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あいみょんの「会いに行くのに」はそれぞれの記憶がテーマ〜『アンメット ある脳外科医の日記』より

あいみょんは意外な言葉を操る詩人だ。

冷蔵庫の中には
食べ損ねたラブレター
ひとつづつ ひとつづつ 白くなる

歌詞の冒頭

冷蔵庫にラブレターをしまう人はいるとしても、食べ損ねたとはどんなだろう。歌の最初から想像をかき立ててくれる。しかも、渡せずカビが生えるほど時間が経っているとしたら。

切ない歌詞ではじまる「会いに行くのに」は、カンテレ/フジテレビ系ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』の主題歌だ。記憶障害の脳外科医 川内ミヤビ(杉咲 花)を中心に、同僚の脳外科医である三瓶友治(若葉竜也)らの群像を描く医療ドラマだ。

この歌で、何度も冬をやり過ごして「会いに行くのに」と真情を吐露しているのは、元婚約者の三瓶医師だろう。

ドラマのタイトル「アンメット」に「満たされない」という意味があるらしい。実は、アンメットなのは記憶障害の川内ではなく、三瓶なのかもしれない。彼が川内を想う気持ちは強く切ない。彼女を直すためにアメリカの病院で経験を積み、帰国して同じ病院に勤務するようになってからは毎朝コーヒーを持って待ち伏せするというストーカーぶり。

あいみょんはこの曲で「記憶」を描いたという。一見、川内が無くした記憶を差しているように見えて、実は三瓶が川内を思い続けている記憶を差しているのかもしれない。「会いに行くのに」を三回くり返す歌詞から、並々ならぬ記憶が透けて見える。ふたりが婚約していたことによる愛情の深さゆえなのか、ほかに理由があるのか、第4話までしか放送されていない時点でははっきりしない。

とにかく、記憶は無くした者だけではなく、周りで見守っている人にも重なり続けている。ドラマで両者の記憶が繋がるとき、どういう化学反応を示すのか楽しみである。その時、この歌はどう聞こえるだろうか。


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