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愛しくて残酷なこの世界に。 あたしは傷だらけになりながらもキスをする。

この世界は残酷で、そしてとても優しい。消滅しようと思えば希望をくれて、生きていこうと思えば絶望をくれる。その繰り返し。そう繰り返しだよ。何度でも何度でもおさらばしたいって、その度に憎んで失望して軽蔑して。それでもあたしはこの残酷な世界が好きだ。もう生まれなければよかったなんて思わない。どんなに辛くても息ができなくても進めなくても、生まれてよかった。正直にそう思うよ。ただ生きていくかは別の問題。そこは強要しないでね。今回のことだって、はじめてのこのケースにあたしは真っ先に世界とあたしの関係を考える。おしまいの世界の今、世界はあたしに何をしたいのか。どうして欲しいのか。どうなって欲しいのか。わからない。わかるわけはない。それでも、
「もうおしまいにしてください」と願ったあの夜に、そのきっかけになった人から電話が来て、肉欲にまみれたその内容に戸惑いながらも喜んで、そんなの複雑でしかない。良かったのか。悪かったのか。それでも確かにあたしは息ができるようになりました。心が軽くなりました。目を開けるようになりました。道をなんなく歩けるようになりました。それって、どうなの?
いっそ、そのままでも良かったんじゃないかしら。消滅を望みながら、その準備をしながら、生きていくおしまいの世界。ただそれだけで。
だから残酷。
それでもね。あたしは好きよ。この世界が好き。残酷で、優しくて、如何しようもないこの世界が。だから傷だらけになりながらもキスをする。

抱擁と接吻を。

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