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音のある街

汚れた空気とクラクションの嵐の中に、一瞬だけ鳥のさえずりが聞こえる。バングラデシュは、なんとも音のある街だ。

イスラム教のお祈りのサイレン、リキシャの走る金属音、車のクラクション、もの売りのおじさんの声、子供たちの雄叫び。

日本とまず違うと感じるのは、こういう「音」である。

一生鳴りやまない音。それは、なんか国自体が動いているような音。そういう音に過敏になるのは、やはりこの場所特有のものだと思う。

ここでは、朝から晩まで人々の叫び声が鳴り響き、クラクションで隣の人の声なんて聞こえやしないし、夜も気にせず工事が続いている。静かな生活を欲しい人には、きっと不自由極まりない。

しかしこれがまた不思議で、聞こえるものが多いと、頭にある空白がなくなって、次第に寂しいとか不安とか、そういう感情が薄れていく。まずは耳を澄まして集中し、必要なことだけ聞き取って、このカオスを生き抜いていく。静かでないおかげで、ストレスも大きいが、救われる部分も少しある。

「音」から文化を知ることもある。

昨年行ったバングラデシュ。初日に目覚めたのは朝の5時だった。イスラム教のお祈りの時間が近づき、アザーンと呼ばれる礼拝の呼びかけのサイレンが街中に鳴り響いていた。(アザーン:https://youtu.be/pnhtCiRNKns

「アッラーフ アクバル(神は偉大なり)」から始まるお経のような節。

当時、初めて聞いたこのサイレンに衝撃を受け、飛び起きたのを覚えているが、イスラム教の国というのは、これほど宗教に密接な文化なのか、と思うと新鮮だったし、少し嬉しかった。

私は、ここで聞こえる音が好き。

どんなにうるさくても、どんなにカオスでも、この街はやはり生きている気がする。明日街に出れば、いくつもの音に飲み込まれるのだろう。耳を澄まして、いろんな音を聞いてみる。それをとても楽しみにしている。

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