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車椅子ユーザーJリーグ観戦記【FC東京/国立競技場】

【最終観戦2023年5月】
この記事は、車椅子ユーザーが公共交通機関を使ってJリーグ観戦に行く行程をまとめたものです。
試合内容の事は一切出てきません。

毎年恒例【多摩川クラシコ】

FC東京は、全身の東京ガスの頃から実力拮抗でいい感じでライバル関係だったと思っているのですが、その試合をある時期から【多摩川クラシコ】と銘打ち、共有企画を打ち出すようになりました。
最初の頃は「は?クラシコ?」なんて嘲笑われていましたが、コツコツと回を重ねる事でそれが実績となり、Jリーグ30周年の記念マッチのひとつとして、国立競技場開催を成し遂げられるまでになったのは、素晴らしい事だなぁと思います。

なんとなくではあるけれども、他の試合より気合いも入る気がするんです。
FC東京のホームスタジアムは味の素スタジアムなので、いつもと運用も違うだろうから、とにかくリリースを待って万全の準備をしたいところです。
味の素スタジアムより収容人数は多いし、金曜夜で平日開催ですから、チケットが取れないという事はないだろうけど、でもまぁ買えなかったら寂しいですからね。

で、チケットに関するリリースが出ました。
車椅子席はどうなのか?
別ページ記載なのは、どこのチームも大体そうなので、リンク先を見ます。

難解過ぎる車椅子席システム

???
え?ちょっと難解過ぎて理解出来ないんですが。
車椅子席としてチケットを売らないのは何故?

実はFC東京、ここ数年行く度に車椅子席への「あたりが強くなってる」と感じていました。
回を重ねる毎に「買いにくくなる変更がされている」のです。

一読では理解出来なかったので、Twitterで
「意味がわからない。どうしてこうなってるの?どうすればいいの?」
と呟いたところ、FC東京サポーターさんから何件か同じような回答が来ました。
「車椅子席を悪用する人がいて、その対策だと思います」
「!」
ああ、そう言われて思い当たる事がありました。
味の素スタジアム入場時、前の車椅子グループが揉めていて、かなり長い時間待たされたことあります。しかも何回も。
この呟きに対し、他の車椅子ユーザーからも「揉めているグループがいて待たされた事がある」というコメントが来て、そういうことかと。

私もイベントの運営側をしていた時期があり、難癖をつけて無理を通そうとする利用者に苦慮し、困り果てた挙句に苦し紛れで
「重箱の隅をつつけないようにする為のルール」
をつくざるを得なくなった経験があります。

味の素スタジアムの車椅子席は、コンコース上にあり、座席位置としては割と良いところにあります(前の人が立ち上がると、車椅子ユーザーは前が全く見えなくなりますが)。
私が目の前で揉めているグループに遭遇した時は、車椅子1人に対して友人複数で車椅子席を買って「一緒に見たい」と言って揉めていたのでした。
そういうグループが複数存在するとしたら、「そこでないと観戦する事が出来ない」車椅子ユーザーがチケットを買えなくなるという本末転倒な事になります。
その対策として苦肉の策で上記のリリースになったのだったら…と、コナンくんばりの推測をすると、謎が全て解けた気がしたのです。

で、あったとしても。

ビジターサポーターは、年に一度しかそのスタジアムに来る機会はありません。
来る度に「買う為のハードルが高くなっている」と困惑するし、バリアのある人には来てほしくないのかなと感じてしまっても仕方がないんじゃないかなと思います。

で、FC東京のチケット車椅子席購入の為の難解リリースの謎は、解読出来た気はするのですが、それが正解なのかどうかは分からないので、チームに確認しなければいけません。
難解な回答が来ても困るので、回答しやすいように、こちらの情報を簡潔に書いて情報を提示した上で、箇条書きで2つ質問を送りました。

週2回ペースで試合が行われている時期ですので、FC東京の運営側も忙しいだろうからと最大限配慮して分かりやすくしたつもりですが、返信されたメールに回答はひとつのみ。

え?いやもっとこう、ええ?

メール1回で質問は1個までとか、そういうきまりでもあるのでしょうか?

ま、まぁ、どのチケットを買えば良いかは分かりました。
ビジター指定席(場所はどこでもいい)を買って、その席を放棄して車椅子席に移動するという事だけは分かったので、チケットは買えます。
回答が得られなかった分は、最悪当日入場時に聞けばいいかと自分を納得させて、チケットを確保しました。

国立競技場までのアクセス

国立競技場は、東京オリンピック2020に合わせて改築されました。
なので中のバリアフリーは保証されていますし、天皇杯決勝で一度行っているので、中の移動の心配はない事がわかっていましたので、下調べはしませんでした。
今回の利用時にトイレとか再度チェックしてみようとは思っていました。

J1リーグの試合では、車椅子利用者の為の専用駐車場を準備しており、チケット購入時に別途申込む事で駐車場を使う事が出来ます(利用希望が多い時は抽選)。
国立競技場利用時に気を付ける点といえば、この障害者用駐車場の数が圧倒的に足りていない事です。
ビックリするほど少ないです。
あまりに数が少ないので、抽選でも混乱するからという理由で、障害者優先駐車場を開放しない選択をするチームもあります(コレで揉めた事例を知っています)。
小回りが効かないサイズの大きい車椅子を利用している方は、車じゃないと移動できないという実情を鑑みると、バリアフリーを謳って作られた新国立競技場で障害者用優先駐車場が「殆んどない」というのはどういう事なのかと首を捻りたくなります。不思議ですね。

話が逸れました。
電車で国立競技場に行く場合。
行きは、最寄り駅である

JR総武線 千駄ヶ谷駅
都営地下鉄大江戸線 国立競技場駅

を利用すると競技場が目の前です。
ただ、帰りは目の前である事が故に、混み過ぎて危険なのがこの2駅。
安全を考えるなら、ちょっと離れたところにある地下鉄駅まで移動して、そこから乗車する方が安全だし、ちょっと待ったとしてもこっちの方が早く移動出来ます。
利用可能駅は以下です。

東京メトロ副都心線 北参道駅
東京メトロ田園都市線 青山一丁目駅
東京メトロ銀座線 外苑前駅、青山一丁目駅

どの駅も、国立競技場からおよそ20分強位でつく事が出来ます。
急がば回れで、安全第一で帰宅しましょう。

試合前日のリリース

試合開催日前日に、FC東京から入場口のリリースが出ました。
そのリリースを、川崎フロンターレ運営がお知らせとしてリリースしてくれたので、フロンターレサポーターの私も職場の休憩時間にそのツイートを確認する事が出来ました。


あの、ええと、車椅子ユーザーはどこに行けば良いのでしょうか?
車椅子席のカテゴリーで席を販売していないので、私が持っているチケットはビジター指定席です。
FC東京のルールに従ってそのチケットを買いました。
しかも、どこを買えば良いか分からなくて、自分が車椅子ユーザーで障害者手帳所持者である事も問合せメールで伝えているので、車椅子ユーザーが来る事は知ってくれていてもいい筈。
このリリースに「車椅子席に移動したい方」へ向けての記載が見当たらない事で、

障害者は切り捨てる方針なんだな

と確信めいた理解をし、悲しくなりました。
ルールの隙をついて悪用利用しようとする人に散々振り回されて頭に来てるのかもしれないけれど、だったらその「一部の悪用利用者」を観戦出来ないように処分すれば良くて、「面倒だから障害者は来てほしくない」という方向へ意識がシフトしてしまっているのだとしたら、その考えは正しくないと思うのです。

コレが自分が応援している川崎フロンターレで起きている事だとしたら、もっと頑張ってあれこれ行動を起こそうと思うだろうし、実際どうすればチームに声が届くのかを考えて伝えようと努力すると思うんですが、こちらはあくまで年1度行くかもしれないだけのビジターです。
今回買ったチケットが無駄にならなければ最悪良くて、楽しみにしていた多摩川クラシコは、残念だけど今後は年1回ホーム等々力だけ観戦できればそれで良いと割り切るしかないのかもしれないなと、そんな風に考える事にしました。
実際、そういう事情で遠征しないと決めているチームは存在します。
悔しいですけど、受け入れる気のないところに強引に行っても、残念な思いだけを積み重ねて帰る結果が待っている事が多いので、諦めも肝心なんですよね。
お金も時間も有限でなので、辛い思いをすると分かっていてお金と時間を割くのは勿体ないですから。

とにかく試合は翌日です。
このリリースを知ったのは前日の夕方で、職場の休憩時間中でしたので、取り敢えずTwitterで、車椅子ユーザーはどこに行くのが正解なの?と引用ツイートしておいて、業務終了後、ダメ元でチームに問合せメールを送りました。

天皇杯決勝で国立競技場に行った時は確か一層目から入場した記憶がありましたが、車椅子ユーザーの入場口は一般入場口とは別に用意されているチームが多いので、どこに行けば良いのか本気で分からない。
ヤキモキしていると、当日競技場で待ち合わせて一緒に観戦する予定の友人から連絡が来て「午後休取るから早めに行けるので、現地でスタッフに直接聞いて連絡するよー!」と言ってくれ、それに賭ける事にしました。

エスコートで置き去り

当日、先に競技場に行った友人が入場口について質問してくれました。
入場口にいたスタッフは手持ちの紙(運用ルールを定めた一覧みたいなもの?)を確認するも、記載がなく何処かに問合せるなどしてしばらく待った後、
「一層目だったらどこでも良いそうです」
という回答だったそうです。

いや何処でも良いって?ビジターなのに?とは思いましたが、そういう追加リリースは出ていないし、問合せメールの返信も来ていなかったので、

多摩川クラシコ参戦の車椅子ユーザー各位
国立競技場一層目の入場口であれば何処でも受け入れ可能だそうです

という旨のTweetをし、用事を済ませてから国立競技場へ向かいました。
私達はビジターだから、ビジター入場口付近で待ち合わせて無事合流。
スタグルも何か食べたかったのでクレープを買いました。
無事入場を済ませて、さて何処の席にしようかと相談していると、
「席はお決まりですか?」
とスタッフに声をかけられました。
「いえ、今入場したところなので、何処にしようかと」
「ああ、どこでも良いわけではないんです」
「ハイ?」
「開放してる席は決まっていますので。ご案内します」
色々言いたい事はあったのですが、そういうと歩き出してしまったので、急いでついて行きました。
が、振り返りもせずスタスタ行かれてしまい、混み合うコンコースで全くついていけません。
「待って!ついていけない!」
と声をかけても、そのまま行ってしまい、あっという間に見失ってしまいました。
「ちょっと酷くない?」
と怒る友人。
車椅子って元々そんなにスピード出ないんです。
人が多い場所だと、小回りが効かないからゆっくり進まないとぶつかってしまいます。
見失った方向にしばらく直進すると、見失ったスタッフが立ち止まって待っていました。
「追いつけないからゆっくり行ってくれませんか?」
「はい」
その後も振り返る事はなく、スピードだけ遅くなって緩衝帯のすぐ脇に案内されました。
「こちらをご利用ください」
そういって立ち去りました。
顔を見合わせる私達。
「ね?大袈裟じゃなかったでしょ?ずっとこんな感じなのよ」
「大袈裟じゃないない。いやぁコレは酷いわ」

私は普段通勤で電車を利用していますし、遠征にも出かけます。
色々なところで、車椅子サポートを依頼します。
気持ちよく利用したいので、無茶なお願いや強引な依頼はしないように考えて、出来るだけ動線は事前に下調べをし、心配な部分は可能な限り問合せをして、お互いの妥協点を探しておく準備はしていきます。

それでもこういう対応を受ける事も、残念ながらあるのですが、ここ数年でここまであからさまなのは久しぶりでした。

車椅子席として開放している席は一部のみ

というリリース、何処かにあったでしょうか?
開放しない車椅子席の場所のリリースはありましたが、それはホーム側の話。
ビジターゴール裏の車椅子席であれば何処でも良いという理解は間違っていたのかな?
空いてる席を選ぶ事も出来ないのは悲しいし、しかもまだガラガラなのに1番端っこだし。
もう考えるのに疲れたので、あとは応援に全力を注ぐ事にしました。

国立競技場のトイレ事情

今回の国立競技場利用時に、トイレ等の施設確認もしてみようと思っていました。
トイレはとにかく数が多いのが特筆事項だと思います。

一般トイレの所にも♿️があったので中に入ってみたら、一般個室の一番手間が車椅子用トイレになっていました。
扉は折れ戸方式。ちょっと狭いです。
オムツ替え用の折り畳み台と幼児用シート、着替え用の折り畳み台がありました。
車椅子が入ると、介助の人はちょっと苦労しそうな広さでした。
中の通路もちょっと狭くて、車椅子と一般利用者がすれ違うのは無理かなという感じ。
手洗い場は車椅子用の低い物もありますが、混み合う時間にここを使うのは、色々気を使いそうなので、ベビーカー利用者とか幼児連れの方向けかなぁという感じです。

多目的トイレ専用のトイレも男女で分かれていて、それぞれ固まって複数ずつあります。
こちらは広さは充分あって、介助者が動きやすい広さは確保されています。
折り畳みベッドは、設置してるところとそうでないところがあるみたいですね。
前回利用した時は折り畳みベッドがあったけど、今回利用したトイレにはなかったです。それも一目で分かるようになっていると良いのになぁと思いました。

後、今色々問題になっているジェンダーフリーのこと。
国立競技場トイレに答えのひとつがありました。
一般男女トイレ
多目的男女トイレ
とは別に、両方のトイレの中間に独立した「多目的トイレ」が設置されていました。
ここは本当に誰でも利用できるトイレです。
ココを利用してみましたが、中は男女別の多目的トイレと全く同じでした。
ジェンダーフリーに拘るなら、こうするのが一番平和的な決着方法だろうなと思います。

国立競技場には、このほかにキッズルームや授乳室等が独立して準備されており、前回(2020年)に利用した時はカームダウンルームも設置されていました。
カームダウンルームというには、発達障害がある方等が、気持ちを落ち着かせる時に使う部屋なのですが、今回その部屋が見当たらなかったんですよね。
前回利用時が、丁度反対側だったからなのかなとも思ったんですが、カームダウンが必要な時にスタジアム一周しないといけないってどうなの?って思うので、そこがどうなっているかが謎です。
その代わりに「休憩室」と称された部屋が一定割合で用意されていました。
カームダウンルームが名前を変えたのかな?
「カームダウンルーム」も「休憩室」も、まだ一般には馴染みがあまりない存在なので、「この部屋はどういう時に利用できるのか」を分かりやすく記載した案内を、部屋の入口に提示してくれると利用しやすいですね。

最後に

FC東京の車椅子席のあり方が今後どうなっていくのか、他チームサポーターながら心配しています。
何故なら、味の素スタジアムの車椅子席がこういう事になっているからです。

2022年は、介助席が床に括り付けてあるようにはなっていませんでした。
なので、今シーズンに入る前にこういう工事がされた事になります。
いやもうビックリです。
介助者の椅子固定で困る事を書いてみます。

障害は多様で車椅子のサイズも様々なので、通常の椅子1個分で収まるとは限らない事。
椅子が固定されている事で、介助者の動ける範囲が限定され介助しにくい事。
満席だと介助者は椅子を乗り越えないと席に着けない事。

問題山積で大変だと思いますが、悪意のない車椅子ユーザーが、純粋にサッカー観戦が出来る環境になることを切に願います。

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