のうち、シュトラーバーク代表ハーゼルシュタイナー氏が20百万€(約25億円)を負担、連邦と州がそれぞれ8百万€(約10億円)ずつを負担しました。
シュトラーバーク社とハーゼルシュタイナー氏についてはこちらをご参照ください。→
https://note.com/chihomikishi/n/n20feb316068d

200803 エルル劇場IMG_0305


劇場の階段を上ったところです。

200803 エルル劇場バルコンIMG_0302-1


劇場内部のフォワイエ。床には勾配があります。

200803 エルルのフォワイエIMG_0300

200803 エルル、フォワイエIMG_0308-1


劇場客席、客席数は862

200803 エルル劇場客席IMG_0307


《鳥》プレミエのカーテンコール

200803 エルル、カーテンコールIMG_0309


プレミエ後のパーティーに招待されました。
着席パーティーで、私は、支配人レーベさんと指揮者ツァグロゼクさんの間でした。レーベさんの左側にはハーゼルシュタイナー夫人が座り、多くの人の挨拶を受けていました。

ハーゼルシュタイナー夫人は、「こんなマイナーな作品なのに、全席売り切れになり、私自身がとても驚いているのよ。もっとも、2回しか上演できないけど・・・ここはザルツブルクと違うのよ。来てくださったお客さまたち、素晴らしいと思わない?」とおっしゃっていました。

あけすけで直球の会話をするドイツと違い、オーストリアはどこか気を付けながら会話しなければならないのですが、ハーゼルシュタイナー夫人の話はとても率直できさくでした。

私は「ドイツでは大きな建築が軒並み時間がかかりすぎてスキャンダルになっています。劇場改修も遅々として進みません。この劇場の建築にはどれくらい時間がかかったのでしょう?」と尋ねると、「そうね、10カ月くらいだったかしら」という答えに、こちらがびっくりしてしまいました。

200803 エルル、パーティーIMG_0314

プレミエ後のパーティーですから、深夜まで続きます。
私はクーフシュタインのホテルに泊まっていたこと、翌朝の出発が早いのできりのいいところで帰ることにしました。アシはタクシーしかありません。パーティーの場所は「こんなところに?」と思うほどの秘密めいた場所で、ちょっとやそっとではわからず、電話で呼んだタクシーの運転手さんも知りませんでした。

翌日は、それまで猛暑だったのに、打って変わって涼しい雨模様でした。
クーフシュタインの駅前です。

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Foto: すべて©Kishi

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