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Netflix「アンオーソドックス」を観た。

Netflix 「アンオーソドックス」

ニューヨーク・ウィリアムズバーグに暮らす超正統派と呼ばれるユダヤ教のコミュニティから抜け出し、新たな人生を切り開こうとする19歳の女性の話。

日本ではあまり聞き慣れないユダヤ教超正統派(ウルトラオーソドックス)。彼らは現代も自由の国と呼ばれるアメリカ・ニューヨークの街で暮らしながら、厳しい戒律の中、ネットは一切使わず、働くことなく生活している。

男女ともに服装や髪型にもルールがあり、真夏でも男性は黒いコートを羽織り、女性は結婚すると、男を誘惑するからと言う理由で地毛を他人に見せて流ことはできず、髪の毛をすべて剃られ、カツラを被ったりスカーフを巻いて過ごしている。

彼らにとって女性の役割は、ホロスコートで亡くなったとされる600万人を取り戻すために、できるだけ多くの子供を産み、完璧に家事をこなす母親になること。ストーリーの中で「出産マシーン」と言うワードが衝撃的だった。

結婚相手は自分で決めることができず、コミュニティの中で決められた初対面の相手と若くして結婚しなければいけない。自分の意思とは関係なく子供を産むように言われ、なかなか妊娠をしないと周りに責め立てられる。さらには「妊娠しないなら結婚していても意味がない」と旦那から離婚を突きつけられる始末。

主人公のエスティはそのプレッシャーや息苦しさに耐えられず、ベルリンへ逃亡。これまで学校にも通わず、外の世界と一切交わることなく過ごしてきた彼女にとって大きな一歩を踏み出した。

彼女の知識や常識は超正統派の世界でしか通用しなかったという現実を知り苦しみながらも、様々な価値観を持って自由に生きる人たちと出会い自分のアイデンティティを受けいれ始めるエスティ。目の前にあるチャンスに勇敢に挑戦していく彼女の姿はとてもかっこいい。

全4話、あっという間に見終わった。  

エスティの勇気ある行動に感動し、声を上げることの大切さや自分の可能性を信じて突き進むことの大切さを改めて感じた作品。  

私の知らない世界がここには広がっていた。宗教やコミュニティから抜け出すのが命がけで、特に女性は立場が弱く、味方がいないという事実に悲しくなった。  

彼らのような格好をしている人はブルックリンでよく見かけたが、正直これまでユダヤ教超正統派のコミュニティのことは知らなかった。興味や関心がなかったわけではなく、知るキッカケがなかった。

このドラマを観たとき、ポーランドのアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所に行ったときに感じた気持ちを思い出した。「労働は自由を作る」と描かれた入り口やガス室を見たときの気持ちは今でも鮮明に覚えている。でも、今の私の心の中にこの気持ちを表す言葉は未だ見つからない。  

今日も世界には私の知らないことで溢れている。


武藤千春

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