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おばあちゃんの、足踏みミシン

むかし祖母がわたしに作ってくれたチューリップ柄の浴衣を、30年の時を経て、今年はひよこが着ています。去年まで姪が着ていたので、ひよこは3代目。わたしたち、おばあソウルなんちゃら。

お盆休みに祖母宅で、肩と腰の上げをひよこサイズに直してもらいました。祖母は、ひ孫のために、かつて自分がつくった浴衣を直すことでスイッチが入ったようで、なんと翌日、たった1日で、サイズアウトしたとき用の次の浴衣をこしらえてくれて。母が「浴衣のつくりかた、教えてもらおーっと」と買ってきた反物で、母の出番ほぼなしで、かたかたかたーっとミシン踏み踏み。

祖母のミシンは、昔ながらの足踏みミシンです。もう60年近く前のモノだと思われるそれは、テーブルの木は使い込まれてつやつやしていて、黒い鋳物製のミシン本体とペダルの上部には金色でMITSUBISHIの文字が。当時、三菱電機はミシンも作っていたそうです。祖母宅は阪神大震災で全壊したのだけど、その全壊した家の2階から引っ張り出してきて、いまもばりばり現役で働いています。浴衣をつくるために見てた和裁の本だって、黄ばんだ紙の風合いも中に書いてある女の人の絵や写真も、昭和レトロ感満載でした。

祖母もとうに80歳を超えて、年々といわず半年単位で背中はちゃくちゃくと丸まっています。夏前に祖父を亡くしてからは気持ちも弱っている様子。いつまでもかったんかったんミシンを踏む祖母を見たいと願うけれど、けれど。先のことを案じてもしょうがないけど、どうしてもそういうことがよぎる夏でした。たくさん、ひよこと顔見せに行こう。

百年休まずに チク タク チク タク
おじいさんといっしょに チク タク チク タク

「大きな古時計」

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