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CXがやって来る!

個性を耕す(cultivate)のは、カルチャー(culture)の力。
それは、企業としての「個性」であり、同時に働く人たちの「個性」でもある。
企業はカルチャーを育むと同時に、それぞれのかがやく個性を耕す土壌であるべきだ。

なんて言葉からはじまりましたが
最近、ビジネスで感じていること、
伝えていきたいことをインタビューしてもらいました。というのも、この度、
Tokyo Culture Labという新しいプロジェクトを立ち上げました。企業に、カルチャーをインストールするという新業態です。
4月1日から始動します。
そこに、CXという新しい言葉が出てきます。
CX(カルチャートランスフォーメーション)とはなんなのか、ぜひ、最後まで読んでください!

千原:
あと数年経てば、今人間が手掛けている仕事の9割はAIに取って代わられます。そうなった時、人間に求められるのはアルゴリズムによる数字ベースのマーケティングではなく、感覚や情緒に由来する独創的なアイデアを出す力。その柱となるのが“カルチャー”だと思っています。

これまで僕は広告や映画の世界で、新しいクリエイティブをつくり続けてきました。“千原徹也らしい”表現を追求することで、マーケティングのロジックにはないアイデアを生み、クリエイティブジャンプを起こす。その土台となるのが、今までに僕が培ってきたカルチャーの力です。文化・文脈を学び、発想の中へ取り入れ、表現に織り込んでゆく。結果的に、それがカルチャーを継承しつつも、新たなカルチャーをつくることにつながっています。

カルチャーは数値化できないために、今の日本社会では軽んじられています。特に、ビジネスの領域ではその価値を測ることが難しい。ただ、考えてみてほしいのは人が生きてきた価値は果たして数字で表現することができるでしょうか?AI時代だからこそ、数字で表せないことがいかに重要なのか、今一度見直す必要があります。

「かけがえのない存在に」

千原:
セオリーやマニュアルは「替えが効く存在」をつくるための合理的な方法でした。それは効率的な生産性には必要なツールだったことに間違いはありません。ただ、これからの時代は人間よりも遥かに優秀なAIがその領域を担っていくことになるでしょう。人間に求められることは、独創性。替えることも、欠けることもできない。誰にも代替できない。そういう「個性」を育てていくことです。

それは、企業でも同じことが言えます。たとえば、同じ商品を取り扱っている会社が5社あった場合、顧客はどの評価軸で判断するか。また、就職において若者たちは働きたい会社を何で選ぶのか。それは、企業理念や文化といったブランディングの領域ですが、平たく言えば「その会社がイケてるかどうか」ではないでしょうか。

僕は、ここでは、肩書きをCCO(チーフカルチャーオフィサー)と名乗っていきます。
企業のクリエイティブを統括するCCOではなく、
カルチャーを統括する人です。
CCO(チーフカルチャーオフィサー)の役割は、カルチャーの重要性を伝え、企業をイケてる会社にしていくこと。東京カルチャーやクリエイティブを融合させて、独創性のある企業文化を育みます。独自の文化と文脈を育む歴史的な企業にしましょう。

「世界で通用する企業であるために」

千原:
映画上映のためにウィーンを訪れた時、現地の人たちとの会話の中で僕が原宿に事務所を移す話をすると、日本を訪れたことのある方に「原宿だと同潤会アパートが素敵ですよね」と言われました。既になくなってしまった旨を伝えると彼は驚き、「日本はどうしてそんな文化価値のある建物を簡単に壊せるんだ?」と訊ねました。

ウィーンには今もなお300年前の建物がそのままの状態で残されています。寺院には画家クリムトの作品が飾られ、日常から子どもたちは彼の芸術作品に触れることができる。それは、日本の美術館で特別に北斎展や若冲展を開くこととは少し違います。暮らしの延長線上に、歴史や文化が息づいている。「街の文化の中で生活をしている」という意識があれば、人々の心に文化を尊重し、守ろうとする気持ちが芽生えます。

また、ヨーロッパでは日本とは違いシネコンで映画を観ることがスタンダードではありません。街の映画館がそれぞれに世界中から新旧様々なエンターテインメント作品や芸術作品を集め、特集を組んでビジネスを成立させています。隣町の映画館と同じことをやっていると「この映画館だからこそ」という特色が出ません。そこで生まれる一つひとつの工夫が個性となって映画館の魅力となります。結果的に、子どもの頃から幅広く映画作品に触れることができ、街の人たちが文化を養うことにつながっている。

対照的に、日本には全国にシネコンがあり、各地で同じ作品が毎日上映されています。つまり、「日本中、誰もが同じ作品だけを観ている」ということ。どうしても個性が育まれづらい環境になっています。

また、作品自体もマーケティング戦略によってつくられているものが主流。製作委員会制により、いかに利益を上げるかに重点が置かれている。日本マーケットの中での知名度の高いアイドルが主演に選ばれたり、脚本も世界のスタンダードより、日本のドラマ的なつくり方が採用されています。わかりやすさを追求した結果、鑑賞者の想像力を掻き立てる要素は排除され、どこまでも説明的になり、幼稚な内容に収まってしまっています。その土壌の中で、果たして優れた感性は育つでしょうか?
もちろん、素晴らしい作品もあることも前提です。

効率性を追求した経済の在り方としては、正しい手法なのかもしれません。ただ、今後AIが人間の代わりになる世の中では、それが本当に正しい方法なのかをあらためて考える必要があります。

今の原宿の子どもたちは、同潤会アパートさえ知らない。自分の街の歴史すらわからないライフスタイルが果たして良いのでしょうか。エンターテインメントだけでなく、個人や企業、そして日本の将来のためにも今こそ“カルチャー”を育むことができる仕組みづくりが必要です。

「自分の文脈を持っていないと、AIに負ける」

千原:
みんなと同じことをしていたとしたら、僕は広告の世界で生き残ることはできませんでした。常に世の中を俯瞰で見て、周囲との相対性の中で独自の表現を追求していく。それが僕の生存戦略であり、“千原徹也”という個性を育んできました。

映画づくりも同じです。日本マーケットの仕組みや、多くのクリエイターの“常識”に囚われていたとしたら、僕は勝てなかった。自分にとって大事なこと、作品にとって大事なことを追求したことで、他の人とは違う場所に辿り着くことができました。

2023年に公開した『アイスクリームフィーバー』では、90年代のピチカートファイヴ、コーネリアス、小沢健二などの渋谷系が好きで、この映画のリズムに取り入れたいと思ったのは、ある意味で、文化的な作業でした。マーケティングの観点から見れば、それらの音楽を扱うことは何の意味もありません。今トレンドになっているアーティストの楽曲を主題歌にした方がわかりやすく大きな反応は得られるでしょう。ただ、それらは僕の人生の文脈には関係がありません。つまり、僕ではない他の誰かがやっても同じということ。

マーケティングとは全く関係ない判断ができてこそ、僕にしかできない表現が生まれる。視野を広げて世界を見ることで、フレームの中で戦うのではなく、外から別のモノを持ってきたり、あるいは全く新しいフレーム自体をつくってしまう。世の中のしきたりやセオリーではなく、自分の歴史を重んじること。だからこそ、『アイスクリームフィーバー』は生まれました。

その力がなければ、この先のビジネスマンは生き残っていけなくなるでしょう。なぜなら、数字で弾き出せる回答はAIが代わりにやってくれるから。カルチャーの力、自分の人生の文脈を仕事に融合させることができなければ、会社に所属する価値はなくなります。

Zoomで会話ができる。業務はAIがやってくれる。リモートワークとアルゴリズムの社会になった時、社員たちは「この会社にいる意味とは?」という疑問と向き合うことになります。そこで、自分が20年、30年かけて人生で培ってきた文化をアイデアに取り入れることができる人が、そして、それらを育むことができる「イケてる」企業こそが生き残っていける社会になっていくでしょう。

時代は、DX(デジタルトランスフォーメーション)から、CX(カルチャートランスフォーメーション)へ!
Tokyo Culture Lab のサイトで、ぜひより詳しい事業内容をみてみてくださいね!

http://tokyoculturelab.com

追記:
何かをチョイスするときに、そこに自分の文脈、カルチャーが入っているかどうかを意識します。
友達とご飯に行くときに選ぶレストラン、オフィスに置く家具、毎日歩く道、すべてを自分の好きなもの、自分の人生に関わって来たもので選べているかどうか。
今、世の中はとてもとても過保護です。
食べログ、ランキング、YouTube、TikTok、すべてが行動を決めてくれます。
体験や文脈から生まれた「自信を持った選択」ができない時代です。
数字が決めてくれる、周りが決めてくれる、AIが決めてくれで、
そちらが正しいと言われます。
ただ、まわりにいる経営者陣、成功者と言われる人たちは、
やっぱり、自分の自信あるジャッジができている人ばかりです。
自分自身のカルチャーで、未来を切り開いています。

CX、今こそ、一緒に取り組んでいきましょう!

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