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目も耳も弱りし母の恋ふ西瓜

立秋となった。猛烈に暑いが、朝夕は風に微かな秋を感じると思うのは、暦が先なのかもしれない。
母が口からまったく食事が摂れなくなってから、2か月近く経つ。あんなに食べることが好きだったのにである。西瓜は特に好きだった。西瓜が好きというのは買うのが好きだったということだ。大玉を買って、切るのが好きだ!と昔よく言っていて、学校から帰ってくると、狭い冷蔵庫の半分が西瓜になっている日がよくあった。

病床の、食事も摂れない母に、暑いね、西瓜食べたいね、と耳元で大きな声で話しかけた。
目が、肯いた。
西瓜、また食べられるといいね。なんで思う。
乞うが、正しいのだろうけど、恋しそうだったので、恋に。

秋立てり赤羽過ぎしところから

今、赤羽駅通過。短い旅をする予定。

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