見出し画像

8_たかがお茶出し、されどお茶出し

冷茶が美味しい季節ですね。
蒸し暑い日中の訪問先でよく冷えたお茶をいただくと、思わずホ~(´∇`) っと気の抜けた声を発してしまいます。

同時に『お茶の提供の仕方を見ると、その会社の顧客が想像できるなぁ』と思ったので記録しておきます。

私がこれまで働いた企業を振り返ると、提供スタイルは3つに集約されます。

茶托に載せて、グラスや茶碗で提供する

日系証券会社がこのスタイルでした。
夏場は冷やしたペットボトルの「お~〇お茶」をグラスに移し替えるだけなのですが、ペットボトルのままお出しするのはNGでした。

グラスに移す手間やグラスを洗う時間を考えると、一見無駄に思えます。
しかし我々のお客様は、一定以上の社会的地位があり「ひと手間かける」行動から「あなたを重んじている」という意図を読み取る昭和タイプが多かったのです。

こうした一見無駄な行動も、商談の一部として意義を持ちました。

ペットボトルに紙コップを添えて提供する

海外からの来客が多い投資顧問では、このスタイルでした。未開栓のペットボトルは安全の証ですよね。

値の張るスーツを着たお客様やお取引先も多かったです。移し替え用の紙コップを添えてお出しすることで、汗をかいたペットボトルがお客様のスーツを濡らすことを防いでいました。

ちなみに真っ白な紙コップは病院の検査に見えるので、明るい模様が描かれたものを敢えて購入していました。

ペットボトル単体で提供する

ベンチャーやスタートアップと言われる企業は、この提供スタイルをよく見かけます。

スタッフも来客もカジュアルな服装が多く、ブランドスーツに水滴がつくことを嫌うような訪問者は滅多にいないのでしょう。
お客様が気にしないのであれば、この提供スタイルが最も効率的です。

一方で注意してほしいのは、事業売却や銀行融資を考えている場合です。
なぜならM&Aアドバイザーやベンチャーキャピタル、そして銀行の融資担当は、値の張るスーツを着る側の人間ですから。

汗をかいたペットボトルを出したとしたも、彼らは穏やかな表情を保つでしょう。しかし冷静に観察しているのです。
『あぁ、これでは大企業や富裕層を相手に商売するのは難しいなぁ』と。

ここでペットボトルに紙コップを添えて出すことができたなら、正反対の評価になったでしょう。
その行動は『我々は貴方たちのカルチャーを理解していますよ』というノンバーバルコミュニケーションとして彼らに伝わるのです。

これは決して、相手に媚びる行動ではありません。
立場が変われば、常識とされるものも変わります。相手にとっての常識を想像し、それを踏まえてビジネスをするという合理です。

たかがお茶出し、されどお茶出し。
習慣化して、特に頭を働かせる必要もない行動だからこそ、観察者にとっては有益な情報源になるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?