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あの日観た

 小林賢太郎さんが表舞台を引退した。
 私にとっては原体験の一つで、とても影響を受けた人物だ。
 小林さんがタバコを消すマジックをやっている様子が動画として上がっているのだが(多分、完売劇場のなにか)それを真似して、タバコを消すマジックだけは上手くなり、タバコを吸う際は披露している。
 
 初めて小林賢太郎というコンテンツに触れたのは中学生の頃。
 当時、怖い物を見ることが好きだった私は怖いコント三選なるまとめサイトを見つけて、そこで出会ったのがラーメンズのコント『採集』だった。
 怖さの中にも美しさがあり、散りばめられた伏線、言葉遊び、舞台のようなコントが当時の私には衝撃的で頭に電撃を食らった感覚だった。
 すぐさま近くのTSUTAYAに行き、採集が収録されているATOMとTEXTを借りた。
 そこでまた電撃が走ることになる。
 舞台全体を通して観るとまた違った感覚があったのだ。
 TEXTは話の筋が一本通って物語が進行していく。
 中でも1番最後のコント、『銀河鉄道の夜のような夜』はTEXTに収録されているコントの内容を回収しつつ、伏線も回収して、小林賢太郎、片桐仁の芝居がまた拍車をかけて感情に訴えかけてくる。
 それから私は、小林賢太郎という人物に傾倒していった。
 当時の僕には財力などなく、母親に勧めた結果見事に母もハマってくれて一緒にDVDを買い漁った。
 ラーメンズ、KKP、ポツネン 、小林賢太郎テレビ。君の席。etc。

 当時ハマり立ての私がやっていた公演は振り子とチーズケーキで、色々調べていったら『うるう』という作品があることを知った。
 このうるう、4年に1度しか公演されず当時はDVD化もされてない幻の舞台だった。いつか観たいなと思っていた。

 高校生になったころ、激震が走った。うるうを再公演するというのだ。
 当時の私は慣れない手つきでチケットを母親の分と2枚買って、初めて劇場というものに訪れた。
 開演、今でも鮮明に覚えている。私は幸運にも下手側の結構前の列に座っていた。
 上手から徳澤青弦さんが現れ、チェロの生音と共にカーテンの向こう、シルエットの小林賢太郎がいた。
 そして小林賢太郎が目の前に現れたのだ。
 今まで画面でしか見てこなかった憧れの人が目の前に居たのだ。
 夢見心地とはまさにこのことかと思った。
 内容もKKP史上最高傑作なのではと思えるほど美しくて本当に感動した。

 それからカジャラが始まり、またDVDを集めつつ、次もまた観に行きたいねなんてことを母と話した。
 
 そして2020年、うるうの再演が行われた。
 事実上、小林賢太郎最後の舞台だ。(このときはまだ知らない)
 2度目の観劇だった。
 誇りに思う。

 そしてうるうの円盤化。
 当時の私は呑気なもので、もううるうはやらないのではないか?なんて考えたりしていた。

 小林賢太郎が表舞台から退き、裏方につくということだが気付いたことがあった。
 私は小林賢太郎の作る作品が好きなわけではなく、『小林賢太郎が出演している小林賢太郎の作る作品』が好きだったのだ。
 この引退という事実、未だに自分は消化できていない。
 だって憧れの人物なんだ。
 青春だったんだ。
 大好きなんだ。
 
 この先、小林賢太郎がどのような形で作品を発表するか自分にはわからない。
 夢見たラーメンズを生で観ることもできなくなった。
 でも自分はどこまでも小林賢太郎という人間を尊敬し、敬愛しようと思う。
 
 賢太郎さん、次はどんな景色を見せてくれるんですか?
 

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