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ボンド・ストリートのナンパ系化粧品詐欺のお話

ボンド・ストリートというのは、日本でいえば銀座の中央通りみたいなところ。ロンドンのもっともハイソなエリアのひとつの一角にあるサザビーズのギャラリーで、売りモノの名画を見すぎたわたしは、頭がほわーっとしていた。

ふわふわ歩いていると、イケメンの、イタリア&モロッコ系ユダヤ人(イスラエル人)に、呼びとめられた。断っておくが、わたしの趣味ではまったくない。

今考えれば、無視して通りすぎるべきだったのであるが、そのままふらふらと店のなかに入らされた。かれは注射器状の容器(syringe)からクリームのようなものを少量出し、それをわたしの目の下に塗りながら、恐ろしい勢いで、喋りつづける。

ぼくアジア系の女性が大好きなんだ、最近イタリア人の妻と別れてね、イタリア人はダメ、ヒステリーで騒ぎまくるから。アジアの女性はそういうところがなくて、いいんだ。きみ、結婚してるの?しあわせ?(Are you happily married?)

気持ちわるい、と思いながら、Yes, Yesとブンブンうなずくわたし。

この男はわたし的には、本当に気持ちわるかったのであるが、かれのトークの勢いには、圧倒されてしまった。そして、たしかに、目の下のクマのようなものは、なくなるというほどではないが、多少シャキッとしていた。

気がつくとわたしは、このアイトリートメントのセットを、買っていた。

するとこの男は、さらに地下のエステができるスペースに、わたしを誘導した。そして、NASAがどうとかという動画をせっせと見せながら、弾丸トークをつづける。

ボクは三十八歳だけど、肌キレイでしょ?(確かに)こういうのいっぱい使って、すごいお金を使っているんだ。でもこのセットは四年間もつからね、一週間に換算すれば、たかだか二千円くらいのもの。

ボクはきみのことが好きだから、これもおまけにつけちゃうことにするよ。これも、これもつけちゃう。フェイシャルトリートメントも、ふつうは一回なんだけど、三回つけちゃう(いらないって)。

わたし:XXポンド(法外なお値段)って、、本当に四年間これだけ?

あ、じゃあ、このクリームは二年しかもたないから、もう一本おまけする!!

わたしはエステに通ったような経験は、ほとんどない。しかし、以前通っていたトレーニングスタジオで、美容トークをガンガンやられ、最初は笑っていたのに、そのうち買ってかえるようになっていったことがある。そんなことをぼんやり思い出しながら、この男の話を聞いていた。美容グッズは高い、ということに、逆の免疫がついてしまっていた。

催眠術にかかったかのように、わたしはまたデビットカードを出していた。

商談が済むと、この男はツーショットの写メを撮り、勝手にわたしのFB友達になり、メッセでこの写真を送ってきた。

あとで返品しにくればいいか、となんとなく思っていたのだが、うちに帰ってレシートを見ると、返品不可、と書いてある。

この催眠術トークは、確立された詐欺まがい商法の手法のようである。この化粧品会社はアメリカが本社で、オーストラリアのショップなどのお客も、同じ手法で騙された、というクレームが、ネットに上がっていた。

スペイン旅行の前に、あれだけ散々、スリ対策について調べ、今までなんともなかったというのに。そして、スリはしあわせそうな人を狙う、という記事を何度も読み、そういう顔をして歩かないように、気をつけていたというのに。

ちょっと結婚詐欺とも似たところがある、ナンパ系詐欺商法トーク。お店のなかに入ってしまうとかなり終わりなので、入らず断りましょう。

(写真は界隈のLouis Vuittonショップ。この化粧品会社とはなんの関係もないので、念のため。界隈の華やかさだけ現している、と思ってください)

#ボンド・ストリート  #ナンパ #エッセイ #コラム #詐欺 #化粧品 # ブログ

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