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短編小説集

26
物語は心の栄養。スキマ時間に圧倒的読書体験をどうぞ。
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#小説

まわりみち。【短編小説】

 きっかけはマイからの連絡だった。  「久しぶり。春先に高校の同窓会するからさ、みなも…

森下千尋
5日前
18

【掌編小説】ひまわり/セーブポイントの先で

 ひまわり  花の絵を描いてくれと娘にせがまれたので仕方なくクレヨンで適当に数本描いた。…

森下千尋
1年前
12

皇居ランでつかまえて【中編小説】

 走っている、あなたに会いたくて走っている。        ***    電話だ。塚元美…

森下千尋
1年前
21

はじまりを告げるレインボウ

     春  初心者でも簡単に育てられますよと言われて買った、ガジュマルを枯らした。こ…

森下千尋
1年前
8

【リラクゼーション・短編小説】ぐるぐる回る世界とささやかな日常に祈りを

 コロナ禍での出産だった。  男の子でも、女の子でも『空』と名付けようと決めていた。  …

森下千尋
2年前
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【短編小説】2・3月更新情報

カクヨムに、短編小説を二本書きおろしました。 一本目は、 【幻想のワンナイト】 恋愛モノ…

森下千尋
2年前
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【掲載のお知らせ】百花No.6 文藝書房

12月23日発売の 百花No.6 文藝書房に、 短編小説・睡眠ラジオが掲載されております。 下記リンクから購入できます!ぜひ読んでください。 あらすじ― 不眠症に悩む『俺』は、病院へ訪れる。 しかしそこでは基本的なアドバイスばかり。苛立つ俺に、医者は【睡眠ラジオ】を勧める。金曜日の深夜二十三時五十五分。流れる音に耳を傾けて、俺が睡眠の先に見たものとは―。 手元に届いた冊子をめくると、日頃書いていたものが活字になっていて感動しました。この場をかりて、百花編集部の

鬼ヶ島フリースタイル合戦

 バイト後、すっかり暗くなった帰り道。スマホにイヌからの着信が入った。  「ワッツアップ…

森下千尋
2年前
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ガール、ミーツ、オシャレ牧場。

 「ダサーッッ! なんだよおまえその頭、マジウケんだけどー」  終わった。クラス一のお調…

森下千尋
3年前
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起死回生バッテリー

 投げ放った渾身の一球が、いとも簡単に弾き返される。  『痛烈ッーー。ライト線に抜けたァ…

森下千尋
3年前
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こんな夢を見た。

 こんな夢を見た。  宇宙地図を広げて、いつまでも眺めている少年がいた。  「そんなに面…

森下千尋
3年前
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ねがいごと

 シャンッと、整列させられたような空気が一面に漂う冬の空に、一瞬だけど流れ星が光った気が…

森下千尋
3年前
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今日、最高のビールを君と。

 「しゃあせー」  店長の『いらっしゃいませ』の後に、私の声が続く。  入口を見ると、ノ…

森下千尋
4年前
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うず

 嫉妬の心は彼岸より生ず。平等を得ればすなわち嫉妬を離る──空海  高速バスの車窓から鳴門海峡を望むと、潮の流れがごうごうと激しさを増していた。渦潮が見えるかもしれないな、と身を乗り出すと、窓側に座っていた会社員風のおっさんが露骨に嫌な顔をしたので、すぐに止めた。  大鳴門橋を越えると、空気がガラッと変わる。夏の徳島は、やっぱり良い。突き抜けるような青空がどこまでも続いている。なんばから徳島駅まで約二時間半の道中で、デニムのショートパンツに入れているスマホが震える。リサだ。