【ライブ感想文】どんなに頑張ったってあなたにはなれないけど仕方ないだろ憧れてんだ

ずっと昔からのあこがれの存在というものがいただろうか。どんなに頑張ったってあなたにはなれないけど、あなたよりすごくなろう、いつか誰かのあこがれになろうという存在。

そんなあこがれという思いが形になった場所を見てきた。

uP!!!SPECIAL LIVE HOLIC vol.24 GRAPEVINE vs マカロニえんぴつ


LIVE HOLIC限定の白いTシャツを着たはっとりさん、ステージ上で強い光を浴びていつもより強く浮かび上がる。息遣いから緊張が伝わってくる気がする。

どんなセトリでくるかなあ、夏フェス出演とか他バンドとのイベントも続いてたしそれににたセトリかな。そんなぼんやりしたこちらの心構えは1曲めの「愛の手」のイントロであっけなく崩れ去る。「十二月の空は青さが足りない」「いつか手を引っ張ってよ」「ねえ、このまま溢れた今日は忘れて生きる」緊張が滲みつつも切なく強いはっとりさんの声が耳から離れない。

どの曲もマカロニえんぴつのみんなの思い、愛が詰まっていたのだけれど、特に印象的だったのが、久しぶりに聴いたgirl my friend。私がマカロニえんぴつを初めて生で聴いたときにも演奏していた曲なのだけれど、そのときよりももっと近く、丁寧で、私がマカロニえんぴつを知ってからの日々はまだまだ浅いけれど、その短期間でもマカロニえんぴつが確実に進んでいることを実感できた瞬間だった。

ワンフレーズに、1つの音に、1秒1秒に緊張と高揚が滲んだ前半、はっとりさんがいかにGRAPEVINEを好きか、音楽を好きか、そしてマカロニえんぴつを信じているか、音楽という手段を使ってひしひしと伝わってくる時間だった。

「わたくしボーカルはっとり、GRAPEVINEの大ファンでして。」

緊張を振り払うようにはにかみながらしゃべるはっとりさんに、なぜかこちらが身震いしてしまうような空間。ブルーベリー・ナイツで観客の心をぐっと掴んで前半戦が終わる。


GRAPEVINEのカバー「光について」から始まった後半。GRAPEVINEへのリスペクトがぎゅっと詰まっている、でもマカロニえんぴつ色での塗り絵もしっかりやって見せる。

「GRAPEVINEに愛を込めて。光についてのカバーでした。」

初めからすごく温度の高かった彼らの熱がさらに熱くなる。洗濯機と君とラヂオの「待ってたか〜い」はいまだに耳から離れない。ついでにレモンパイ中のDJのマネもいまだにレモンパイを聴くたびに頭の中で再生される。

その熱を保ったまま、”夜を超えるための唄”ヤングアダルト で観客を包み込み、エンディングへ。最後が「春の嵐」とは。

マカロニえんぴつは、うまくいかない、周りみたいに順調に歩けない、そんな人に徹底的に優しい。立ち止まることを否定しない。でも同時に、立ち止まらずに進んできたマカロニえんぴつの今を全力で見せてくれて、わたしたちに希望を見せる。

「ドラマーが脱退して、どうしようと思ったこともありました。でも、続けてきて良かった。」

「後輩たちの希望に」「武道館やアリーナに立っていられるようなバンドに」

「あなたの信じている音楽が間違っていないと証明できるように」

最初は緊張が滲んでいたはずのマカロニえんぴつ、最後はもう緊張なんてどこにも見えず、でもいままで見たマカロニえんぴつとはどこか違う。片想いの相手を前にしたときのような、両親に普段は言わない感謝の言葉を思い切って言ってみたときのような。GRAPEVINEと、音楽に対して、いろんな思いが見えたライブだった。


どんなに頑張ったってあなたにはなれないけど 仕方ないだろ 憧れてんだ
どんなに頑張ったってあなたにはなれないなら 頑張ってあなたよりすごくなろう いつか いつか

「あこがれ」の歌詞にあるように、マカロニえんぴつはGRAPEVINEにはなれないかもしれないけれど、いろんな音、いろんな表現、いろんな感情をつかってマカロニえんぴつ色を作って、GRAPEVINEとはまた違う色を持った新しい存在として大きくなっていくのだろう。


はっとりさんは「かっこいい名前のバンドとダサい名前のバンドのツーマン」って言ってたけれど、私は「マカロニえんぴつ」(田中さん命名:マんぴつ)というバンド名がたまらなく愛しく、好きだ。

これからもついていくよ。武道館でも、アリーナでも、どこまでも。

天国寄りの地獄でも。


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