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【読書感想】「バチカン奇跡調査官 黒の学園」

前半ネタバレ無し
下の方に段落開けてネタバレを含む感想

「バチカン奇跡調査官 黒の学園」
藤木稟

エンタメ度    ★★★★★
文の理解しやすさ ★★★★☆
ギミック性    ★★☆☆☆
世界観の独特さ  ★★★☆☆
読後の満足感   ★☆☆☆☆
(この辺を重視して私は本を読んでるよという目安。あんまり参考になんないぞ)

バディ物の探偵のような構成だけど「奇跡調査官」という特殊な役割を持っているので、全体的に俗世離れした雰囲気がある。
カトリックのお話ではあるけど、その知識を一切持ってなくても楽しく読めるのが一番の特徴かもしれないと思った。
扱うテーマの割に古臭さが無い(良くも悪くも)。
一昔前の陰謀論(ネタバレにならないようフェイク入れながら例えると「キリストは日本に来たことがある」とか)を楽しめる人ならより楽しく読めるかもしれない。

文章はセリフと改行が多いのでサクサク読める。
ほぼ漫画みたいな感覚で読めた。
この感覚はライトノベルでよく味わえるやつだ。
チャプターごとにタイトルがついてる。

話のオチはロマンに全振りしている。
宗教的な部分はスパイスくらいに捉えていい。

カトリックってかっこいいな!って思える本だった。

ここから下は本編のネタバレを含む私的に印象に残ったシーン
















一作目だからか作者がやりたいこと全部詰め込んでる印象。
ちょっとゴチャついている。
ナチスやヒトラーが黒幕なのはすごい面白いんだけど、それに巻き込まれたモブたちの扱いまで手が回っていなかった。
セバスチャンくんがウィザードマスターに選ばれたのって、ロベルトに暗号を教えるために経緯を描写しといた、みたいなメタ的な意味にしか思えない。
セバスチャンくんへの描写はモブじゃなくて半レギュラーぐらいの立ち位置だったからもうちょっと欲しかったな、と思った。

マリオくんはどうした…?なんで殺されそうになったのかな?
「浮いてた」っていう奇跡や聖痕が出るって奇跡を、一番神秘的な子に当てはめといたみたいなメタ的な意味合いかな?
その後狙われないしね。
記憶が消えてるかどうかはマリオくんにしかわからないんだから、大事を取って亡き者にしとくか…と犯人は思いそうなものだけど。

聖痕現象も「トラウマが蘇ると肉体がその時を再現して血やアザを出す」という物がどこまで一般的なのか分からなくて、私はこれを踏まえた上で奇跡だと思ってしまう。
…けども他の奇跡のトリックについては丁寧に描かれていたので好きだった。
偶発性に頼りすぎてるところもあるけど、奇跡を科学で証明するにあたって、信仰を馬鹿にしないバランス加減が良かった。

それと作者はたくさん資料を読み込んでいるのが分かってそれも良かった。
ナチスの飛行船の話とかね。
資料の内容を全部キャラクターにセリフとして言わせるのも、その場で情報をくれる手法として話が早くてよかった。

あとは期待を裏切らない隠蔽ぶりね!
勝手に「バチカンって都合の悪いことは隠蔽してるだろ…」という偏見を持ってるんだけど、主人公二人組がなかなかのことを隠蔽しまくってて面白かった。
実際のところは知らないけど「やっぱり!?」ってなった。

平賀さんが敵に硫酸ぶっかけるのとかも良かった。
オカルトにオカルトで返してるんだよね。
「この人が神であるならば聖水は効かないはずである」→「聖水をかけたら顔が溶けたので悪魔である」
という証明をするためにエグいことやるなあ、と思った。

暗号文の描写があるときは、図説で暗号を出してくれるのも良かったな。

この本のあちこちから作者の気合を感じる。
チャプターごとにタイトルを振ってるのもそう。
2作目も読み終わってるんだけど、そっちはチャプターごとにタイトル振られてない。

この本を読みたいと思ったのは「私が創作でキリスト教を扱うことがあったらどこまでやったらいいかを図りたくて」だったんだけど、「カトリックってかっこいい!」ってことと「なんでもやっていい」ということが分かる感じだった。
なんでもはやってよくないね。

興味を持ったり好きになるために読むのにはバツグンだけど、参考にはしちゃいけないかも、みたいな塩梅。

気軽に読める本だった。
ロマンとエンタメを感じたいときにおすすめ。

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