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御食国ワンダーランド小浜②漁船編

これまで"ダイバーシティなカルチャーマガジン"「mazecoze研究所」のみで展開してきたローカル見聞録ですが、今後noteとも連動しながら投稿数を増やしていきます!

さて、小浜での怒涛の分刻みスケジュール記録で再開した「ローカル見聞録」、2日目は今回の滞在メインでもある、定置網漁船への乗船です。
(「御食国ワンダーランド①発酵編」の記事はこちらから)

起きるべきか、寝るべきか

前日も、フランス人インターン生・モルガンの小浜での受け入れ先である、小浜市を代表する若狭塗箸老舗「マツ勘」の皆さんが歓迎会をしてくださり、割と夜遅めの解散だったのですが、私たちには朝03:30に出発する漁船に乗船するという重大ミッションがあります。集合・移動時間を加味すると、02:30起床。もはや寝るべきか、起き続けているべきか、迷う時間帯。ひえ〜

朝03:30の集合写真。余裕の手ブレ

とはいえ実は私、以前夫に

「あとこの人生で欲しいものは、漁船と漁業権

と語ったことがあるほど、実は漁船に乗ることが長年の夢でした。
やや大袈裟すぎる表現ですが、我が家のご先祖はみんな鹿児島の百姓で、山の民。夫の親戚にも漁師さんはひとりもおらず、ずっと海の男たちへの憧れみたいなものを勝手に抱いていたんだと思います。

これは、絶対に寝坊するわけにはいかない。
ホテルに戻り爆速でシャワーを浴びて、23:30就寝。しかし興奮と緊張で、なぜか1時間おきに起床し続け(笑)、最終的にアラームなしで02:30起床。念のため起きたらメッセージ送り合おうね、と言っていた隣室のサチコからも、「ねむすぎわろた」という起床メッセージが無事着信。

今回乗船させていただく漁船

真っ暗な中を進んでいく

今回、乗船させていただくのはUMIHICOさんととっても仲良しの「うらたに旅館」や宇久定置網有限会社代表・浦谷俊晴さん(注:現在、旅館はお休み)。浦谷さんたちが住み、漁をする集落は宇久(うぐ)と呼ばれ、小さな宇久漁港とともに数軒の民宿がある、のどかな場所です。

海の巨匠、浦谷さん

▼UMIHICOさんが書かれた、浦谷さんの記事はこちら

さて、船はあっという間に出港します。
真っ暗ななかを進むので、果たして何人の漁師さんが乗っているのか、どこに向かっているのか、わからないほど。

真っ暗な中を進んでいく

本日の見学メンバーは、ほりこしさん(UMIHICO)・大場さん(マツ勘)・モルガン・サチコ・私、そして急きょ参加の、小浜&京都で観光の仕事をするジョシュアさんの6名です。ジョシュアさんは今回、モルガンの滞在先としてホストファミリーをしてくれています。ありがとうございます🙏

アメリカ出身のジョシュアさん

さて、船はどんどん進んでいきますが、暗くもあり、どこに向かっているかも、あとどのぐらいで着くかも、一向に分かりません。
定置網漁というのは、頭では仕組みを分かっていても、どのように網を回収し、どのように魚を獲っていくのか。皆目見当もつかず、またほりこしさん以外のメンバーはみんな初乗船なので、暗い中をワクワクと、夢見心地で進んでいきます。

早朝、表情の明暗は明らか

30分ほど進んでいくと、だんだん空も白みはじめ、ウキが並ぶ場所へとやってきました。おそらくここが、定置網を張っている場所なんだと素人目にもわかり、緊張感と高揚感に包まれます。そしてよく目を凝らしてみると、ウキの上にかもめたちが並んでいて、漁が始まるのを待ち侘びている。

漁を待ち侘びるかもめたち

網を手繰り寄せていく

暗かったのでわからなかったのですが、船上に立派なクレーンが設置してあり、それが動き出すではないですか。そして気がつけば、漁師さんが次から次へとお出ましになり、総勢6名もいらっしゃる。

船上とは思えない大きなクレーン

船はゆるやかに旋回しながら、漁師さんたち総出で定置網を手繰り寄せていきます。そうすることで、網の中に入っている魚たちを追い込んでいくのだとか。この作業が、確認したところなんと30〜40分。網を手繰り寄せれば寄せるほど、徐々に小さな小魚が網に引っかかっているのが見えてきます。

網を手繰り寄せ、魚を追い込んでいく

ここで浦谷さんのサイトから、定置網の仕組みを引用しながら書かせていただきますが、なんと網の大きさは全長500m。自由に回遊する魚が中に入り、「運動場」と呼ばれるスペースで泳ぎ回っているうちに、どんどん中へ入り、出られなくなってしまうところを、追い込んで漁獲するのだそうです。

浦谷さんのサイトより
いよいよ追い込まれた魚たち

そしていよいよ魚たちが数メートル四方に追い込まれていく・・!
最初、小さな魚たちが見えてきて、最後に見えてきたのは、とんでもなく大きな魚たち。そしてものすごい数だ!!!ちょっとこれは、想像以上で、一同呆然。

巨大なクレーンで水揚げ

ここで船上クレーンの出番。
巨大かつ膨大な魚たちを、クレーンの網ですくい上げ、船内の水槽へ一気に流し込んでいきます。水槽も2〜3個あるので、これを何回も繰り返していきます。
ちょっとこれは、いままで見てきたどんな光景よりもダイナミックでスペクタクル。(?)見学者一同、語彙を失い、ひたすらフゥ〜!とか、ヒェ〜!とか言い続けていた気がします。(笑)

やまない歓声に、漁師さんもちょっと嬉しそう
巨大な船内水槽

食の来た道

そして何よりもすごいのは、6人の漁師さんたちが一言も発さず黙々と、阿吽の呼吸で、各自の役割を分担し、仕事をこなしていくこと。市場のない日以外、ほぼ毎日・毎朝、この仕事を続けているのだとか。
朝日に照らされた漁師さんたちの姿は本当に輝いていて、しまいには見学者一同も、一言も発さず、ただ茫然とその光景を見守っていました。

かっこいい漁師の皆さん

この景色が、その時々の人たちや技術によって変わりながらも、ずっと小浜で守られてきた風景なんだなと。漁師さんたちはこうやって日々、大きな自然や命と向き合って、その先に豊かな小浜や御食国の食文化、ひいては「日本の食文化」がかたちづくられてきたんだなと、「食の来た道」を知ることができて、とても深く感動し、考えさせられました。

当たり前のことだけれど、スーパーや飲食店でいただく食材は命であり、自然と繋がっている。そんな当たり前のことが、都会に住んでいると見えなくなる時があります。その分断を、定期的に再確認し、軌道修正していくことは、本当に大切だと思う。

小さなうつくしい鯖

そして、毎朝この光景を見守り、そのおこぼれにあずかっているかもめたちは、見学者たちよりもちゃんと漁のプロセスを知っていて、魚を食べられるタイミングで寄ってきて、漁の終わりまできちんと見届けてくれます。

別船から、ほりこしカメラより
別船から、ほりこしカメラより

かもめたちとともに宇久漁港へ戻るときには、もうみんな無言で、それぞれに朝日を眺めたり、いま目撃したばかりのダイナミック&スペクタクルな光景を反芻したり、ただ海を眺めて茫然としたり。思い思いにいま見たばかりの光景を消化しながら帰ってゆきます。

朝日とサチコ

魚たちはそれぞれの場所へ

おおよそ出港から2時間ほどの時間を経て、宇久漁港へ戻ったあと、ここからが時間との勝負。漁師さんたちは休む間もなく魚の選別をして、市場へ運び入れます。かっこよくてやさしい漁師さんたちに重々お礼をお伝えして、私たちも魚たちの辿る道に向かいます。

小浜市総合卸売市場では、早朝から各漁港で獲れたばかりの多種多様な魚種がずらり。先ほど、宇久漁港で獲れたばかりの魚たちも誇らしげに並んでいます。それを見つけて、なぜか何もしていない自分たちも誇りを感じる。笑

小浜市総合卸売市場の所長さんと
宇久漁港の魚たち

市場に隣接した商店では、早速、朝獲れたばかりの魚たちが店頭に所狭しと並んでいきます。小浜ならではの多様な魚種に、とっても美味しい醤油干しや旬の食材。。今回は買わないぞと決めていても、私はやっぱり地物の茹で蛸と、鯖と銀鱈の醤油干しをお買い上げしてしまいました。これがまたとってもおいしかった!

日本の漁港市場も、初めてのモルガン

そして小浜が誇る、「小鯛笹漬け」を製造される上杉商店さんへも訪問。
ちょうど市場で仕入れたばかりの小さくて可愛らしい「連子鯛(レンコダイ)」を、皆さんがひとつひとつ丁寧に手作業で加工しているところでした。「小鯛笹漬け」もまた素晴らしく手のこんだ食品で、連子鯛をひとつずつおろし、天然水で洗い、塩漬けし、米酢で仕込み、杉樽の中に一枚ずつ入れていきます。

この連子鯛、とても小さく加工の手間がかかるので、他の地域では使われることがほとんどなく、そのぶん他地域の連子鯛が小浜に集まってくるのだとか。

この道、数十年の加工場の皆さん

本当に小浜の食の奥深さは、何度訪れてもため息が出ます。
もちろん「小鯛笹漬け」も初めて試食するモルガン、とっても美味しいと喜んでいました!

上杉商店の皆さんと

そして私たちも、それぞれの場所へ

さて、ここからモルガンはマツ勘の皆さんと1週間インターンをさせていただき、私は一度東京に戻り、今年度事業をUMIHICOさんや小浜市の皆さんと一緒に精査していきます。

この感動を、またどうやって多くの方々に伝えていくことができるのか、楽しみながらやっていきたいと思います。

小浜市の皆さん、本当にありがとうございました!!

こちらの「ローカル見聞録」は、"ダイバーシティなカルチャーマガジン"「mazecoze研究所」でも過去の記事を読むことができます。
また小浜市の方々が小浜の暮らしと魅力を発信する「NEST INN OBAMA」でも、小浜の素晴らしい魅力をぜひお楽しみください。

(写真:ほりこしかずたか、編集・執筆:福留千晴)


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