警察のやっかい。

自分の右足には、ナイフで刺された傷がある。四十年前のものだが、未だに古傷は痛む。
あるとき、警察官や刑事がどやどやとうちにやって来て、何ごとかと驚いていると、いきなり、「何でお母さんに暴力振るうんだ!」
どこから入った情報だ? 母に暴力を振るったのは、俺じゃなくて、兄だって。
これには、警察も平謝りに謝っていたが、母も確かに大変だった。学校を辞めた兄と日中、二人きりになって、部屋の中へ母が逃げ込むと、兄がそのドアを蹴り破ったりもしていたらしい。家もボロボロで、結局、こんなことやっていると逮捕だよと警察に警告されて、兄は家を出て行った。
しかし、その後も兄は母にカネを無心する。初めはすまん、すまんといいながらカネを受け取っていたが、最近では、カネをよこさないと家に押しいるぞ! と脅迫がはじまったので、また警察の出番。
「お兄さんが来たら、110番してくださいねえ」
署で、かなり優秀とおぼしき捜査員は、笑って帰っていった。
人生に渡って、警察のご厄介にならないことって、何だろう。考えることもいつものことだが、こればかりは仕方がない。
命を守ることを最優先に日々、暮らしている。

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