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ひろしまで森のようちえんはじめました

こんにちは!
いしいちほです。

ひろしまで森のようちえんはじめました。

はじめたのは、2011年4月。今は2023年1月だから、森のようちえんをはじめてもうすぐ12年です。(2019年に投稿した記事をリライトして2023年1月に投稿しなおしています)

広島市安佐南区・西区で森のようちえん まめとっこという共同保育型の森のようちえんをやってます。

この記事は、私の活動と、なぜ私が森のようちえんをやっているのか?について紹介する文章です。


1.共同保育って?

「共同保育」というワード。多くの方にはあまり馴染みがないかもしれません。

簡単に説明するならば、スタッフと園児の保護者が心と力を合わせて運営・保育をつくる子育ての場。園児の親も運営や保育に携わるわけなので、はっきり言って一般的には面倒この上ないようちえんです。
預けて終わり、誰かが育ててくれる。
そんな場じゃないからです。

それなのにどうしてこんな面倒くさいことをやっているのか。それは、これからの未来のために必要な場だと確信しているからです。


2.どうして共同保育?

子育てって「面倒くさい」

もともと子育てって、「面倒くさい」わけじゃないですか。子どもが生まれる前と生まれてからでは、男も女も生活をどこかしら変えなきゃいけない。子どもがいなかった頃と同じ考え方や暮らしは、できなくなるんですよね。

例えば、子どもが小さい頃には、好きなときにトイレに入ることもできないし、食べ物も変えなきゃいけなかったりする。
なんならトイレは、子どものところにすぐ戻れるようにドアを開けっぱなしとか、子どもが泣きながらついてきてしまうから落ち着いて座っていられないとか。

もちろん睡眠時間も思うようにはならない。睡眠不足がデフォルト。そんな日々でどんなに疲れていても、お風呂にゆっくりつかることもできない。

好きだった趣味もしばらく手放さなきゃいけなかったり、お気に入りの食器や雑貨も手の届くところには置けなかったり。

やりたいことがやりたいときにできないっていうのは、これはほんと、心も体も追い詰められてしまいます。

そして追い詰められた結果、望んで産んだはずの子どもがかわいく思えなくなる。望んで結婚した相手のことを、それまでのようには愛せなくなる。

「自分ばっかり損している気がする」「思い通りにいかない」ことがものすごく大きなストレスになって、子育てが苦しみになってしまう。夫婦の仲が冷え切ってしまう。こんなことって、めちゃくちゃ多いと思うんですよね。
これでは子どもを何人も産み育てようって思えないし、子育ての喜びが感じられないと思うんです。
「異次元の少子化対策」なんて言葉が取り沙汰されていますが、経済面だけの支えじゃ無意味なんだよなぁ。


思い通りにいかないことを受け入れる。
それが子育てを楽しむ第一歩

でも、もともと子育てって、すごく大事なしごとなわけです。自分やパートナーが受け継いできた命を、さらに未来につなぐ。子どもを育てることは、すなわち未来をつくるということ。

「ここまでの大きなしごとをしている」と思ったら、ますます子育ての重圧や責任を重く感じてしまう??
そうじゃなくて、子育てを前向きに楽しめるようになったら素敵だなーって思うんです。

だって、子どもってこの上なくおもしろい生き物です。目の前で日々成長していく子どもたち。一瞬一瞬の経験がその子の成長の糧になり、その子らしさが紡がれていきます。

「大人の都合のいいようには育たない」
「子どもと大人は別の存在」

そのことを受け入れることが、子育てを楽しめるようになる第一歩です。残念ながら、ある意味観念しなきゃいけないってことですね。思い通りに支配しようとするから苦しくなるんです。

これは、子どもに対してだけじゃなくて、パートナーをはじめとする周りの人間関係についてもそうだし、自分に対してもそうです。
自分の好き嫌いや判断だけで白黒はっきりつける世界から、グレーを受け入れる世界に移行していく。言い換えれば、違いを受け入れるやさしい世界に移行していくってことでもあります。


3.自然の中で子育てするのが自然なワケ

子どもは本能にしたがって生きている

このことは、一人で家で子育てしていても、気づける人は気づけると思うのだけれど。家という場所では、実践するのがなかなか難しかったりします。大人の都合に支配されることが多いからです。

危険なものや大事なものを含め、触ってほしくないものが家中に溢れていますよね。時間も空間も、完全に子ども中心の生活にすると、大人の社会的な生活が回っていかなくなってしまいます。

だけど子どもは、身の回りのものを触ったり舐めたり、落としたり投げたりぐちゃぐちゃにしてみたりしながら自分が生きる世界をつかんでいきます。

それが子どもの本能。本能に刻まれた成長のステップなんですよね。だからそれを止めることはできないんです。必要なときに必要なタイミングでそれを存分にやることで子どもは成長するから。

そして、つい最近お腹から出てきたばかりの子どもは、人間社会というよりも自然界に属している生命体。
生まれる数ヶ月前に、受精卵から魚類→両生類→爬虫類→哺乳類と生物の進化の過程をたどってヒトになったばかりの生き物なんですよね。

しかもこの高度に発達した文明社会に、裸ん坊で何も持たずに生まれてくる。
生まれてすぐに乳首に吸いつき、庇護してもらうために泣き、時期が来たら首がすわり、ハイハイしたり座れるようになり、やがてつかまり立ちをして…。
大切に保護され成長するための本能と能力だけを持って生まれてきたんですよね。考えてみれば、すごい勇気。自分が生まれ落ちる周囲への信頼、「愛されて育っていく」ことへの信頼。ものすごいものがありますね。私たちもそれを持って生まれてきました。

ちょっと話がずれたけど。
そんな子どもに、いきなり大人と同じような価値観で大人と同じようなスピードで大人と同じような判断と行動ができるようになることを求めるのが無理なわけです。

0歳の子にそれを求めるのが難しいことは、誰にでもわかりそうだけれど、1歳を過ぎ2歳が近づいて言葉がしゃべれるようになったら、大人はいつの間にかそのことを忘れてしまいがちです。
ついこの間まで受精卵で魚類だった子どもなのに、いきなりいろいろをすっ飛ばして大人と同じになることを求めてしまうんです。

家や公園やスーパーという、大人の価値観(大人の目)に支配された場所にいると、そうなってしまうのでしょうか。大人と同じように動いてくれないと、大人にとって不都合ですから。

でも子どもは、何万年前の子どもと同じような状態で生まれてきてます。子どもは、自然界に属した状態で生まれてくるんです。
だから、子どもは自然の中で、その人その人の成長のペースに沿って経験を重ねて育っていくのが「自然」なんです。


母親も「自然」な存在

こんなに高度に発達した世の中になったのは、たかだかこの数十年。子どもたちは、そこに合わせた進化をせずに生まれてきているんです。
進化が追いついてないというより、命にとって不自然なスピードで、世の中が不自然な状態に変わってきたということなのかもしれません。効率と便利さと経済を最優先にした世の中では、命の働きややさしさは置いてけぼりです。

お母さんが子育てを苦しく思うようになるのも、きっとこの不自然な世の中のせいでしょう。お母さんもまた子どもと同様に、本能の優位の「自然」な存在になっているからです。

お腹に子どもを宿した瞬間から自分で意図することなくお腹の中で命を育み、まだ見ぬお腹の子どもと息を合わせて出産をするお母さん。
生まれてきた子どもに乳首を吸われることで子宮が収縮して母乳がつくられ始めることも、お母さんの意思で行うのではなく、自然の摂理に沿った働きです。
子どもを守るために、時にはパートナーすら敵と見なして遠ざけることもありますよね。

人工的なものに囲まれて大人の都合で回っている世の中にどっぷり浸かったままじゃあ、お母さんだって苦しくなっちゃいます。

だから私たちは、森の中へ。
自然に囲まれた場所で、子どもとお母さんがともに過ごせる場所をつくっています。

時間にも空間にも、制限があまりない場所。
直線的なものや鋭利な角がほとんどない場所。(直線って、人にとっては刺激が強くて、暴力的なものだそうですよ。)

「自然体験をさせるのが子どもの育ちにとって有利だから」。そんな損得勘定や早期教育的な理由ではありません。自然の中で過ごし育つのが、子どもにとってもお母さんにとっても理にかなっているからです。


4.仲間とともに育つ

子育ては一人でするものじゃない

自然の中で過ごせれば、親子だけ・家族だけで出かければ十分。家の近くに自然豊かな環境がある。週末にはファミリーで自然に触れるようにしている。
そんな人もいるでしょう。それはとても素敵なこと。
だけど、私はあえて「それではちょっと足りない」と言いたいです。子どもはもちろん、お母さんには仲間が必要だからです。

お母さんにとってしんどいのは、「周りに頼れる人がいない、自分が一人で頑張らなきゃいけない」と思わせられてしまう環境。それが子育ての苦しみの正体と言っても過言じゃないと私は思います。

だから、「一人じゃない」場所をつくりたい。
お母さん同士がつながり合える場、子育て仲間に出逢える場所が、お母さんたちにとって必要なんです。私自身の子育ての経験からも断言します!

自分一人で子どもと向き合っていると、子どもの、自分にとって不都合な姿ばかりがクローズアップして見えてきたりします。
自分にとって都合の悪い姿は受け入れられないし、自分の思い通りに動いてもらいたくなる。思い通りにならない子どもがかわいく思えなくなる。
「子どものせいで私は不幸になった」と恨んだり憎んだりしてしまう瞬間を経験したお母さんも少なくないんじゃないでしょうか。

子育ては一人でやるもんじゃありません。お互いの子どもの成長を分かち合い、一緒に喜び合える存在に出逢えたら、子育てが本当に楽しくラクになっていきます。


仲間との子育てで得られること

子どもの成長に大人都合の期待をかけず、子どものペースで遊び育つ姿を「ただただかわいい」と一緒に見つめられる仲間との子育ては、お母さんを育てます。
人は、安心するとひとりでに学び育ち始めるものだからです。

仲間との子育てを通して、
「子どもは大人とは違う存在」
「子どもは子どものペースで確かに成長していて、その人の人生を生きている」
「『お母さん』っていいものだ」
「『いいお母さん』にならなくてもいい、自分も自分の人生を生きればいい」
そんなことがちょっとずつちょっとずつ腑に落ちてきます。
それが当たり前に自分のものになったら、子どもだけじゃなくて周りの人にも命にもやさしくできるようになっていきます。
思うようにならないことも、失敗も、違うことも「ダメ」なことじゃない。それがあって当たり前。そんなふうに思えるようになるんです。

そしたらもう子育ては、苦しいだけのものじゃなくなります。子どもやパートナーや周囲、もっと言えば自分までを理想通りにコントロールしようとすることを手放したら、本当に楽なんですよね。子育てが喜びに変わっていくんです。

子どもだって幸せです。
いろんな経験をして、失敗や不快なことも経験して成長すること(=当たり前のこと)を許されるわけだから。

自分が自分であることを認めてくれる大人たちの間で、成長するための試行錯誤も温かく見守られながら、自分らしいペースで育っていけること。それは生きる上での根源的な力になっていきます。

これを人生の始まりの時期に子どもも大人もつかんでいける場所。それが森のようちえんです。


子育てを母の手に

身近な自然の中で幼児を育てる場所、森のようちえんがいくら子どもの育ちにとっていい場所だからといって、子育てを外注してそれでよしとするのはちょっと違うと思ってます。

どんなにいい教育を受けられる場所であっても、結局その子は家庭の中で育つからです。
ようちえんがいいところでも、いつか卒園の日がやってきます。
子どもの人生に伴走していくのは、ようちえんではなくて家庭。保育士や先生じゃなくてお父さんお母さんです。

それに、ようちえんの理念や方針や保育がいくら素晴らしくても、家庭の教育方針や子どもを見守る視線がようちえんと全く違っていては逆効果。子どもに混乱や不安を生み、かえってマイナスになってしまうことさえあります。

だから、家庭とようちえんが地続きになっている必要があると私は思っています。

ようちえんは子どもを預かって育てるだけの場所じゃない。家庭と手を携えて、一緒に子どもを育てる仲間でありたいです。
子育ての楽しさ、喜びをお母さんや家庭から取り上げるんじゃなくて、お母さんたちに特等席を用意したい。子育て本来の喜びをお母さんたちと分かち合いたいんです。

そのために、共同保育型の森のようちえんをやっています。

子育て仲間に出逢える場所。
そして、「子どもの育ち」を間に感じ近、子育てのムズカシサや自分自身を認めることのムズカシサも含めて、子育ての喜びをつかんでいける場所。

お母さんたちだけでそれをやりきるのはすごく大変なので、そこに保育の専門性を持ち客観的な立場のスタッフもいることが大切で。

だからこそ、共同保育なんです。


5.森のようちえんは未来を育てる

子育ての喜びをお母さんたちがつかんでいくと、それは子どもたちに伝播していきます。

生きることが楽しい!
自分には人生を楽しく生きる力がある!
「違い」があることが豊かなんだ!
という価値観を根底に持つ人を、未来につなぐことに他なりません。

と同時に、自分たちの命は人間だけのものではなく、たくさんの多様な命とともに生きているということを知っている人が未来を生きるということ。

これは未来に希望を増やすことでしかないと思っています。

森のようちえんは、子育てであり、親育ちであり、そして未来育て。森のようちえんは未来への投資です。


6.最後に

命がいかされる世の中になっていってほしい。やさしい世界になっていってほしい。子どもたちにつなぐ未来が少しでもよりよいものになっていったらいいな。

私にはこんな思いがあります。

少しでも共感してくださったみなさん。
私たち 森のようちえん まめとっこのようちえんづくり&子どもたちの育ち、そして全国に250園ほどあると言われる各地の森のようちえんをどうぞ応援してくださいね!


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