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【ルーン語り】オーディンに謝った日

ルーン占いを始めてからしばらくの間は、ルーンそのものがじゅうぶん興味深く面白かったのだが、続けているうちにもっともっとルーンのバックボーンが知りたくて本を読み漁っていた。

その中には、歴史学や言語学の研究者の方々が書いたルーン文字の実際に使われてきた歴史もあったが、それ以外に北欧神話の世界にも私はぐいぐいと惹かれてくことになった。

北欧神話の中では、ルーン文字を発見、というか会得したのは最高神オーディンということになっている。

オーディンという神は、とにかく知識や情報を集めるのに熱心だったらしい。

自分が座っている玉座は神話世界の中でも最も高い位置に立っており、それこそ世界中を見渡すことができる。

オーディンの肩に乗っている2羽のカラス、フギンとムニンは、飛び立って世界中で見聞きしたことをオーディンに伝えてくれる。

それだけでは飽き足らず、結局オーディンは自分自身も旅人となって世界中を周り、たくさんのことを見聞していった。

世界を統治するための情報収集である。

まあでも、このくらいだと、他の神様や王様達もやっていそうなことだけれども、オーディンの場合はこれだけではない。

その水を飲むと知恵がつくと言われているミーミルの泉の水を飲ませてもらうために、泉の管理人ミーミルが出した条件「片目を置いていけ」を承諾したのだ。

オーディン像がいつもウインクしているのはそのためである。

肝心のルーン文字を得るためにものすごい修行も行ったという。

世界の中心にそびえ立っている大樹「ユグドラシル」にぶら下がり、自分で自分の体を槍で傷つけながら飲まず食わずで9日間の修行を行った。9日目にルーン文字が現れたと神話には描かれている。

神話の中でルーン文字は魔法を使うための重要なアイテムとなる。

最初にそれを会得したオーディンが神々に伝え、神々が人間に伝え広まった。

ざっくりとだがこの辺りまで知った時、私は最初、この最高神のことを「知識や情報収集に貪欲な知りたがりのおじさん」だと思っていた。

自分が最高神であるためにはとにかくそうするしかなかったのだろうと。

だが、神話を読み進めているうちにその感想はだんだん変わっていった。

神話の中では、巫女による予言がなされる。

この世界は最後に、神々と巨人達との最終戦争「ラグナロク」によって全てが焼き尽くされ、滅びると。

巫女の予言はこの世界に住む多くの人によって信じられていたことだろうし、オーディンの耳にもきっと入ったのだろう。

ただオーディンは、最高神としてその結果を手をこまねいて受け入れることはできなかったのだと思う。

世界中の情報を集め、その時に備える戦略を練った。

死んだ兵士を集めて蘇らせ、最強の軍隊を作るべく訓練ともてなしをした。

そして、自らの身を捧げてルーン文字を見出し、魔術の力をさらに磨いていった。

ここまでしても、結局ラグナロクでオーディンは狼に飲まれて命を落としてしまうことになるのだが。

結果としてこの身が滅びて世界が滅亡することになろうとも、今やるべきこと、やれるだけのことは全力でしておこう、という世界の王の気合いを私は感じた。

学び始めた頃、「知りたがりのおじさん」などと評していた自分は、後々オーディンに「考えが浅はかでごめんね」と謝ることになる。

色々な書籍を読み漁ったけど自分の知識はまだまだ浅い。オーディンのことを、もっともっと知りたいと思う昨今なのである。


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