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口に関するアンケート 考察

ネタバレありです。


この本はまず最初に録音ファイルの再生から始まり、最後にアンケートが示されます。そしてこのアンケートで物語の本当の真実が明かされるという形になっています。
ただ、アンケートが全ての謎を解決してくれる訳ではないため、私の記憶整理も含めてこの物語の考察を行っていこうと思います。


最後のアンケートから読み取れることとしては以下のものがあります。
①この物語のテーマは「口は災いのもと」である
②セミの鳴き声が重要な要素である。
③この音声記録はスマートフォンで行われていた。
④5人はあの日の事を語り、「許された」時点で首を吊って死んだ。

まず最後に首を吊った5人の共通点として、セミの大きな鳴き声を聞いたという点が挙げられます。アンケート通りに考えると、杏がセミの鳴き声をトリガーにして5人に呪いをかけたのだと考えられそうです。健と颯斗は杏に話しかけた結果蝉の鳴き声を聞いてしまったので、黙って素通りしてれば助かったかもしれませんね。

そして最後の呪いの内容とは、彼女が呪いにかかってから死ぬまでに起きた事を記録して、さらに呪いの木の効力を強めることだと考えます。

まず杏からすれば、何も知らないまま呪いにかけられてしまっている状態です。彼女にかけられた呪いは、単純に訳すと「地獄に落ちろ」です。彼女は地獄から逃れるために木に登ったり、穴を掘って地獄との距離を少しでも遠ざけようとしています。穴を掘るだけじゃ本質的に地獄との距離は変わらない気もしますが、上へ逃れたいという彼女の狂的な感情がそうさせたのでしょう。死ぬ直前、自分はなぜ呪いにかけられたのか、こんなに苦しい思いをしているのかという理由を解明したいと思うのは自然な感情だと思います。最後の文章からも「全員で話せ」という旨の呪いがかけられていたことが仄めかされていますね。そして、その当事者たちを呪った。
杏が許した時点で、5人はそれぞれ首を吊りました。

次に、アンケートの内容に「この話を他人に伝えようと思いますか?」とある通り、この木の呪い(木自体はあんまり悪くない)は口で伝染し、口でその呪力を強めていきます。最後5人が木に向かって語りかけ首を吊ったのは、杏による復讐に加えてこの口による呪いの力を強めるためだったんじゃないかなと感じました。この木の本当の姿を告白させ、そして殺した。この木は呪いの木であり、呪われた木でもあります。結局、杏も木に利用されただけなのかもしれません。木にとって杏の呪いは大きなごちそうだったんじゃないでしょうか。
そう考えると、「口は災いのもと」という真実に気づいた者から順に首を吊っていきます。健は杏に声をかけてしまった事実を話した後に首を吊り、美鈴と颯斗は口の呪いによる木の正体を話した後に首を吊ります。翔太と竜也の告白はただの痴話喧嘩ですが、これも口は災いのもとだと無理やり言えるんじゃないかな…。

そしてこの本文はスマホの音声記録であることがアンケートからほのめかされていますが、そのスマホは杏のものでしょう。なぜなら呪いにかかって発狂状態の杏を美鈴が助ける際に杏のスマホを落としているからです。懐中電灯ではなくスマホのライトなのが現代っぽいですよね。わざわざスマホという媒体に残しているのは、これを礎に木がさらなる呪いの拡大を考えているんじゃないかな~と考えてしまいます。


健と颯斗が会った杏は生きていたのか?という疑問ですが、首が2倍以上に伸びてたり顔が腐っていたりと、すでにこの世のものではなかった可能性が高そうです。夏場だと2~3日で腐り始めるらしいので、数日前に亡くなっていたのだと思います。これも木の呪いパワーでしょうか。

正直、木自体はなんも悪くないはずなのですが、人の声を聞き続けた木はいつの間にかおぞましい何かに変容していたのでしょう。口は災いのもとですね。

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