マガジンのカバー画像

短編小説集

24
物語は心の栄養。スキマ時間に圧倒的読書体験をどうぞ。
運営しているクリエイター

#小説

【掌編小説】ひまわり/セーブポイントの先で

 ひまわり  花の絵を描いてくれと娘にせがまれたので仕方なくクレヨンで適当に数本描いた。…

森下千尋
9か月前
12

皇居ランでつかまえて

 走っている、あなたに会いたくて走っている。        ***    電話だ。塚元美…

森下千尋
1年前
22

はじまりを告げるレインボウ

     春  初心者でも簡単に育てられますよと言われて買った、ガジュマルを枯らした。こ…

森下千尋
1年前
8

【リラクゼーション・短編小説】ぐるぐる回る世界とささやかな日常に祈りを

 コロナ禍での出産だった。  男の子でも、女の子でも『空』と名付けようと決めていた。  …

森下千尋
2年前
30

【短編小説】2・3月更新情報

カクヨムに、短編小説を二本書きおろしました。 一本目は、 【幻想のワンナイト】 恋愛モノ…

森下千尋
2年前
37

【掲載のお知らせ】百花No.6 文藝書房

12月23日発売の 百花No.6 文藝書房に、 短編小説・睡眠ラジオが掲載されております。 下記…

森下千尋
2年前
159

鬼ヶ島フリースタイル合戦

 バイト後、すっかり暗くなった帰り道。スマホにイヌからの着信が入った。  「ワッツアップ、メーン」3コールした後、俺は応える。  「桃太郎、おい、今、お前何処だ」  電話越しに聞くイヌの声は、相当に息が上がっている。  「どうした? ちょうどバイト終わったとこ」  くたくたの身体に当たる夜風が心地いい。肉体と時間を一日中労働に捧げて、ようやく自分だけの時間が始まる。はずだった。  「すまん……サルがやられた。至急、来てくれ」  イヌの声に一瞬鼓動が速まる。  「冗談だろ?」

ガール、ミーツ、オシャレ牧場。

 「ダサーッッ! なんだよおまえその頭、マジウケんだけどー」  終わった。クラス一のお調…

森下千尋
2年前
26

起死回生バッテリー

 投げ放った渾身の一球が、いとも簡単に弾き返される。  『痛烈ッーー。ライト線に抜けたァ…

森下千尋
3年前
10

こんな夢を見た。

 こんな夢を見た。  宇宙地図を広げて、いつまでも眺めている少年がいた。  「そんなに面…

森下千尋
3年前
9

ねがいごと

 シャンッと、整列させられたような空気が一面に漂う冬の空に、一瞬だけど流れ星が光った気が…

森下千尋
3年前
9

今日、最高のビールを君と。

 「しゃあせー」  店長の『いらっしゃいませ』の後に、私の声が続く。  入口を見ると、ノ…

森下千尋
3年前
4

うず

 嫉妬の心は彼岸より生ず。平等を得ればすなわち嫉妬を離る──空海  高速バスの車窓から鳴…

森下千尋
3年前
11

ナツキとユウキ

第一話 場面・ナツキの部屋 ナツキ「今日は特に収穫なし、か」 薄暗い四畳半、 私はモンスターを狩る為に縦横無尽に走り回る。 もちろん画面の中の話だ。 引きこもりも三年経つと、我ながら板についてくる。 石の上に三年、ならず。 四畳半そしてゲームの中にも三年、だ。 画面上を見ながら、傍らに置いたポテチを口に放り込む。 『バリッ、ボリッ』 むしゃ、むしゃ……。 ナツキ「ウマッ。クゥーッ、生きてるぅー」 絶妙な塩加減に、濃厚なチーズがアクセントとなっていて美味しかった。