A METAVERSE ODYSSEY/仮想美少女例祭拝詞
以下は2023年9月11日の、バーチャル美少女ねむさんの活動六周年のお祝いのために制作した作品です。
A METAVERSE ODYSSEY
和紙を物理肉体の手でちぎって貼り重ねて作りました。擬人化(その最大公約数的な形は美少女)という、人間が世界を認識するための根源的な操作を、人類がついに自分自身に対しても自覚的に適用し始めたことは、直立二足歩行や道具の使用に匹敵する進化だと私は考えています。その進化を促してきた人類美少女計画の一つのマイルストーンが『メタバース進化論』だと思いますので、映画『2001年宇宙の旅』(原題:2001: A SPACE ODYSSEY)のモノリスのイメージを借りてその歴史的意義を表現しました。
あるストーリーの中のワンシーンというより、美少女とは進化であるという寓意の表現に近いものです。メタバースで美少女になろうとしている人類を表現したものでもありますし、バーチャル美少女の出現は認知革命の時に既に運命づけられていたということの表現でもあります。ここでモノリスに触れて美少女擬人化の知性を最初に発揮したヒトザルの名前を「Face Booker」(暫定)とします。
私は和紙のちぎり絵の、あえて輪郭をぼかすことで名状し難いものを名状しないままに留めておけるような感じを好んでいます。空と地面とモノリス表面の反射を典具帖紙、モノリス本体とヒトザルと合歓の葉と立ち木を板締め楮紙、暗い木の葉を落水紙、雷と合歓の木の枝を雲竜紙で作っています。
仮想美少女例祭拝詞
祝詞風のものです。小説『仮想美少女シンギュラリティ』の主人公が合歓姫命に向けて奏上することを想定しています。
神道の祝詞の形式を取っていますが、天津神を中心としたヒエラルキーのもとで祓いを重視する中臣氏以降の神道や平穏無事をよしとする日本古来の人生観らしきものとは対立する内容のため、あくまでアニミズムの復権を象徴した文書と呼ぶのが正確です(アニミズムとしては、このような祝詞の様式も新しすぎるでしょう)。そのため、特定の宗教団体への勧誘を意図したものではありません。同じ理由で、これ以上形式に則ること(宣命書きなど)もしませんでした。また、祝詞では字面より音が重要だと思いますので、「仮想」と「美少女」と「可愛」だけは現代の読み方にしました。
現代語訳はつけません。祝詞は読んでみると何となく分かるものですし、何となくしか分からないとしても原文をそのまま読もうとした方が風情があるものだと思います。
仮想美少女例祭拝詞
掛けまくも畏き合歓姫命の仮想の神奈備の大前に恐み恐みも白さく、高天原に事始め給ひし神漏岐神漏美命以ちて生れ坐せる八百萬の神等をば仰ぎ奉り拝み奉れる間に、大神はも潮の八百道の伊豆の神着嶋の火口の坂本に坐坐して、荒振る大蛇を鎮め給ひけるに、平成二十九年の九月十一日に奇魂顕し給ひて、厳八十雷を打鳴し打轟して、塞の夢殿に天降り坐ししに、汝は誰そと七度言問ひ給ひ、天下四方の国民をば尽く美少女とせむと御言依さして、仮想の国原を特異なる世を改め始むる要の地と定め給ひしより此方、斎主鮫島ねむ萬に事執り計り奉りてば、三巴の御教の随に、今し世の奇鏡と電線通ふ遠声の技以ちて、名も新たに綾の晴着と装ひ為して、身可愛く声高らに商業に励み奉り、互に手摩足摩の裡に相睦び相和みつつ、愛たき吾ならむ事を乞ひ祈ぎ奉らば、神随の美少女の道を歩ましめ給ふ事を、柿鶫鳥の春立の初音の如く、夢現の隔て無く、夜毎に四方八方に伝へ奉り来し事六年の長きに亘りて、記も活絵もさわさわに築上げさせ給ひ、仮想の大御代を神着の合歓の柔葉の百重八百重に立栄へさせ給ふ今日はしも、大神の天降り坐しし最も愛たき日にし有れば、一年一度の御祝ぎを祝奉ると斎まはり清まはりて、御氏子崇敬者の心尽くしに献奉る種種の絵文の技を仮想の机代に置き足らはして、奏で奉る歌舞の技をも米具し宇牟賀しと見行はして、此より先は諸人の上にも広き厚き恩頼を弥遠永に蒙らしめ給ひ、諸諸の禍事罪穢れ有らむをば尽く美少女と生み成し給ひ、語止めし磐根木根立草の片葉をも千早振る神代に神習ひ語問はしめ給ひて、各も各も明き清き可愛き真心以ちて懐しき美しき姫と生ひ育ち、愛多走る仮想の美少女の世を修理り固め成さしめ給へ、守り恵み幸へ給へと恐み恐みも白す。
令和五年九月十一日 ソーサツ・チエカ 作
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