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TOKYO2020 大会ビジョンを考える

「東京オリンピック・パラリンピックまで、あと〇〇日」

本当であれば、連日の報道はオリンピック開催までのカウントダウンがはじまり、ボルテージは最高潮のはずだけど、コロナで開催すら危ぶまれて、なおかつ、森喜朗オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の女性差別発言への批判報道ばかりが取りざたされ、本気で大会を開催する気があるのか……。

なにわともあれ、日本はいま窮地に追い込まれているのは間違いない。開催国にふさわしく、スポーツの未来で世界を変えられるのか、大会ビジョンである3つの基本コンセプトを考えたい。


①全員が自己ベスト

万全の準備と運営によって、安全・安心で、すべてのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、自己ベストを記録できる大会を実現。世界最高水準のテクノロジーを競技会場の整備や大会運営に活用。ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の「おもてなし」で歓迎。

コロナ前までの準備期間をさかのぼると、2015年に東京オリンピックロゴ問題があった。デザインのオリジナル性はどこで判断するべきなのか、非常にむずかしい著作権問題で出鼻をくじかれた気がする。結局このデザインを採用しなかった点を考えると、「日本が世界からどうみられるのか」という「信用」のほうが大事だという結論に至ったのだと思う。

2020年の開催はコロナで延期することになったけど、安心・安全という意味では運営じたいがむずかしい。さらにアスリートが最高のパフォーマンスを発揮できる練習環境すら整わない状況から、いかに「ベストを尽くす」という観点で大会に挑んでほしい。

最新のテクノロジーは今後の日本を大きく動かす原動力になると同時に、僕らの暮らしも変える要素がある。楽しみである反面、ダイバーシティが進んでいない日本に、もっと多様な人材が活躍できる社会風土をつくっていく必要があると思う。

9つのプロジェクト概要

「お・も・て・な・し」滝川クリステルのプレゼンテーションがなつかしい。もともと日本人は客人を「もてなす」ことには長けている民族で、その文化が根づいていたはず。しかしボランティアに関していえば残念ながら500人ちかい人が辞退することになっている。M氏の発言はともかく「おもてなし」の精神はどこへいったのだろう?


②多様性と調和

人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩。東京2020大会を、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする。

先にも記述したけど、M氏の女性差別発言に関していえば不適切だったと思う。残念なことに多様性と調和の重要性がまったく欠けている。謝罪会見でも逆ギレしたすがたは全世界に悪い印象を与えてしまった。本人は洒落のつもりで言ったかもしれないがオリンピズムの根本原則にも反している。昭和のステレオタイプがトップに君臨している日本の政治を国民が許すわけがない。

最近では日本人アスリートの政治的発言がやっと注目されるようになってきた。大坂なおみ選手のマスクに込めた人種差別に対する抗議など、その発言はアスリートであるまえに、一人の人間として人権を軽視しない勇気ある行動だ。オリンピックが平和の象徴であるなら、アスリートが社会問題に対して言及することはとても重要なことだと思う。

これを踏まえて考えると、今までの日本の教育は「みんな一緒があたりまえ」とされてきた。これだとオリンピック開催国としてはずかしい。これからは「みんな違ってあたりまえ」という教育に変えなければ多様性と調和なんてありえない。協調性から多様性へと個性(違い)を認める社会をめざすのが先決だと思う。


③未来への継承

東京1964大会は、日本を大きく変え、世界を強く意識する契機になるとともに、高度成長の弾みとなった大会。東京2020大会は、成熟国家となった日本が、今度は世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していく。

高度成長のきかっけとなった東京1964大会で「戦後のニッポン」を世界にアピールできた。そのあとの経済成長は「東洋の奇跡」と称されGNPが世界2位となる。でも成熟国家となった日本が未来になにを残せるのかがこの大会にかかっていると思う。

そんななか、新国立競技場を設計建築することになった隈研吾氏が1530億円をかけて完成させた。「杜のスタジアム」は"木"を取り入れた、周辺環境と調和するスタジアムに仕上がっている。

最初のデザインコンペでザハ・ハディド氏のデザインが選ばれたときは、斬新で近未来を彷彿とさせる「ネオ東京」を感じるデザインだと思った。

残念ながら総工費が2520億円に高騰して、世論から厳しい批判を受けることになったんだけど、デザインコンペじたいが曖昧な設定だったことから、審査委員長の安藤忠雄氏はデザインだけを純粋に「選んだだけ」になってしまった。

ここらへんもちょっとお粗末な印象を受けたけど、東京オリンピックのあと、このスタジアムでスポーツ観戦のほかにライブ・コンサートで集客を見込んでいるが一抹の不安を感じる。お粗末な結果にならないよう世界の人々が感動できる場にしてほしい。


さらにはイノベーティブな大会に向けてロボットプロジェクトが用意されている。こちらは人とロボットの共生が実装される予定で非常に興味深い。ここでいうポジティブな変革に値する。ロボットがいる未来は僕らの暮らしをよりいっそう便利なものにしていくけど、逆に「人は、なにができるのか」が問われているようにも感じる。

この大会を通じて未来に継承することはテクノロジーだけではなく、「人権」「平和」「感動」と、やっぱり人にしか味わうことのできない精神世界になる気がする。


TOKYO2020 大会ビジョンまとめ

ここまで振り返ってみると、コロナによって延期になった東京オリンピック大会を運営するのに、どれだけの人たちが関わってきたのだろうと考えると、やっぱり開催してほしいと願うばかりだ。

それには世界の人々がこのビジョンを再認識して、取組むことにほかならない。一人ひとりがコロナにかからない努力をするのはもちろん、人種差別は絶対あってはいけない。

テクノロジーの発展は人間社会をよりスマートにしてくれるはずだ。この大会で実証すれば、新しいモデルとして世界に発信できるだろう。ただし、今後は人口が減少する日本にとって、それを上回る生産性を実現しなければ経済成長は見込めない。

多様性と調和に彩られた東京2020エンブレム「組市松紋(くみいちまつもん)」のように、「ちがうから、おもしろい」「ちがうけれど、つながれる」そんな大会になるように、僕たちに今なにができるか考えよう。

この大会ビジョンを読みながら、コロナに負けない「心・技・体の精神」をアスリートとともに世界の人たちと共有したい。



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