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【脚本】おめでとう、元気でね

原案はこちら

3月29日 - 空港前・タクシー乗り場

タクシーから降りるブレンダとその両親。
待ち構えていた瑠奈。

瑠奈「…あーいた!ブレンダ…と、親御さん…どうも」

ブレンダ「同級生(両親に囁く)。月島さん、わざわざここまでお見送りに?」

瑠奈「いや…ていうか、アンタには色々言いたいことがあるから」

ブレンダ「出国の日取り、黙ってたことですか」

瑠奈「…それもだけど。澤井さんから、今日発つって聞いて…」

ブレンダ「大丈夫、まだ時間はありますから」

瑠奈「…」

ブレンダ「お父さん、お母さん、先に行って待ってて」

瑠奈「…」

ブレンダ「どうぞ、何なりと」

瑠奈「…バンドのことだけど」

ブレンダ「…」

瑠奈「その…悪かったよ」

ブレンダ「え」

瑠奈「無理に誘って…。ボーカルの穴は、何とかして埋める」

ブレンダ「…仕方ないですよ、私も両親の都合には逆らえませんから」

瑠奈「言ってくれれば、わたしだって、あんなにしつこくしなかった」

ブレンダ「…そうですか」

瑠奈「ごめん」

ブレンダ「私は楽しかったですよ」

瑠奈「何が」

ブレンダ「追いかけっこみたいで。いつも、あなたからどう逃げようかと思って」

瑠奈「…今日は、逃げないんだ」

ブレンダ「ええ、最後かもしれないので」

瑠奈「…っ」

ブレンダ「…ああ、直接顔を合わせるのがってことですよ。スマホがあればSkypeとかでも全然——」

瑠奈「やっぱ、わかってないよアンタ。」

ブレンダ「!…」

瑠奈「このネット中毒者。」

ブレンダ「…(微笑)」

瑠奈「何で…笑ってんだよ!」

ブレンダ「…いえ、失礼」

瑠奈「アンタ、いっつもそうだ!よそよそしくって…一段上からわたしのこと見て!」

ブレンダ「…月島さん、泣いてるんですか?」

瑠奈「っ…泣いてねーし!」

ブレンダ「…」

瑠奈「…。これ、やるよ」

ブレンダ「…これは」

瑠奈「キーホルダー。うちのバンドのグッズ」

ブレンダ「…ありがとうござ」
瑠奈「タダとは言ってない」

ブレンダ「…ああ、おいくらですか?」

瑠奈「…その敬語、やめたら、やる」

ブレンダ「…」

瑠奈「アンタ、世界中移り住んできたんだろ。根無し草だから…どうせ離れ離れになるって思って、相手と一線引いてるだろ。アンタはそれでいいのかもしれないけど、わたしは…アンタと対等になりたい」

ブレンダ「…そうですか」

瑠奈「ていうか…アンタ、今日誕生日だって、聞いたから…」

ブレンダ「…」

瑠奈「頭はいいし、背も高いし、姉ちゃんみたいだと思ってたけど、年下だったんだな」

ブレンダ「…そうそう、だから敬語なんですよ」

瑠奈「またそうやって逃げてる」

ブレンダ「…」

瑠奈「わたしはバカだけど、人のことはよおくわかるんだからな」

ブレンダ「…ふふふ。ずるいなあ」

瑠奈「…ふふっ」

ブレンダ「こういう日が来ても辛くならないように…ずっとやってきたってのに」

瑠奈「…ブレンダ」

ブレンダ「…瑠奈。…これでいい?」

瑠奈「…うん。ほら、受け取って。…わたしらのこと、忘れんなよ」

ブレンダ「…ありがとう。忘れないから」

瑠奈「ふふ…誕生日おめでとう。」

ブレンダ「うん。うん…」

瑠奈「…泣くなよぉ。」

ブレンダ「…瑠奈こそ。」

瑠奈「ううっ…ふぐっ」

ブレンダ「握手。しよ…」

瑠奈「うんっ…」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


瑠奈「はあー、泣いたらスッキリしたわー」

ブレンダ「…じゃあ、また。」

瑠奈「うん。」

ブレンダ「着いたら連絡するよ。」

瑠奈「向こう…中国って、ネット不自由なんだろ?」

ブレンダ「まあ、多少不便にはなるけど…何もできないわけじゃないし。とりあえずSkypeは大丈夫」

瑠奈「動画も作れそう?」

ブレンダ「問題なく」

瑠奈「観に行くよ」

ブレンダ「アカウント変わるからね」

瑠奈「ああ」

ブレンダ「じゃあ、元気でね。」

瑠奈「うん、元気で。」

ブレンダ、空港に向かって歩き出す。
瑠奈、見送る。

振り返るブレンダ。

ブレンダ「瑠奈ー!」

瑠奈「なにー!」

ブレンダ「いつか、大人になったら、会いに行くからー!」

瑠奈「…ははっ。おー!絶対だからなー!!」

手を振り合う二人。

ブレンダ、空港内へ入る。
瑠奈、帰路へつく。


ブレンダ「絶対、ね…。強引なんだから」


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(2019.3.31)
「ココナラ」にて声優さんに朗読を発注しました。
ボイスドラマとして編集・公開予定です。

次の作品への励みになります。