長女が手術!?その時私は切迫早産中。激しく動揺した話し②

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【長女が手術!?その時私は切迫早産中。激しく動揺した話し②】

前回のお話し

【長女が手術!?その時私は切迫早産中。激しく動揺した話し①】

の続きです。

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お医者さんに紹介状を書いて貰いました。けれど、その紹介状を持っているだけでは大きな病院では診て貰えません。手術をするにはかかりつけ医の同意書がないとならないからです。

次の日、私は早速かかりつけ医の所へ行きました。別の病院へ行ったら鼠蹊ヘルニアと診断された事、手術をしなければならないと言われた事、その為の同意書が欲しいと言う事を、かかりつけのお医者さんに話しました。するとかかりつけのお医者さんは「そう、鼠蹊ヘルニアだったのね。じゃあ同意書を書くから待っていて。」と言いました。ヘルニアを見逃した事をさらっとかわされたのです。

こどもで、しかも女の子で鼠蹊ヘルニアになるのはかなり珍しいケースと言う事なのでお医者さんは見過ごしたのかもしれません。でも『次回、誰かが長女と同じ症状になった時には今度こそ見逃さないであげて下さいよ。』と思いました。こどもに明らかに異変があるのに、説明してもらえないと物凄く親は心配になるのです。お医者さんに行くのは安心したい為でもあるのですから。けれど、私は同意書が貰えればさえすれば良いので、別段取り立ててお医者さんにこれ以上何も言いませんでした。

【小児外科のある大病院へ行く。】

小児外科のある大病院は、連日物凄く混んでいて、お医者さんも看護師も忙しくて殺気立っていると言われている病院でした。ドイツ人も「あの病院は2度と行きたくない。」と口を揃えて言うほどの評判の悪い病院。小児外科のある病院は市内に3つだけあり、その中で家から1番近いのがその病院だったので評判悪くても我慢するしか仕方ありません。働いている人の態度が悪いだけであって、手術の腕前で悪い評判はなかったのでその大病院で手術をしてもらう事にしました。

かかりつけ医の手術同意書を持って、早速次の日大病院へ行きました。初めて来たので、どこに小児外科の受付があるのか分かりません。通りすがりの病院の関係者に聞くと、1番奥の建物の1番奥にあると言われたので、長い長い道を重いお腹を抱えて歩いて行きました。

【受付の殺伐とした雰囲気に気が滅入る】

小児外科の診察室へ着くと、うわさ通り長蛇の列。受付開始時刻よりも20分早く辿り着いたのに、待っている人達でごった返していました。早めに来ておいて良かったけれど、それなのにこんなに人が居るなんて思っていなかったので驚きました。こんなに多くのこども達がこれから手術をするなんて、一体みな何を抱えているのだろう。

ここで待っている人達はイライラしている人も多く、看護師さんもイライラしながら患者さんに注意してくるので、雰囲気は最悪。受付開始のだいぶ前から並んでいても、なかなか自分の順番にならないほど混雑しているし、看護師さんの雰囲気も良くないし、みながこの病院を嫌っているのも納得しました。

【そして、受付の人と一悶着】

今回娘は初診なので手術の予約をする為だけに病院に来ました。ただ予約をするだけなのに、そこにも沢山の人が待っており、最終的には50分もそこで待たされました。この病院は混んでいるせいなのか小児外科の受付に電話をしても一向につかまりませんでした。電話での予約は出来なかったので、わざわざ予約する為だけにここへ来ました。病院の予約をするだけなのに、わざわざ直接受付まで来ないと話しさえ出来ないし、予約さえも出来ないなんて、今の時代にどんだけ効率悪い事をしているのか、と内心思いましたが混んでいるし仕方ないのかな。私は切迫早産中で、起き上がっているのも大変な時だったので、余計にこの非効率さに気が滅入りました。

受付の女性は案の定かなり機嫌が悪く、始めなぜだが私は「予約は出来ない。」と言われました。「見て分かるでしょ。ここは毎日凄く混んでいるの。だからこれ以上、初診の人を受け入れる事は出来ない。」と言うのです。『いやいやいや、そんな訳ないでしょ。緊急で手術する子だっているのに。事前に予約するのだから病院にとっては都合が良いでしょ。外国人だからと面倒に思って良い加減な事を言っているのかな?』と思ったので、彼女に負けじと私は主張しました。

「それはおかしい!私はそうならないように、ここへの紹介状と、かかりつけ医の同意書を持って来ているのです。何か他に手術するのに必要な書類があるならば用意するので言ってください!初診だからと断られる意味が私には分かりません!」と。受付の女性は「いや、それでも駄目なのだ。他の病院に行ってちょうだい。」と一点張り。この人と話していてもラチがあかなさそうで困ったな、と思い困り果てていました。するとちょうどその時1人のお医者さんが通り掛かりました。私が必死になって慣れないドイツ語で受付の人に訴えている姿を見たお医者さんは、私に「どうしたのですか?」と声を掛けてくれました。わざわざ身重な身体でここまで来ているのに、手術をしてもらえないなんてそんな事は絶対に嫌です。私はわらをもすがる思いでお医者さんに訴えました。

「私の娘は鼠蹊ヘルニアで手術をしなさいって他の病院のお医者さんに言われたのです。だから私はここに来ました。なのにこの人は、混んでいるし初診だから受付は出来ないと言うのです。私はかかりつけ医の同意書だって、ここの病院への紹介状だって持って来ています。それなのに初回だから受付をしてもらえないというのは納得出来ません。」と。お医者さんは私に「紹介状を見せて下さい。」と言いました。私は紹介状をお医者さんに見せると「そうですね。これなら問題ないですよ。」と私に言いました。

それからお医者さんは受付の女性に「何で受付できないって言ってるの?紹介状あるし問題ないじゃない。この病院が混んでるのなんて一年中ずっとだよ。混んでる事を理由にしてたら、みんな手術出来ないじゃん。そしたらここにいる人達みんなどこへ行けば良いの?君は人を選んで受付しているの?君がそんな態度をしているから、ここは余計に混むんだよ。きちんと仕事しなさい。」とピシャリと言いました。そして私に「受付ますから、手術の日取りを決めましょう。」と言ってくれました。

受付の女性はお医者さんに向かってぶつぶつ言い訳を言っていましたが、お医者さんには届きません。その後、お医者さんの見ている前で私は予約を無事、終える事が出来ました。そのお医者さんは「じゃあ後日、娘さんと一緒にまた会いましょう。」と言い握手をしてくれました。そして受付の人に「僕の仕事を増やさないでくれ!」と怒鳴りつけ部屋を後にしました。

お医者さんが通り掛からなかったら、私は受付をしてもらえなかったと思います。お医者さんのお陰で助かりました。本当に感謝です。

受付で予期せず一悶着がありましたが、とにかく予約が出来れば手術へと進んでいけます。ただ予約をするだけなのにどっと疲れてしまい、暫く受付で休憩してから帰りました。やれやれ、ドイツさん。お願いしますよ。もうドイツはこんなのばっかりで、本当精神的に消耗させられます。

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【お医者さんの診察】

数日後、お医者さんに診察してもらいに来ました。「確かに娘さんは鼠蹊ヘルニアですね。こどもだから手術をした方が良いですね。」との事でした。いよいよ手術をする事が本格的にこの時に決まりました。そして、「次回、手術の詳しい説明を僕ともう一人の医師、それから麻酔科の医師ともしてもらいます。娘さんと一緒に来てください。」と言われました。この日、お医者さんは長女の現状を診察し、手術の日取りも一緒に決めて病院を後にしました。

【手術担当のお医者さん2人と面談】

数日後、今度はいよいよ手術の説明です。2人のお医者さんが来て、手術に関する全ての事を詳しく説明してくれました。また手術で起こりうるリスクについても説明してくれました。リスクの話しを聞いていたら、私はみるみる怖くなってしまいどうやら表情に現れていたようです。お医者さんが「お母さん、怖いですか?」と私に聞いてきました。

「はい、怖いです。私は今まで一度も手術を受けた事が無いから身体にメスが入るのとか想像するだけで怖いです。しかもこれは私ではなくて、こどもの事だから尚更の事、怖いのです。娘は日本人だからドイツ人よりも体が小さいし、体の作りだって違います。ドイツは日本よりも麻酔を打つ量が多いと聞いた事があります。ドイツ人と同じ量の麻酔を体の小さい日本人が打つと、量が多過ぎて麻酔が効き過ぎると聞いた事もあります。だから尚更怖いのです。」と、せきをきった様に私の不安な気持ちを素直にお医者さんにぶつけました。

するとお医者さんは、「お母さん大丈夫、落ち着いて下さい。今私はリスクの話しをしたけれど、リスクに陥る可能性は本当に本当にごく僅かなのです。手術は3人のベテランの医師が立ち会いのもとに行います。もちろんリスクにならない様に最善の注意も払います。だから心配しないで下さい。リスクは滅多に起こりませんから。初めての手術だから怖いですよね。みんな初めは怖がりす。でも、本当に大丈夫ですから。お母さんは今、妊娠中だから余計に心配になりますよね。でももしそんなに麻酔に関して心配があるならば、麻酔科の先生に相談してみてください。相談に乗ってもらえますよ。」と言われました。

今なら軽い手術なのだからここまで心配する事はないと思いますが、当時は妊娠中でナーバスだった為、いちいち不安や心配に襲われていたのでした。

【麻酔科のお医者さんと面談】

次に麻酔科のお医者さんの所へ行き面談をしました。するとお医者さんは「こどもの場合、手術中に医師の声が聞こえたり、医師が動く様子を見ながら手術をするとパニックになる恐れがあります。なので部分麻酔ではなく全身麻酔をおすすめしていますが、どちらにしますか?」と。

えっ、ちょっと待って!!全身麻酔!?それって、大丈夫なのですか?

私はまたまた不安になり、先程のお医者さんに話したように、ドイツの麻酔の量は体の小さい日本人には多過ぎると聞いた事がある、という話しをしました。するとお医者さんは、「確かにそういう事はあるかもしれません。もし心配なら麻酔の量を極限まで減らしましょうか?ギリギリ目が覚めない程度までは、減らす事が出来ますよ。」と言ってもらえました。そんな事も出来るのですね!もちろんもちろん!それならば、そうして下さい!とお願いしました。

私の不安な気持ちを正直にお医者さんに話してみて良かったなと思いました。そのお陰で、手術に対する不安が軽くなったからです。ここの病院はお医者さんも看護師さんも忙しく、殺気だっていると聞いていましたが、殺気立っているのは看護師さんや受付の人でお医者さんはみな優しい、という印象を私は受けました。お医者さんが優しくて本当、助かりました。手術をするお医者さんが怖かったり、不機嫌な態度をしていたら患者としては心配になるし、信頼感も薄くなってしまいます。

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【手術の準備】

お医者さんには、「手術前でも幼稚園へは変わらず通って良いですよ。ただし、転ばない様に気をつけるよう娘さんに話しておいて下さい。」と言われていました。けれど私は心配していました。幼稚園の先生にも、手術をすること、長女が転んだ時に腸が破れたりしたら危険なこともお話ししました。先生は「私の方でも気をつけて目を配っておきます。」と言って下さっていましたが、こどもはいつどんな動きをするか分かりません。大事を取り、手術の3日前から長女は幼稚園をお休みさせて手術に備えました。

手術の前日、お医者さんの言う通り、長女は夜から絶食しました。

【手術当日】

朝7時に手術の予定でいたので、7時前に指定の場所に着いていました。けれど、時間になっても誰も来ません。暫くしてお医者さんが来ました。すると、「6時半頃、緊急の手術が入ってしまったのでそちらの手術をしています。手術室は今日はここしか空いていないので、まだ待ってもらわなければなりません。今やっている手術はまだ時間がかかります。その手術が終わり次第、すぐに娘さんの手術をするのでもう暫くここで待っていて下さい。」と言われました。その後、そこで2時間待たされました。長女は前日の夜から絶食していたので、お腹が空き過ぎて、喉が乾き過ぎていて辛い、と言い可愛そうでしたが緊急なら仕方ありません。

そして予定時間を2時間過ぎ、やっと長女は手術室に呼ばれました。お医者さんが長女に「ママにじゃあねって挨拶する?」と声を掛けました。長女は少し不安そうな顔ながらも、私に手を振りながら「バイバイ」と言いました。私は笑顔で「バイバイ」と手を振り、長女を見送りました。お医者さんと長女は、そのまま手術室へ入って行きました。

手術室の扉が閉まると、私は涙が止まらなくなってしまいました。私が手術をする訳ではないのに、なんでそんなに悲しいのか分かりません。妊娠中の独特な心情のせいなのか?長女を思い出しては泣けてくるのでした。手術中、心臓がドキドキして声が出せませんでした。私も長女と同じく前日の夜から絶食していたので、お腹が空いてもおかしくないのに、飲み物さえ喉を通りません。手術室の扉に耳を当ててお医者さんの声が聞こえるか?試してみましたが、何も聞こえませんでした。笑 じっと座っている事も出来ず、切迫早産でお腹が重いのに、席を立ったり座ったりを繰り返して、全然落ち着きがありませんでした。

30分後。手術室からお医者さんが出てきました。手術は成功したと言うこと、長女は手術前も落ち着いていて良く頑張ったということ、まだ麻酔が切れていないということ、麻酔が切れる1時間後まで長女は他の管理された病室で寝ている必要がある、ということを聞かされました。

手術は成功した!良かった!あとは長女の目が覚めるのを待つだけです。早く長女に会いたい!

【ベッドで長女に対面】

1時間後、看護師さんに声を掛けられました。「もうそろそろ娘さんが目を覚ますから、ベッドの側に行く?」と聞かれました。もちろん行きます!

病室へ入ると、長女はまだ寝ていました。腕に点滴が打たれていて、手術着を着ていました。一時間半前に「バイバイ」と私に言った長女にまた会えました。私は嬉しく思い、また、手術を経験した長女が少したくましく思えました。

10分位経ち、長女はようやく目を覚ましました。「目を覚ましたわね。大丈夫?私が分かる?今お医者さんを読んで来るからそのままでいてね。」と言い、お医者さんを呼びに外へ出て行きました。それから看護師さんは、お医者さんと2人で戻って来ました。

お医者さんは長女に「手術終わったよ。成功したからもう大丈夫だからね。手術前も良い子にしていて偉かったね。今日は家に帰って良いからね。反対側のお腹からまた腸が出てきてしまう事もあるからしれないから、その時はまたうちに来てね。また手術しよう。でも、とりあえず今回はもう終わりだよ。よく頑張ったね。お疲れ様。」と言い、握手をしました。

お医者さんは「まだ麻酔が切れたばかりだからぼぉーとしていて歩くのは危険です。車椅子を借りて移動しても良いですよ。大丈夫そうだったらこのまま帰って良いですから。これ以降の予約は予定通りして、暫く通院して下さい。今日はお疲れ様でした。それでは!」と言い、私たちは握手をして別れました。

その後何度かこの病院とかかりつけ医に通院し、長女の手術は全て終わったのでした。

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まとめ

初めて経験する手術が、自分でなくてこども。しかもドイツでする事になるなんて、ドイツに来る前は想像すらしていませんでした。こどもの事だから何が起こるか分からないから手術も想定しておくべきだったのかもしれませんが、うちの子に限って、と思ってしまっていたのです。

当時は私自身も妊娠中で、しかも切迫早産中。体はしんどいし、心の余裕も無かったのでこの件では本当に心身共に疲労困憊しました。しかし、何はともあれ無事終わって良かったです。

もう2度とこんな目にあいたくない!と思い病院を後にしました。ですがその後、こども2人合わせて3回も手術を経験する事になるなんて、この時はまだ知る由もなかったのでした。

そのお話もまたいつか出来たらなと思っています。

ありがとうございます。

※ヘルニアを見逃したかかりつけ医のお医者さんは、今でもかかりつけ医としてお世話になってます。笑 



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