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キノコ(粘菌)が地球を循環させている:映画『素晴らしき、きのこの世界』

キノコの映画を観た。

キノコは、植物でもなく動物でもなく、その中間のいきもの、って知っていましたか?

わたしは、南方熊楠(みなかた くまぐす)さんの伝記を読んだときに知りました。

熊楠さんとは、日本の博物学者、生物学者、民俗学者。

生物学者としては粘菌の研究で知られている。フィールドワークで膨大な標本をあつめ、膨大な知識をもち、言動や性格もけた外れのすごい人だった。

どんな活動をしていたか、というと。

日夜、生物採集に没頭し、キノコの図譜3500枚、藻類のプレパラート4000枚、粘菌標本7000点近くを残した。

ロンドンに滞在して民俗学・人類学の英文論文を次々に発表し、帰国後は柳田國男さんとともに日本の民俗学研究を立ち上げる。
柳田國男さんから「日本人の可能性の極限」と称されたとか。

エコロジー(生態学)という言葉を日本に最初に本格的に紹介しながら、紀伊半島での森林伐採をやめさせるために奔走した。

(参照『クマグスの森~南方熊楠の見た宇宙』松居竜五 著)


あ、この映画『素晴らしき、きのこの世界』には、熊楠さんはぜんぜん出てきません。

ただ、わたしが、この映画を観ながら、以前、知った熊楠さんのすさまじさ、を思いだし、この映画で知ったキノコのすさまじさ、と重ねていた、というわけです。

キノコの世界、この熊楠さんがハマったのが、なるほど~とわかるほど、ぶっとんでいる。

そうだ、ここから先は、ネタバレになってしまうかも。

キノコのすさまじさは、ネタを知るまえに映画をみたほうが衝撃レベルでたのしいと思いますので、観る予定の方は、読まないほうがいいかもしれません。

タイムラプス映像が、森が生きて、動いているさまを、まざまざと映しだしています。

気持ち悪いのすれすれで、「ああ、うつくしい」と感じてしまうシーンもたくさんありました。視覚的にも、この映像の世界はおすすめ。

※ タイムラプスとは 数秒(ときには数分)に1コマずつ撮影したものを繋げて再生する。コマ送り動画のように見える撮影方法。「ラプス(lapse)」とは、「(時間の)経過・推移」という意味。

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キノコとは、粘菌が生殖のためにうみだした器官。

だからキノコの下の地面には、粘菌がいる。粘菌は、世界中どこにでもいる。すべてをつなぐネットワークなのだ。キノコが生えてくるから、その存在を思い出すけれど。目に見えないところで、すべてがつながっている。

インターネットのように、菌糸は張りめぐらされ、離れたところにある木どうしも菌糸をつうじて交信しているのだとか。それだけではなく、栄養を送り合ったりもする。

粘菌がいなかったら、世界はゴミの山なんだ。粘菌が死んだものを解体して、養分にして土壌へともどす。

粘菌は、地球の循環をつかさどっている解体者であり、死を予感させ、生命をうみだすもの。

熊楠さんは、粘菌の研究から、宇宙の真理、しくみへの考察にまで発想をひろげた。

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粘菌は、地球をひとつの生命体として考えるときのキーなんだと思う。

あなたの足元にもいる粘菌。これが全世界をつないでいる。もしかしたら宇宙ともつながっているのかも。

また、ある種のキノコは、人間の脳を覚醒させる成分をもつ。

脳に働きかけ、意識をかえる幻覚作用をおこす。これは病気を癒しもすれば、依存させる危険にもなる。

キノコがもたらす超感覚が、これまでの不可能を可能にし、人類の進化をもたらしてきたのかもしれない。

キノコの作用に、依存せず惑わされず、意識的につかいこなせるなら、キノコは人の精神をつぎの段階へと、進ませるものにもなりえるんだろう。

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