セミナーのネガティブな感想を講師に見せる意味

セミナー終了後に主催者からアンケート結果を共有するケースがあるんだけど、そこであえてネガティブな感想を講師に見せる意味あるのかな?と。

もちろん参加者の声を拾うことは正しいことだし、ネガティブな意見を参考にして次回はより良いセミナーにして欲しいという主催者の気持ちは非常に理解できる。

だけど、100人の参加者のうちの1人とか2人のネガティブな意見をあえて講師に見せることが、果たしてその講師のポテンシャルをあげることにつながるのかといえば、決してそういうわけではないような気がするんですよね。私だけかもしれないけど。

こんなことを言ってしまったらオシマイだけど、講師業なんてタレント業に近いので、商品やサービスと違って大きく修正することが難しいんですよ。テレビでいえば、「あいつの演技が面白くない」「あのコメンテータは早口だ」という意見と同じようなもんで、セミナー全体に対する全否定のネガティブ意見をもらっても、手の打ちようがないケースが多いんです。個人の才能に左右されるサービスですから。

もちろん、コンサルタント会社の若いサラリーマン講師だったら、ネガティブな意見が大半を占めるので改善の参考材料になるのでぜひ意見は聞いた方がいいと思うけど、熟練の講師で7割ぐらいの満足度が取れるんだったら、あえてネガティブな意見を見せる必要はないと思うんですよね。それ以上、満足度を上げること自体が難しいから。

あと、継続して月1でセミナーするぐらいの関係だったらネガティブな意見も参考にしていいけど、年に1~2回のセミナーだったら、参加者も変わるし、内容も変わるしで、あまりセミナーの意見を参考にしても、大きく満足度を変える話にはならないと思うんですよ。そもそも参加者のアンケートって主催者側が講師をセレクトする段階で必要なデータであって、講師に「こんな意見があるから変えて欲しい」という要望を出すデータではないと思うんです。

それに商売全体に言えることだけど、1人とか2人のネガティブな意見はノイズでしかないケースが多いから、あえて、それを参考にする会社なんてほとんどないわけであって。もちろん、参考になるネガティブな意見もありますけど、「値段が高い」「美味しくない」っていう、修正のしようがない、どうしようもないクソ意見をまともに聞く会社はほとどないので、やっぱりこのあたりは、参考にしていい意見と参考にしなくていい意見が世の中に存在していることを、理解する必要があると思うんです。

たとえるなら、観たくもないTwitterの悪口を、あえてプリントアウトして、「こんなこと言われていますよ」と見せるようなもんですよ。そこそこ地獄ですよ、マジで。頼んでもいないのに陰で言われていることを見せるのは。講師自身が「アンケート共有させてください」と言っているのなら別ですけど。

それと、チームでやっている仕事だったり、製造業だったり、個人客を相手にしているサービス業だったら、ネガティブな意見は「まぁ、そういう意見もあるよね」と、結構、スタッフ全員で辛さを分散されて受け止められるから精神的な被害が少ないんですよね。

だけど、講師業のネガティブな意見の場合、ストレートで自己否定や人格否定につながるから、アンカー効果がでかくなって、明らかに次のセミナーの時にひきずってしまうところがあるんです。

たとえば、「とてもいい加減なセミナーだった。もっとデータの根拠を示して欲しい」なんて手厳しい意見があった場合、気にしなくてもいいのに、そういうネガティブな意見が強く残ってしまって、次のセミナーの時にあえてデータをたくさん入れたレジュメを作ったら、「データの話が多すぎる」ってバカでかいクレームになったりして(笑)

セミナーの最中もネガティブな意見のほうが強く印象に残るから、結構、そのあたりの気を使って話すようにすると、今度は話が途中で飛んじゃったり、おかしな方向に話が流れて行ったり、正直、ネガティブな意見を聞いて、次のセミナーが良くなったケースは19年間やっていてゼロですね。私の場合だけかもしれないけど。

だからといって「アンケートの共有はナシでお願いします」と主催者に言うと、「こいつは横柄な講師だな」と思われるし、「ネガティブな意見は見せないでくださいね」というと、「神経細やかな奴だな」とか思われるのも嫌なので、あまりアンケート結果に関しては文句を言わないようにはしています。「そんな嫌ならアンケート結果なんて見なければいいじゃん」って話になるけど、エゴサーチみたいに、やっぱり見ちゃうんですよね。バカだから。で、落ち込むんです。酷い時には1カ月ぐらい引きづることもある。結構、アンケートって容赦なく辛辣な意見を書いてくるんですよ。匿名だから好き放題書いてくる。まぁ、それをストレートで見せてくる主催者もなんだよって思いますけど。

一番いいのは、このあたりのナーバスな講師の気持ちを汲み取って、ネガティブな意見はカットしてアンケート結果を見せてくれる気遣いがある主催者さんですよ。あとはアンケートの結果を見せない主催者さん。どうせ悪い意見を講師に読ませたって修正なんてできるわけないし、少数意見を取り入れても、そこまで講師業はブラッシュアップできる仕事じゃないんだしってわかっている主催者さんは素敵ですよね。まぁ、そんな人のほうが圧倒的に少ないですけどね。

結果的に多くの主催者さんが講師をやる機会がないから、やっぱり相手の立場や気持ちが分からなくて、「講師にネガティブな意見を見せる=良いセミナーになる」という誤解は永遠になくならないんだと思います。

まぁ、それも全部ひっくるめて講師料というお金をもらっているので、精神的な負担もすべて受け入れるしかないんですけどね。

年末年始はセミナーも多いので、そのあたり、もう少しタフな精神力を持ちたいところです。

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