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経験者が考えた 身近な人が流産をしたときにできること

 すこし前の話になりますが、一緒に働いている人が流産を経験し、しばらく休養期間を取ることになりました。
 まだ小さな命とはいえ、自分に宿ってくれた赤ちゃんとお別れするのは本当につらい。
 悲しみの深さが想像できるだけに、周囲の人もどう接したらいいのか、悩むところだと思います。
 流産・死産の当事者だった立場から、「周囲の人ができること」について、考えてみました。

☆喪失感を抱えて仕事をする気持ち

 自分自身が流産を経験をして、仕事に復帰したとき、どんな心境だったのかを思い出してみます。

 何を見ても悲しい状況が、数ヶ月は続きます。
 つい数週間前までおなかの赤ちゃんといつも一緒にいたのに、どうして今はいないのか、自分でもよくわからない・・・そんな気持ちでした。

 日常のふとした瞬間に、いろいろな記憶がよみがえります。
 たとえば仕事のスケジュール調整のためにカレンダーを見ると、赤ちゃんの週数をカウントしていたことを思い出す。
 ふと開けた引き出しに、つわり対策のキャンディが入っているのを見つけて、胸がギュッとなる。
 食事をしても、もう自分ひとりだし栄養なんていらないのにな、なんて考えてしまっていました。

☆できることは、ないかもしれない

 以上のことは、あくまでワタシ個人の経験です。
 でも、同じような悲しさを抱えるかもしれない彼女のために、何か力になれることはないか、と考えました。

 向こうから相談があれば、何時間でも話は聞くし、知っていることは何でも教えてあげたい・・・でも、まだまだ気持ちの整理ができていないときは、口にするのも大変なはず。

 そして、気持ちの整理は、時間が経つことでしか解決しないものだと思います。

  結局、ワタシが積極的にできることは、何もない・・・そう思いました。

☆ふつうに働いて、時間をやりすごす

 「積極的、直接的にできることは何もない」と思いましたが、間接的にできることならありました。

 それは、「ふつうに働く」を見守ることです。

 流産に限った話ではないと思いますが、耐え難い出来事があった後は、気分がうつ気味になります。
 
 何を見ても楽しくない。それは、仕方のないことなんだと、まずは受け止めること。
 そして、心身の負担を減らして、いろんな気持ちに向き合いながら、じっと時間の経過を待つしかないのではないか・・・と思います。

 だから。
 彼女がゆっくりしたペースで働けるように、さりげなく気を配ることだけが、同僚としてワタシが唯一できることでした。

 「ふつうに働く」ことこそが、ちょっとずつ気持ちを整えてくれる面もあるとも思います。
 いつもの仕事仲間と、いつも通りのプロセスを経て完成させた書類が、ささやかながら心の支えとなってくれるといいな・・・そう願いながら。

☆それから半年が経って

 そんな、微力すぎるサポートを試みてから、6ヶ月が経ったとき。

 「あのときお休みの理由、流産だったんですよ」と、彼女のほうから話してくれました。

 大変だったね、本当につらいよね・・・と、そこで初めて気持ちを分かち合うことができました。

 彼女の気持ちを受け止めることができた、というよりも、こちらの気持ちにも共感してもらって、ワタシの心が少し軽くなったような。

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 いろいろあるけど、毎日が続いていくこと。
 残酷なような、救いのような。そんなお話でした。

 

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