「思い出の料理」～仲良し夫婦サークル❤

珈琲次郎さんの仲良し夫婦サークルの記事
書くだけで楽しいのに、珈琲次郎さんから端的にまとまり、且つ温かい紹介コメントをいただけるとは。
これはもう参加するしかない！ということで2回目のテーマにも早速参加させていただきます！

「思い出の料理」といえばこれしかない！ということで
私と旦那のあるエピソードを紹介します

今から6年前、旦那と付き合って迎えた初めてのバレンタインデーのこと
私はいつも優しい彼に喜んでもらいたく、バレンタインは美味しい手作りチョコを渡したいと意気込んでいた。

甘いものが好きな旦那のためにブラウニーを作ることに決めた私は、早めに材料をそろえ、一度実際に試作もした。

準備万端に整え、迎えた当日の朝。
早起きした私は、はりきってブラウニー作りに取り掛かった。材料を測り、粉類は振るっておく。チョコレートを溶かし、材料を順番に混ぜていく。レシピ通り一つ一つ丁寧に進め、生地をオーブンに入れた私は順調な段取りにほっとしていた。

しかし、タイマーが鳴りオーブンを開けるとチョコレートは全然固まっておらず、大部分がどろどろの状態だった。緊張していて温度を間違えたのかもしれない。
慌てて再加熱するも状態は変わらず。さらに再加熱してみてもどろどろの部分はほぼ変わらず、一方で焼けている部分は焦げ付き硬くなっている。

気が付くと待ち合わせ時間が近づいている。作り直す時間など到底なく、私は失敗したことにショックを受けながらも、彼に失敗したことを正直に告げて謝ることに決めた。

待ち合わせ場所に着くと、私は開口一番に切り出した
「ごめんなさい。ブラウニーを作ったのだけど失敗しちゃったの。どうしてもチョコレートが固まらなくて。」

彼は「それでもよかったのに」と言ってくれたが、どろどろの状態のブラウニーなど、とてもじゃないけど渡せる代物ではない。
私は謝りながらふと気が付いた。街には沢山のお洒落なチョコレートの専門店がある、今年は彼に好きな物を選んでもらえば良い。それなら彼も嬉しいはず。
「よかったら今日のデートで一緒にチョコレートを買いに行かない？Ｍさんの好きな物を贈るから。」
私が提案すると、喜ぶと思った彼の反応はまるで違い彼は困ったようにこう言った。
「う～ん。俺はやっぱりＫちゃんの手作りが欲しいな。次のデートまで待つから、作ってきてくれないかな？」

お店に並んだプロが作った綺麗なチョコレートは私が作ったものよりずっと美味しいはずなのに、私の手作りが欲しいなんて。
私は彼の気持ちに感動し、次こそは絶対においしいブラウニーを作って彼に食べてもらおうと決意したのだった。

次のデート当日、奮闘した甲斐があり、この日はチョコレートが固まり、ブラウニーは無事に完成した。
とはいえ、それは「私にしては」という注釈付き。
ブラウニーは綺麗に整った長方形ではなく、どこかいびつであり、焼きむらもある。
不器用な私は凝ったデコレーションもできないため色合いも地味だった。
もっと綺麗に作れる人はたくさんいるだろうし、ましてや専門店のプロが作ったものには到底叶わない。

この程度の物で本当に彼は喜んでくれるのだろうか。
私は内心不安だったが、悩んでいても仕方がない。
覚悟を決めて待ち合わせ場所に向かうことにした。

「これ。あまりきれいにできなくて、申し訳ないんだけれど・・」
自信なさげにしている私をよそに、彼は目を輝かせながらブラウ二ーを受け取りこう言った。「そんなことない！とってもおいしそうだよ！」
すぐさまラッピングを取り、ブラウニーの一切れを口に入れ
「すごくおいしいよ！残りは家に帰って大事に食べるね」
彼はそう言って笑い、ブラウニーを大事そうにカバンにしまってくれたのだった。

この話には続きがある。
一か月後のホワイトデー
なんと彼はバレンタインデーのお返しにとパウンドケーキを焼いてきてくれたのだ。
料理なんてしたことないはずの彼。聞くと妹さんに作り方を教わったという
「〇〇ちゃんが一生懸命作ってくれたのだから、俺も手作りを返したくて。」
働き盛りの30代。仕事も忙しいはずなのに私のためにわざわざ手作りしてくれたのだ。彼の気持ちが私は本当にうれしかった。
「美味しくないかもよ？」
照れ隠しだろう、彼は冗談っぽく言っていたが、彼が気持ちを込めて作ってくれたパウンドケーキがおいしくないはずはない。彼の性格と同様優しい甘さのパウンドケーキは、それまで食べたどんなパウンドケーキよりもおいしい、世界一の味だった。

この日から6年間。私は毎年、旦那となった彼に手作りのチョコレートを贈っている。
結婚前に比べ口数が減り、愛情表現をあまりしてくれなくなった旦那だが
私の作る相変わらず不格好なチョコレートを毎年おいしそうに食べてくれる。

時期が来ると「今年はチョコレート作るの？」などと聞いてくる態度からどうやら楽しみにしてくれているらしい。
渡したチョコレートを冷蔵庫にしまい、会社に行く前に少しずつ食べている姿をみると、喧嘩をしても、どんなに腹が立っても、どうしても憎めず許してしまう。

夫婦間の思い出の料理といってまず思い出すのはこれだった。
私が旦那をますます好きになった初めてのバレンタインの思い出
6年たった今も私の大事な思い出です。