彼女が死んだ家

彼女が死んだ部屋は綺麗に片付けられていた。彼女はその真面目な性格の所以から、死ぬ前に色んなことを計画的に片付けた。彼女の部屋は塵ひとつ落ちてないほど掃除されて、大方の物は捨てられていた。

彼女が好きだった本がたくさん詰まっていたはず本棚は空っぽで所在なさげにそこに佇んでいて、それは私のようだった。

コップがひとつ、流しに置いたままである。そのコップを取ろうとして手がガタガタ震えた。彼女はもう死んだのだと。 玄関に残された靴だけが薄く汚れて置かれていた。

彼女が死んだ日が来るたびに、美しく横たわった遺体と家族の悲しみのことを鮮明に思い出す。

私のことなんて天国から見守ってはないけど、あの日のことが、どこか心の支えになっている。