悪夢と吉夢

夢を見ます。誰もがそうであるように。
時には楽しい夢であったり、時にはヘンテコであったり。
そして、悲しい夢や恐ろしい夢を見ることもあります。
誰もがそうであるように。

いまのわたしの悪夢はもっぱら夫の夢です。
彼のお葬式だったり、
黄泉の国から帰ってきた夫が、また向こう側に戻ることになったり。
悲しい気持ちで目覚めて、藁にも縋る思いで夢占いのサイトをチェックします。

すごく大雑把に言うと、人が死ぬ夢は吉夢なんだそうです。
悲しみが癒えて前向きになる、だとか、
心の奥底にあるネガティブな感情を開放する、だとか。
そんなのって、悪い夢を見て気分が落ち込んだ人を慰めるてきとーな話なんじゃないのと思いながらも、気持ちが軽くなって、前向きになれたような気がしてしまうのです。
なんて単純なんだろうと思うし、聞きたい言葉を聞くために“相談”する面倒な友人みたいなんだけれど、悲しい、苦しい気持ちのままで一日を過ごすよりもずっといいはずです。

辛い日々も、悲しい日々も、夢が夜明けとともにどこかに消えていくように、いつかは消えていくのでしょうか。
いまはまだ、前向きな気持ちで「生きるぞ」って気持ちの日と、
反対に、なぜ生きねばならぬのかって気持ちの日の反復横飛びです。
そして毎日、なぜ彼は旅立ってしまったのかを考えてしまいます。
彼と出会ってからの、すべての日々をやり直して、少しでも彼が傷つかないように、彼が大切だと伝わるようにとしたいけれど、そんな願いはもちろんかないません。
それにもしも、何か摩訶不思議な力が働いて過去に戻ることができたとしても、きっとわたしは同じように傷つけたり、うまく大切だと伝えたりできないだろうとも思います。
人は変わるけれど、そう容易く変わるわけではないから。

それならばせめて、残された日々を大切に生きるしかないですね。
悲しみが消え去ることがなくとも、その悲しみから芽吹く、いいものがあるに違いないと信じて。

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