ちょっとニッチな児童文学②

こんにちは。お久しぶりです。「ちょっとニッチな児童文学」へようこそお越しくださいました。noteをお読みいただきありがとうございます。

今回も世間様にあまり知られていないであろう児童文学作品を、大量のネタバレとともに紹介していきます。

前回は如月かずささんの「カエルの歌姫」の紹介でお会いした方もいるかと思います。まだお読みになっていない方はこちらもぜひどうぞ!

さて今回も如月かずささんの作品をご紹介いたします。
ところであなたの好きな、もしくは好きだった給食のメニューなんですか?定番のカレーライス……それとも特別な日にしか食べられないデザート?

そんなことを考えて読み進めていくのも楽しいかもしれません。

如月かずさ『給食アンサンブル』です


この物語に出てくるメニューは「七夕ゼリー」や「マーボー豆腐」「黒糖パン」といった一度は給食で食べたことがありそうなメニュー。新しい学校になじめない美貴、子供っぽいことがコンプレックスの桃、親友の姉に恋心を寄せる満、優等生の清野、ムードメーカーでお調子者の雅人、面倒見のいい梢。それぞれが給食のメニューで心を動かされます。


ここからは大量のネタバレを含みます!


 美貴 「七夕ゼリー」

「七夕ゼリー」の主人公、美紀は私立のお嬢様学校から転校してきたけど、新しい学校にも給食にも全くなじめません。女子グループに所属していますが、以前の学校と比べてしまい、いつも一緒にいるメンバーにもなかなか心を許せずにいます。

ある日グループの梢と、あることがきっかけで仲たがいしてしまいます。そんな中「七夕ゼリー」が給食のメニューに出てきます。それをグループのメンバーがきれいに飾り付け、世界で一つだけの「七夕ゼリー」を美貴にプレゼントしました。


図書館での料理本や短冊が伏線となって世界で一つの「七夕ゼリー」までつながっています。

桃 「マーボー豆腐」

桃は子供っぽいことがコンプレックス。辛い物が苦手で中華料理屋の本格的なマーボー豆腐が食べられません。童話を読むのが好きで将来は童話作家になるのが夢。


満とは幼なじみで、小学生の頃はよく好きな童話の話をしていました。大人っぽくなりたい桃は、美貴をふるまいを真似ますが、それを怒っていると勘違いされてしまいます。


中学1年生なんてまだ子供なんですが、本人にとって「周りとくらべて子供っぽい」というのは大きな悩みです。中学生は子供と大人の間で、大人への過渡期。特に外見は気になります。

満 「黒糖パン」

満は親友の姉に恋心を抱いています。相手は高校生のため、少しでも相手に近づきたいと大人っぽくふるまっています。外見は同級生の中でも大きく、落ち着いて見える満も、好きな人の前では平静ではいられません。片思いの相手である詩織が高校を休んでいることを知り、元気づけるために詩織が好きだと言っていた「黒糖パン」を持って、詩織のもとを訪れます。


詩織に対する満の行動が男前。いつもは参加しない給食ジャンケン(欠席した子の余った給食をジャンケンで勝ち取るあれです)に参加し、負けて自分の黒糖パンを食べずに詩織に持っていくあたり、中学生なりの必死さが伝わります。初恋は甘酸っぱい、とよくいいますが、満の場合は詩織と一緒に食べた「黒糖パンの味」が初恋の味になるでしょう。

雅人に詩織のことを好きだろうと言い当てられて平静を装おうとするあたりの描写も、満が詩織に黒糖パンを渡しているくだりもほのぼのします。

ここまでは3人分のストーリーです。
ここから3人は軽めに紹介します。


雅人「ABCスープ」

雅人は「愉快で明るく運動神経抜群で大食いな人気者」のイメージを守ろうと必死に演じています。そんな自分に疲れ、運悪く骨折までしてしまいましたが、英語教師のラミネスの言葉と、「ABCスープ」に浮かび上がったマカロニの「CHANGE」の文字に励まされ、あきらめぐせが付いていた自分を変えようとします。


清野 「ミルメーク」

優等生の清野は、勉強が好きで、ちょっと記憶力がいいだけの目立たない人間だと思っています。給食に出てくる牛乳に混ぜてコーヒー牛乳を作れる液体「ミルメーク」。その濃さ=「人気者の証」と考える頭のいい子です。そして自分はそんな濃い味のコーヒー牛乳は飲むことはできないだろうと感じています。
梢から「百人一首大会」に向けて一緒に特訓してほしいと頼まれ引き受けました。


雅人と会話でミルメークを濃くする方法は意外と簡単でそれに気づいた清野は「もしかすると、最初からあきらめていたから、驚くほど単純な方法にも気づくことができなかったのかもしれない」と考えます。


梢 「卒業メニュー」

梢は1年生の終わりに転校することになってしまいます。しかしそれを誰にも言えないでいました。最後の行事である「百人一首大会」で頑張って優勝し、最後にいい思い出をつくりたいという思いから、清野に事情を話し、百人一首の特訓をしてもらうことに。結局仲良しのメンバーには転校直前まで話せず、ギリギリで話したことにより気まずい空気になってしまします。

そんなときに給食に出てきた「卒業クレープ」をいつものメンバーで分けて、離れ離れになってもまた会うことを約束します。


『給食アンサンブル』 まとめ


転校先で以前の学校と比べてしまってなじめない不安やいらだち、子供から大人へ変わりたいと思う思春期の感情、初恋、自分から積極的に輪の中へ混ざっていくことの大切さや思い込みを捨てること、中学生なりの友情の表し方が詰まった一冊でした。

長くなりましたがここまでお読みいただきありがとうございました。







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