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焼き鳥の頂点を知り怖くて逃げ帰った話

 どうも、ニートのチーズフライささ美です。

 突然ですが、私はただのニートではありません。

 ニートはニートでも、舌の肥えたニートです。

 実家の料理になじめず、自力で料理上手になった母。元板前にしてフレンチを知り、ブライダル会社で中京エリアの総料理長を務めた父。

 二人の料理を食べて育った私は、ご飯が大好き。うまいご飯はもっと大好き。

 そんな私が今日ふらっと寄った地元埼玉の焼き鳥居酒屋がスゴすぎて、ビビり散らかした話をします。

 今日はチャリで隣駅まで行って、行きつけのカフェで期間限定のサワークリームアップルパイを食べてたんですね。「久しぶりのスイーツうまーい」などとのんきにはしゃいでたんです。

 その隣の店が、焼き鳥が自慢の居酒屋でした。

 以前、また別のバーで「ここおいしいよ、このバーが開店する前に居酒屋で飲む人が多いんだ」と紹介されたんです。

 地元のバーの人が「いいよ」っていうんだから楽しみ楽しみ。

 そんな軽い気持ちで入って、カルピスと名古屋コーチン四本盛り頼んで、お通しのもずく(優しい味)食べて、焼き鳥来るじゃないですか。

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 写真だと普通に見えますよね。普通の塩焼き鳥ですよね。

 香りからもう、ヤバ。

 香ばしさがすごい。鶏の焼けたいい香りが脳みそグワングワン揺らす。六月の晴れ間、炎天下を自転車で駆け抜けた身体が、これは何事だと細胞から騒ぎだした。

 ネギま串を持ち、豪快に噛みついて、引き抜く。

 それだけで、もう旨味がわかるのに、肉を改めて噛んじゃう。噛んじゃうんだ。

 じゅわっ

 んんんんんうまーいっ!!!

 パラダイムシフト。焼き鳥の革命。

 焼き鳥ってこんなにジューシーだったっけ!?

 主張しすぎず寄り添う粗塩とのマリアージュ! 噛めば噛むほどあふれ出る鶏の味とウメエ脂!!

 ハイ次ネギ!(もぐっ)

 野菜の甘みっっっ! こんがり焼き目のついた太ネギは、鶏肉と前世からの運命っっっ!

 ……落ち着こう。いったん落ち着こう。

 とりあえず写真を撮った。そう、画像一番左の串はネギまであった。

 エントリーナンバー二、軟骨。

 正直軟骨はあまり得意ではなかった。衣多めの唐揚げにでもしないと好んで食べなかったんだけど……

 こりこりぃ~~~~

 柔らかいけど柔らかすぎない、ちょっと柔らかい絶妙な歯ごたえ。味もいい。一瞬で苦手意識吹き飛びました、ありがとうございます。

 ここらへんから、焼き鳥の概念が覆されていくのを感じたのか、身体が無意識に防御姿勢を取り始める。

 迷いに迷った挙句、三番目は表面の脂がじゅわじゅわいってた鶏皮(写真一番右)。

 かりじゅわ、ぷりっ

 所詮鶏皮だとナメててごめんなさーい!

 うっま。カリカリに焼けた表面、とろける皮、ぷりぷりした感触がいっそ官能的ですらある。ギャップ萌えをやめろ。やめないで。

 この時点でかなり心が追い詰められていた。

 怖い。

 あと一本、すでに「超絶うまい」と理解している(理解させられた)ネギまを食べなきゃいけないの? 食べていいの? マジで?

 覚悟を決めて……食べる。

 柔らかい鶏の身を歯でゆっくりと噛みしめるたびに、幸福と興奮と恐れが同時にやってくる。複雑で難解な味ではなく、塩焼き鳥というシンプルな料理のうまさが押し寄せるのだ。防ぎようのないすさまじいパワー。

 あっという間に四本平らげる。迫りくる恐怖をごまかすために、カルピスをちびちびと飲む。

 でもやっぱり、怖い、怖い、怖い!

 人間の価値観ってあんな、あんな一瞬で変わるんだ。

 焼き鳥という料理がこんなにおいしいなんて。もう知らない自分には戻れない。戻れないんだ……!

 ふつふつと、ゆっくりパニック状態に陥る。幸いながら店主はテーブル席の対応に追われていて、明らかに様子のおかしい私には気づいていないようだった。

 バイトであろう店員さんにお勘定を頼み、逃げるように店を出ていく。いや、実際のところ私は逃げたのだ。

 焼き鳥が、あんまりにもうますぎて、怖くなっちゃったのだ。

 帰ってきて、風呂組み込んで、入って。興奮冷めやらぬ状態で、この文章をしたためている。

 あの香りを、味を、舌触りを思い出す。そのたびに頭を抱える。

 あの焼き鳥は、ヤバかった。

 あのまま焼き鳥屋さんにいたら、どうなっていたんだろう。

 今日は自転車で危なかったから飲まなかったけど。あの焼き鳥たちをお酒と一緒に食べたら、私はどうなっちゃうんだろう……!!! 優勝どころじゃないよね。殿堂入りだよね。

 愛知県民早く教えてくれよ。名古屋コーチンうまいぞって。あと店長の腕がいいんだろうな、素材と調理のどっちかが欠けても成り立たない味なんだろうなきっと。

 地元にこんなスゲー店あったのかよ! 恐ろしいわ!

 そんな感じでキレたり怖がったりと、やや情緒不安定になりながらこの文章を終えたいと思う。

 焼き鳥がおいしいから、みんな武蔵浦和においでよ。

 そしてみんな、焼き鳥の頂点に到達しろ。


旬鮮 福
さいたま市南区別所7-9-9
048-839-2133

 鳥刺し、酒盗、カニ釜めし……次に食べたいものも多すぎる!

 店内そんなに広いわけじゃないから、確実に入るには予約がオススメ。カニ釜めしは時間がかかるそうです。テイクアウトもやってた。お酒も充実してたから次は絶対歩きか電車で行くぞ!!!

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