ゆるゆるなんだ。

「あ、指輪ないんだった。」
昨日から何度思っているだろう。

私たちは結婚して8年目。
プロポーズも婚約指輪も結納も結婚式も何もないスタートだったけど、結婚指輪だけはある。
高級ブランドも違うし、自分たちで作るのも何か違うような…と辿り着いた小さなアトリエ。
相談しながらデザインを決めて、サイズを調整してもらい、お互いぴったりの指輪を作ってもらった。

ところが、この8年で夫は20キロ痩せて標準体型になった。
お風呂上がりのアイスをやめたらしい。
それだけでそんなに痩せる?!という疑問は生まれつつ、まぁ健康になって良かった良かった!と思っていた矢先、夫が最近指輪をしていないことに気付いた。

「なんか最近指輪してなくない?」
妻から唐突に問い詰められた夫は、俯いて、そしてうっすら笑いながらつぶやいた。
「ゆるゆるなんだ」

そうか、20キロも痩せたんだもの。
指だってそりゃ痩せるよね。
何なら足裏や頭部の脂肪も減ったのか、身長も縮んだらしい。

とにかく、ゆるゆるで、手を下ろすとストンと落ちてしまうと。
それならば!と、私たちは指輪を作った当時はまだこの世に存在すらしてなかった4歳の娘を連れて、久しぶりにアトリエを訪れた。

ここだっけ?こんなら扉だっけ?と言いながら辿り着いた小さなアトリエ。
かつて私たちが話し合いをしたテーブルでは、カップルが一組、同じように指輪の相談をしていた。
過去の自分たちを見ているような気持ちになったと同時に、勝手に自分たちが未来にいるような気にもなった。

初めて見るじゃらじゃらとしたリングゲージに興奮冷めやらぬ娘の隣で、改めてサイズを測ってもらってびっくり。
21号→16〜17号になっていた。
こんなに痩せたらそりゃゆるゆるになるよね。夫のサイズ調整のついでに、私の指輪もメンテナンスに出すことにした。
そして娘もお店のお姉さんに測ってもらって、「1号だよ。覚えておいてね。」と言われて、ちょっと満足そうだった。

というわけで、今久しぶりに指輪をしていない生活を送っている。
夫は「もう絶対にリバウンドできないな…」とつぶやいていた。

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