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今川焼 いまがわやき イマガワヤキ • • •

呪文のように唱えても私はどうしてもこの言葉が覚えられない。

故郷の神戸では「回転焼き」もしくは「太鼓饅頭」で慣れ親しんだお菓子が東京では今川焼と呼ばれるのを上京して初めて知った。

しかし子供の時と違い、そのようなお菓子とは余り縁のない生活を送っているので普段言葉に出して言う機会は少ないが、それでも何かの時に言おうとすると、どうしても「今川焼」の単語が出て来ない。

そこで息子に「えーと、回転焼きやなくて太鼓饅頭やなくて、あの、あれ、なんやった?」と聞くと、東京生まれの息子は笑いながら「今川焼!」と食い気味に答えてくる。

これまで息子とこの会話を何回繰り返したか分からないが、私が歳を取って忘れっぽくなったせいではなく、もう20年以上前から続いているのだ。

神戸で暮らした時間の倍以上も東京に住んで、むしろ忘れてしまったり使わなくなってしまった言葉もいくつかあるというのに、何故かこの「今川焼」だけは私の海馬が受けつけてくれないようだ。

                      イラスト (オイルパステル)



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