西海 千尋

西海 千尋

マガジン

記事一覧

老人と海と私

夜が明ける前に家を出て、海の上で朝を迎える。 どこからが海で、どこからが空なのか 天地の境のない、真っ暗な世界。 ブルンブルンッ、ドッ ドッ ドッ ドッーー エンジン…

45
老人と海と私

老人と海と私

夜が明ける前に家を出て、海の上で朝を迎える。
どこからが海で、どこからが空なのか
天地の境のない、真っ暗な世界。
ブルンブルンッ、ドッ ドッ ドッ ドッーー
エンジンキーをひねると、船が震えだす。足の裏から伝わる細かな振動。
波に合わせて船が揺蕩うので、腹に力を入れて、体を支える。
真っ直ぐ前を見て、舵を切る。

-

祖父は漁師だ。海の漢だ。
たった一人で、沖に出る。仕掛けも道具も自分でつくる。

もっとみる