お肉直売店リニューアル

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私は牧場を経営する家に生まれ二人姉妹の長女。

20年前、日本で初めて狂牛病(BSE)が発生し、風評被害で牧場が経営危機になり、自分の将来を考えさせられたことをきっかけに直売を始めた。

私たち畜産農家が大切に育てた牛の価格は10分の一になったのに、スーパーに並ぶ精肉の価格はそれほど下がっていなかったから。どのような仕組みになっているのだろう?という疑問と、お客様の本当の声を直接聞きたかった、というのが理由。

うちが育てる牛は、赤身肉主体の「ホルスタインの肥育」霜降りにならないので市場価値は低い。※肥育とは家畜を食べるために育てる飼育方法のこと。

実は私、畜産農家に生まれながら牛肉が大嫌い。私たち畜産農家は、牛を育てることが仕事なので、私が就農(農業に就職すること)した当時は自分が育てた肉を買い戻して食べるという概念が全くなく、両親も当たり前のように、知り合いのお肉屋さんからどこの誰が育てたか分からない、お肉屋さんおススメの牛肉を購入して食べていた。

ある時、卸先主催のイベントで、生産者としてスーパーの店頭に立ち販売促進活動をして一緒だった方に「あなた、自分で育てた肉を食べたことがないでしょう?それではここにいる意味がないわ。食べなきゃ」と指摘され初めて自分で育てた肉を食べた。(それも嫌々)

一切れ食べて目が飛び出るほど驚いた。

「今まで食べてきた肉とは全く違う!」

「脂がしつこくない」

「肉臭さもない」

気が付いたら250gのステーキをあっという間に全て平らげ、

「美味しい!もっと食べたい!」と生まれて初めて肉が美味しいと感動。

こんな経緯があったので、狂牛病(BSE)発生後、直売にチャレンジする際には

食肉が日本人の食生活に当たり前になると、脂が多い肉より赤身が多い肉を食べたくなるはず!なぜならば肉食が多い外国は霜降りを常食していない。それに、私と同じように肉嫌いが克服できる人がいるかしら?という想いを持って始めた。

その後紆余曲折あり、数年間、直売店から離れていたこともあったが

今年の3月27日のリニューアルをきっかけに再び担当となった。リニューアルには私が再び担当になる、とハガキを出した。オープンの日にはそれなりにお客様いらしてくださったが、常連だったお客様の顔がなかったので少し寂しい気がした。

【心の声】やっぱり忘れられてしまっているのねー・・・。仕方ないわよね。でもこれでは集客が大変になるだろうな・・・。


しかしその後、毎日のように一人二人とハガキを出した人が顔を出してくれるようになった。


「久しぶりだね。あんたがいなくなって思うように肉が買えなかったから他で買ってたけど、また来るね」


「あんたがいると安心するよ。また買いに来るよ」と往復2時間かけて20年前から通ってくださる80才過ぎたお客様も顔を出してくださった。


私が直売店で一番大切にしてきたものは

「初めて味わう感動」

ホルスタインの肉は肉繊維が硬いのでカッティングと部位の選定に工夫がいる。正直ものすごく気を遣うので大変。忙しい時には特に。だけど、目の前のひと手間を省いたら普通の美味しいになってしまう。

私が初めて食べた時の感動を味わって欲しいから、これだけはどんなに忙しくても絶対にひと手間を省かない、というマイルールを作って仕事してきた。

数年ぶりに担当に戻り、オープンしてから毎日のようにいただくお声に、ひと手間かけていることはお客様に伝えてはいなかったけれど、

お客様は感じ取ってくださっていた。想いは通じるのだ。

お客様が途切れて一息ついた時、嬉しくて涙が出た。

店を経営することは大変なことも多いけれど、喜んでくださるお客様が居てくださる限り、どんなことがあっても続けていこう、と自分に誓った。





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