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その『行きたくない気持ち』の正体は。

最近は『退職代行サービス』というものがあるらしい。
会社を辞めたいのだが、自分でそれを上司に伝えることが出来ない。そんな時に退職に関する一切の業務を代わりにやってくれる。

「雇ったすぐ直後に辞めてしまう。
それに伴って、たくさんの手続きや書類が必要になってくる。
企業側がどれだけ大変な思いをしていると思うのか。
社会人なんだから辞める意思くらい自分で伝えなさいよ。」

テレビの中のコメンテーターは怒り心頭の様子だ。

まぁそうだ。
会社側にとっては大変だろう。

でもそのサービスを利用したくなる気持ちも分からなくはない。
それを利用する人は決して弱い人ではないと思う。
ギリギリになるまで這いつくばるように会社に行くのだが、ある日何かが切れたかのように体が動かなくなる。
もうその時には、辞める意思を伝える力は残っていないのだろう。


少し話は変わるのだが、心理カウンセリングは、クライアントさんからのドタキャンが割と多いらしい。

そのためか、申し込みフォームには大きな赤字でキャンセル料の提示をしているカウンセラーさんをよく見る。
ほとんどは当日キャンセル料は100パーセント。

もちろん当たり前のことだと思う。
そのクライアントさんのために時間と場所を確保してお待ちしているのだから。

けれど以前わたしがお世話になったカウンセラーさんで、キャンセル料は一切頂きません、という方が一人いた。
その理由は、

「カウンセリングを申し込んでも、いざその日を迎えると、何か抵抗が起こる人が多いのよ。
急に具合が悪くなったリ、お子さんが熱を出したり。車のエンジンがかからなかったりね。
カウンセリングを受けることによって起こるかもしれない変化への抵抗。
それが怖くて、ありとあらゆる手段を使って、自分をそこへ向かわせないようにする。無意識にね。
そういうことが起こることが当たり前なの。そのくらい自分が変わることは怖いの。いくら幸せになるとは言っても。
それを乗り越えて、また来てくれるのを待っている。
それも含めてカウンセリング。
だからわたしはキャンセル料は頂かない。」

そう言えば、わたしもカウンセリングに向かおうとした時に、小田急線が止まってしまったことがあった。
動いては止まる。一向に前に進まない。
結局会場に着いたのは夕方だった。
その時、カウンセラーさんは笑ってこう言ったっけ。

「無意識の抵抗かしらね」
と。


会社を辞めたい人と、カウンセリングをキャンセルする人。
どちらも行くことに抵抗している。

前者は自分が辛くしんどい状況にいるのだから抵抗が起こることは理解しやすい。
けれど後者。辛くしんどい状況から抜け出すために申し込んだはずなのに、いざ行こうと思うと抵抗が起きる。

自分の『行きたくない気持ち』は果たして前者なのか後者なのか。
見分けられそうで実は難しい気がする。
不幸になりたくないから、と思っていたはずのものが、実は幸せになることへの無意識の抵抗かもしれない。




サポートありがとうございます。東京でライティング講座に参加したいです。きっと才能あふれた都会のオシャレさんがたくさんいて気後れしてしまいそうですが、おばさん頑張ります。