三 明日不期

「ねえ千尋、ちょっと相談があるんだけど」
「何の相談?」

少し身構えた千尋に明日香は笑顔で言った。

「お茶の教室できないかと思ってさ」
「明日香の唐突には慣れたつもりだけど、今度は何するつもりなの?教室って何を教えるの?」
「お茶の淹れ方だよ。最近若い人で急須持ってないって良く聞くから、こういうイベントで興味持ってもらえたらなって」
「いいんじゃないかと思うよ。…でも誰がやるの?」
「もちろん私!」
あっけに取られる千尋をよそに明日香は続けた。
「研修から今までに100回以上はお茶淹れてるんだし、難しいことなんて何もないでしょ。」
「でも星野さんのお茶と比べたらまだまだなのに教えるなんて本当に出来るの?」

不安げな千尋に、明日香は自信たっぷりに答えた。

「店長レベルを目指したいなんて私たちくらいしか思ってないって。逆に私みたいな素人でもここまで美味しく淹れられますよって伝えたいんだよ。みんな知りたいのってきっとそこだと思うんだよね」

「確かにそうだね…そう言えば場所はどうするの?店でやるわけにも行かないでしょ?」

「お店ではできないね。でもちょうど良い場所があるよ。」

「ここってカルチャースクールが入ってるでしょ。料理教室とかもやってるみたいだし、お茶の教室だって問題なく出来るよ」

「場所を借りるお金はどうするの?」

「私が出すよ!」

「そこまでする必要ってあるかなぁ?明日香が自腹でやることないでしょ?」

「自分の経験になるからいいんだよ!苦労は買ってでもしろって良く言うじゃない?」

「明日香らしい発想だね。…それなら私も手伝うよ」

「ありがとう!それじゃ星野さんにも相談してみよう!」


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