【読書感想】「口に関するアンケート」
「口に関するアンケート」
背筋
エンタメ度 ★★★★★
文の理解しやすさ ★★★★☆
ギミック性 ★★★★★
世界観の独特さ ★☆☆☆☆
読後の満足感 ★☆☆☆☆
(この辺を重視して私は本を読んでるよという目安)
600円、60ページのホラー小説。
ホラーの感じは「くねくね」とか「八尺様」くらいの怖さ。この辺が怖くて無理な人は、読んだらいけないくらい怖いかもしれない。
だけどこの本の一番面白いところは、ちょっとしたギミックがあるところなので、ホラーと言うよりはエンターテイメントなんだと思う。
話題になっているうちに読めてよかった。
これは、掲示板での投稿みたいに爆速で消費されるエンタメをしている。
だから瞬間最大風速みたいなものがある。
こういう作りの本がもしこれから次々と出たら、この本の展開は予測できるようになってしまう。
電子じゃなくて物理の本で買ったほうがいい。感覚として物理本のほうがホラーに実物感がある気がする。
そして、本の最後についてるアンケートにはきちんと答えたほうがいい。
ここから下は本編のネタバレを含む私的に印象に残ったシーン。
何と言っても最後のアンケートでの、読者にこの物語の情景を確定させるギミックが今までにない新鮮さがあって良かった。
しかし、もし今後「アンケートなどのメタ的な立場から物語に言及する」技法がどんどん出てきたら、初見での驚きの瞬間最大風速は弱まるよね。
ギミック、面白かったんだけど今回限りの技なのかな。
良い作りをしているのに爆速で消耗されていきそうなのがちょっとさみしく感じる。
「創作怪談」ってきちんと書いてあるところも良いね。今流行りの「モキュメンタリー」というやつかな?ちょっと前にTwitterで「創作って書いてくれないと本当の事件かと思っちゃう!」って投稿を見かけたから、創作って書くことは良いことなんだと思った。
あと以下は自分語り、備忘録みたいなもの。
私は文章を脳内で動画にして再生するタイプなので、途中までどうだったかというのを書いて行きたい。
学生がひとりひとり、簡素な机と椅子がある白い部屋に案内され事情聴取を受けている画像でイメージしていた。
読み返してみると「もう僕の番はおわりみたいだ」があって、情景が思ってるものと違うと気付ける要素はいくつかあったけど気付けなかった。
翔太の番で「ここに呼ばれた」「蝉の鳴き声が数分続く」があるのは、翔太だけ別の場所で取ってるのかなと思った。
ここでもあんまり疑問に思わなかった。
というか、脳内動画が出来上がってしまうとイメージとして強すぎて、なかなか覆りにくいという特徴がある。叙述トリック系には本当に騙される。
そしてアンケートの最後で状況の描写があって「なるほど!!!!!」ってなって、今までの白い部屋が全部書き換えられて新たな動画として脳内を流れ出したので、2周目も読んでしまったって感じ。