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The Colony: Faith and Blood in a Promised Land 入植地:約束の地での信仰と血

2022年8月7日

最近、モルモン教徒の話に囲まれています。タラ・ウエストオーバーの「Educated: A Memoir」も衝撃的で、いまだに良く思い返します。

また、ハンフォードの被曝者に関する本、The Hanford Plaintiffsを読み返していると、先住民に加え、モルモン教徒もかなり被害にあっていることがわかります。

そして、スパイダーマンを演じた(歴代のスパイダーマンの中で一番人気がないと言われていた😂)アンドリュー・ガーフィールドが主演した「Under the Banner of Heaven(天国という幟の下で)」というテレビ番組も見ました。ユタ州のモルモン教徒の刑事をガーフィールドが演じ、彼の相棒が先住民のビル。平和な彼らのコミュニティーに、ある日母娘の惨殺死体が。。。そこから地域では名家とされるモルモン教一家のカルト化、右翼化が浮き上がってくる、というお話。

この話、実は現在のアメリカの右傾化(それはキリスト教と結びつくことが多いのですが)をよく説明してくれます。経済的に難しくなってくると、家族に対する沽券に関わる、と考えがちな男性が、その理由を政府や外国人、女性などのせいにするパターンです。家父長制の悲劇です。

さて、この本は、サリー・デントンによるもの。モルモン教徒の女性と子どもがメキシコでドラッグ・カルテルにより惨殺という2019年の事件には裏があった!という筋書きだったので、興味をひかれ購入!

モルモン教の歴史も学べたし、メキシコに移住していた(そしてアメリカとの二重国籍を何代にわたって持っている)家族がいたとは!そして、彼らは昔のモルモン教にあった「一夫多妻制」を実践しているため、家族もむちゃくちゃ多い。(それがメキシコに移住した遠因でもあります)。「一夫多妻制」って、少数グループがグループの結束を維持、あるいはその力を拡大するという機能もあるんだ、という発見も。もちろん、その裏には、多産と子どもの世話を厭わない女性の存在が不可欠で、そこには女性が男性に絶対服従するという教義があって成立する不平等です。

そして、メキシコで結構やりたい放題やってるモルモン教徒たち(と言っても、一般のモルモンの人たちがそうだということではありません)。例えば貴重な水源を独り占めしたり、土地を先住民から取りあげたり。

そんなわけですから地元の人ともうまくいっておらず、ドラッグ・カルテルとも険悪な状況。そんな中での女性・子どもの殺人でした。カルテルの争いに巻き込まれた、というのは表向きの話で、実際はもっと色々あるようで、その中で「これだ!」という答えが欲しかったのですが、色々「仮説」が紹介されるだけ。特に私が興味を持ったのは、なぜ危険が分かっていて、女性たちだけが車で出かけたのか。どうやら、家族内でも「色々」あったようです。でも、そこには踏み込んでいなくて、すごく残尿感(!?)のある読後でした。

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